「プレイタイム」は東京・Bunkamura シアターコクーンが取り組む、初のライブ配信企画。シアターコクーンとNTT東日本がタッグを組み、映像とライブパフォーマンスを織り交ぜた、“ライブ配信のための演劇”を劇場を使って立ち上げる。
眠っていた劇場にスタッフが集まり仕事を始める。そこへ、俳優たちの声が響きわたり……。原作は
作品に向けて森山は「それぞれが違う作り方を模索している感じがあって、『演劇とは』『虚構とは』というところから一個一個様々な目線で丁寧に紐解いて考えている感じが面白い」と稽古の感想を述べつつ、「今後、映像でも映画でも演劇でもない、こういったメディア表現が、もしかしたら定着していくかもしれない」と指摘。「その入り口に立っているかもしれない僕たちが、これまでは劇場という密室にいる人だけが共有できていた人間の愛おしさ、泥臭さ、生々しさと言った舞台の醍醐味を、映像というフィルターを通してどう届けられるかまで、考えられなければならないと思っています」と意気込みを述べる。黒木は岸田戯曲について「『恋愛恐怖病』は、思いがすれ違う男女の話。人と接触したり話したりすることが今の状況ではどこか新鮮ですね」と感想を語り、「演じ方という点では、今回は映像と舞台の演技を両方混ぜ合わせる感じかなと」「映像と舞台、両方の“いいとこ取り”ができればいいのかなと思っています」と続けた。
また梅田は「画面越しで舞台を観ている人にもどれだけ作品の“共犯者”になってもらえるか、今回はそのことへの挑戦なんじゃないかと思っています」と話し、杉原は「こういう作り方だからこそ今までにないものができるという空気をビシビシ感じるし、面白い作品になるんじゃないかと予感しています」と手応えを語っている。
本作の配信はイープラスの動画配信サービス・Streaming+で行われる。チケットは7月9日10:00に発売。またオンラインチケットMY Bunkamura登録者を対象に、劇場観劇チケットも抽選販売される。抽選申込期間は6月29日12:00から7月4日23:59まで。
森山未來コメント
4カ月閉じていたシアターコクーンが息を吹き返す、そういった企画に声をかけてもらえたのは、率直にうれしかったですね。チャレンジングなことに呼んでもらっているという期待もあるし、実際に劇場を使う作品になると聞き、ようやく劇場に行けるという喜びもありました。企画の概要を聞きながら思い浮かんだのが、梅田哲也さんの「インターンシップ」という作品でした。この作品の中での梅田さんの劇場という空間に対する触れ方、関わり方に僕は温かさみたいなものを感じていて、このアプローチをシアターコクーンに持ち込むことができたなら劇場が喜ぶんじゃないか、劇場にいい空気が流れるんじゃないかと思い、プロデューサーさんに紹介させていただきました。
稽古では、僕の今までのシアターコクーンでの仕事からは想像できないほどの少人数の座組みなので思いが共有しやすい部分があり、同時に梅田さんや(杉原)邦生さん、それぞれが違う作り方を模索している感じがあって、「演劇とは」「虚構とは」というところから一個一個様々な目線で丁寧に紐解いて考えている感じが面白い。今後、映像でも映画でも演劇でもない、こういったメディア表現が、もしかしたら定着していくかもしれないとも思っていて。だとすれば、その入り口に立っているかもしれない僕たちが、これまでは劇場という密室にいる人だけが共有できていた人間の愛おしさ、泥臭さ、生々しさといった舞台の醍醐味を、映像というフィルターを通してどう届けられるかまで、考えられなければならないと思っています。実際、梅田さんと邦生さんはかなり視点が違いますけど、二人が今、お互いの表現を理解し、歩み寄り始めていることを見ても、今回、そういった新たな表現にトライしてみることも、アリなのではないかと感じています。
黒木華コメント
今回の企画を聞いて、まず劇場を使って何かができることのありがたさを感じました。また映像とライブパフォーマンスで劇場が立ち上がっていくというコンセプトが面白そうだな、絶対参加したいと思いました。ただ、企画の土台を立ち上げるところから関わった経験がないので、最初のうちはあまりに自由度が高すぎる稽古場に、正直戸惑いましたが……(笑)。
岸田國士の「恋愛恐怖病」は、思いがすれ違う男女の話。人と接触したり話したりすることが今の状況ではどこか新鮮ですね。この作品がどう見えてくるのか、今はまだわかりません。未來さんは身体に対しても言葉に対しても、私にはない感覚を持っていて面白いですね。それに今回は役に入り込んで演じるというよりは、役に対してある程度の距離感を持って臨んだほうが良いのではないかと思っています。演じ方という点では、今回は映像と舞台の演技を両方混ぜ合わせる感じかなと。舞台だけど大きい声でなくても平気だし、映像だけど「ここは砂浜」と言えば虚構が成立する。映像と舞台、両方の“いいとこ取り”ができればいいのかなと思っています。演劇ファンの方は、きっと舞台が観たくてうずうずしてると思うんですよね、私もそうなので(笑)。今回は舞台で作り上げたものを映像として完成させ、お届けすることを目指しているので、客席に座っているような感覚で観ていただけたらと思います。またこれまで劇場で舞台を観たことがない方には、舞台は座席の感触や照明など、空間を一緒に体感することも楽しみの1つなので、今回のライブ配信を通じて「いつか生で舞台を観てみたい」と思っていただけるように、頑張ります。
杉原邦生コメント
オンライン演劇には、正直、積極的ではなかったんです。でも今回、「劇場で作った作品を配信する企画に興味ありますか」とお話いただき、それなら演劇本来の創作の仕方とズレないし、「興味あります」と。それがこういう展開になるとは(笑)。またシアターコクーンには思い入れがありすぎると言うか、学生時代から数え切れないほど足を運んでいて、演出家として1つの目標でした。それがこういう形で関わることになるとは。ただ振り返ると、演出を始めたのも歌舞伎に関わるようになったのも、常に予想外のことから始まっているので、そういう意味では僕にとって、“通常通り”です(笑)。
創作は刺激、というより驚きだらけ。みんなで作っているので、自分の意見を主張するのではなく、まず他の人の意見を聞いて「なるほど」と思ったり、ハッとしたり。時間はかかりますけど、こういう作り方だからこそ今までにないものができるという空気をビシビシ感じるし、面白い作品になるんじゃないかと予感しています。
今回、映像に関わる中で感じているのは、むしろ普段、自分がどういう思考で演劇を作っているかということ。僕はいつも舞台上だけじゃなくて客席も含めた劇場全体、もっと言えばお客さんが劇場にやって来るまでの時間と空間も含めて演出を考えてるんだな、という再発見がありました。でも今回はそのやり方を押し進めるのではなく、配信として届けた時に一番面白いものを、と考えていて。今後もきっとこんな経験はできないでしょうし、新しいことだらけですけど楽しいです。
梅田哲也コメント
ある日突然、森山さんから「眠っていた劇場が再び動き出す瞬間のような作品を作りたい」とコンタクトがあったんです。例として具体的に僕の過去作を挙げておられましたし、そのコンセプトは、僕のこれまでの活動と親和性があるテーマだったのでやれそうだなと。具体的なことは、その後ドドドッと決まっていきました(笑)。
普段作品を作る時は、まず表象的に見えているものを観察するところから始まります。今回そうやって見えてきたのは、シアターコクーンって外から見るとマッシブだけど、思ったより泥臭いことをしてきた劇場なんだなと。そこが、興味を惹かれたポイントでもありました。さらに今のような状況下で岸田國士を扱うということも大きな問いだと思っていて。最初は戯曲や発言の中に透け見える彼の思想的な部分が気になったのですが、調べるうちに、彼のある種の挫折やもがきの中に人としての愛おしさが見えてきて、戯曲の捉え方も変わってきました。
僕は演劇に正面から向き合ったことがこれまでほぼなかったので、稽古とそのものの有りようがまず刺激です。ある日の稽古で黒木さんが「演劇はみんなで作るもの」とおっしゃっていて、それは今回の1つの指標になりました。映像配信という意味では、僕はあまり難しく捉えてはいなくて、カメラを介して舞台と客席の関係を拡張しているだけと思っているので、個人的には開演前のブザーやアナウンスって「これぞ劇場体験だな」と思いますし、そういったお芝居の外側にある事象を介して、画面越しで舞台を観ている人にもどれだけ作品の“共犯者”になってもらえるか、今回はそのことへの挑戦なんじゃないかと思っています。
シアターコクーン・ライブ配信「プレイタイム」
2020年7月12日(日)19:30~
原作:
構成・演出:
演出・美術:
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演奏:
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twiwrighter @twiwrighter
森山未來×黒木華が挑む岸田國士の世界を、コクーンからライブ配信(コメントあり) https://t.co/erXN3V6WfG