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「荒れ野」悲劇喜劇賞受賞に桑原&平田が笑顔「これからの創作の支えに」

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第5回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞贈賞式より、左から平田満、桑原裕子。

第5回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞贈賞式より、左から平田満、桑原裕子。

昨日3月28日に東京・明治記念館にて、第5回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞の贈賞式が行われ、受賞作の穂の国とよはし芸術劇場PLATプロデュース「荒れ野」より、作・演出を務めたKAKUTAの桑原裕子平田満ら出演者が出席した。

選考委員と批評・評論家の劇評意欲を奮い立たせる優秀な演劇作品を顕彰することを目的とする本賞。受賞作には正賞として雑誌・悲劇喜劇にちなんだ賞牌と、副賞100万円が贈られる。5回目の開催となる今回は、選考委員に今村忠純、鹿島茂、高橋豊、辻原登の4名が名を連ねた。

昨年2017年11月から12月にかけて愛知、福岡、東京で上演された「荒れ野」は、愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLATの開館5年を記念して企画されたもの。これまで同劇場の芸術文化アドバイザーを務めてきた平田が出演し、4月から平田に代わりアドバイザーに就任する桑原が作・演出を手がけた。なお平田のほかに井上加奈子、劇団青年座の増子倭文江、In the Soupの中尾諭介、KAKUTAの多田香織、文学座の小林勝也が出演し、正反対の人生を送ってきた2人の女性を軸に、揺れ動く人間模様を描いた。

受賞に際し桑原は「カンパニー全体がいただく賞はこんなにもうれしいものなのかと、キャストやスタッフの皆さんと再会してすごく実感しています」と感激を語る。「荒れ野」の創作にあたっては、平田から「劇団ではやっていないことをやってみたら?」とアドバイスを受けたと話す。さらに「これまでは緻密な構成の作品を多く手がけてきた」と言い、「それが武器であると自覚している部分もありながら、ここ数年はそのスタイルに少し息苦しさを感じていました。そこで本作ではあえて結末や目標を定めず、いろんな思いを抱える登場人物たちが1つの部屋に集まり、会話がどこに転がってしまうのか、作家の私自身もわからないものにトライしました」と創作の過程を語った。そして「濃密な時間を作れた」と出演者やスタッフへの謝辞を述べたあと、桑原は「作品に向き合った時間と、賞をいただいたことは、これからの創作において支えになってくれると思います。『悲劇喜劇』さんには厳しく、またへこたれない程度に甘い言葉も添えていただきつつ(笑)、たくさん劇評を書いていただけたらと思いますし、その意欲をそそるような作品を作れたらと思います」と晴れやかな表情で抱負を述べ、挨拶を締めくくった。

続いて出演者を代表し、平田が登壇。平田と妻の井上によるアル☆カンパニーの12年の活動を振り返りながら、「こういう大それた賞をいただくことになるとは夢にも思いませんでした」と心境を明かす。また平田は「荒れ野」東京公演の会場となったSPACE雑遊が、2017年をもって営業を停止したことにも言及。アル☆カンパニーが06年にこけら落とし公演を行った同会場について、「役者の体温や息遣いをお客様にも感じていただき、俳優もその緊張感の中で生きている人間を演じられたら、という理想があった」と振り返る。続けて「いろんな作家や共演者、スタッフの方と巡り合うことで充実したものになっていき、ついには桑原裕子さんにこのような立派な本を書いていただいて、緊密感あふれる演出のもと『荒れ野』という舞台に結実しました」と感慨を述べた。最後に平田は「『荒れ野』でSPACE雑遊を余すところなく使ってくださった桑原さんを始め、スタッフの皆さん、1人ひとり役中の人物を生きてくださった出演者の皆さんに本当に感謝します」と真摯に感謝を述べた。

なお4月7日発売の悲劇喜劇5月号には「荒れ野」戯曲や「悲劇喜劇」賞の選考過程の採録、選考委員それぞれが推薦する作品の劇評が掲載されるほか、桑原や平田、井上へのインタビューやキャストたちによるコメントが収められている。

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