ステージナタリー - 舞台・演劇の最新ニュースを毎日配信

柴幸男「わたしが悲しくないのはあなたが遠いから」2劇場で昨日同時開幕

396

フェスティバル/トーキョー17「わたしが悲しくないのはあなたが遠いから」(イースト)より。(photo : Hideaki Hamada)

フェスティバル/トーキョー17「わたしが悲しくないのはあなたが遠いから」(イースト)より。(photo : Hideaki Hamada)

ままごと柴幸男が作・演出を手がける「わたしが悲しくないのはあなたが遠いから」が、昨日10月7日に東京・東京芸術劇場 シアターイースト、シアターウエストにて同時開幕した。

本作は“距離”をテーマに、隣り合う劇場で、同じ時刻、同じ俳優により繰り広げられる柴の新作。フェスティバル/トーキョーと2019年に開館予定の台北パフォーミングアーツセンターとの国際共同製作作品で、日台のクリエイターがコラボレーションすることでも注目を集めている。

物語はシアターイーストではトウコ(森岡光)、シアターウエストではセイコ(端田新菜)を中心に展開する。トウコ / セイコには、セイコ(藤谷理子) / トウコ(野上絹代)という友達がいた。隣り合わせで産まれた2人だが、隣の家、隣のクラス、隣町、遠くの国と徐々に距離が離れていく。また平穏な人生を送るトウコ / セイコは、小さな不幸に始まり震災やテロなど大きな悲劇に巻き込まれていくセイコ / トウコのことを、遠くから思い続けている。やがて年をとり、目も見えなく、脚も動かなくなったトウコ / セイコがとった行動とは……。

すでに戯曲が公開されている通り、主人公が使う言葉が関西弁か否かということを除けば、両劇場とも内容面でほぼ違いはない。ただ、熊本を拠点に活動する不思議少年の森岡と、ヨーロッパ企画の「来てけつかるべき新世界」で鮮烈な印象を与えた藤谷、青年座版「あゆみ」にも出演した椿真由美が主に登場するイースト版と、野上のソロプロジェクト・三月企画で共演した青年団 / ままごとの端田とダンサーの岡田智代、そして野上が主に登場するウエスト版では、自ずと作品の印象が変わってくる。

さらに舞台美術の面でも、プロセニアム舞台のイースト版では紙と映像を使い、対面式舞台のウエスト版では多様なサイズの“枠”とメジャーを用いるなど、アプローチが異なっている。そこへ、さまざまな情景を想起させる台湾の音楽家・柯智豪による書き下ろし楽曲と、俳優の動きに合わせて風を作り出す台湾のファッションブランド・TRAN泉による衣装が、シンプルな空間を豊かに満たしていく。

劇中ではたびたび劇場の扉を開け、俳優たちが2劇場を行き来したり、隣の劇場とアドリブでやりとりが繰り広げられるシーンも。シアターイーストとシアターウエスト、特殊な構造の2劇場だからこそできる大胆な演出を楽しもう。なお劇場に向かう前のロワー広場を建築ユニット・tomato architecture、デザイナー・阿部太一が、劇場ロビーなどの空間づくりをデザインムジカの安藤僚子が中心となり、公募で集められたサポーターとともに手がけているので、観劇の前後にぜひ眺めてみては。

柴は創作前のインタビューで、東日本大震災をきっかけに、物理的な距離と心理的な距離の関係を考えるようになった、と語っている。本作の当日パンフレットでは、創作を進めるうえで「幸福な空間と、悲劇の空間の距離は何をもたらすのか」を追究するようになったと言い、「偶然にも、幸福に/不幸に、生きる/死ぬとはどういうことか」「その発想こそ、本作の構想の根幹となりました」と語っている。壮大なテーマに迫る本作のラストを、ぜひ劇場で確かめてみては。公演は10月15日まで。なお公演特設サイトには、本作の“観劇のヒント”が掲載されている。

※初出時、本文に一部誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

フェスティバル/トーキョー17「わたしが悲しくないのはあなたが遠いから」

2017年10月7日(土)~15日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト、シアターウエスト

作・演出:柴幸男
出演:大石将弘岡田智代串尾一輝椿真由美野上絹代端田新菜藤谷理子森岡光

ステージナタリーをフォロー