本作は“距離”をテーマに、隣り合う劇場で、同じ時刻、同じ俳優により繰り広げられる柴の新作。フェスティバル/トーキョーと2019年に開館予定の台北パフォーミングアーツセンターとの国際共同製作作品で、日台のクリエイターがコラボレーションすることでも注目を集めている。
物語はシアターイーストではトウコ(
すでに戯曲が公開されている通り、主人公が使う言葉が関西弁か否かということを除けば、両劇場とも内容面でほぼ違いはない。ただ、熊本を拠点に活動する
さらに舞台美術の面でも、プロセニアム舞台のイースト版では紙と映像を使い、対面式舞台のウエスト版では多様なサイズの“枠”とメジャーを用いるなど、アプローチが異なっている。そこへ、さまざまな情景を想起させる台湾の音楽家・柯智豪による書き下ろし楽曲と、俳優の動きに合わせて風を作り出す台湾のファッションブランド・TRAN泉による衣装が、シンプルな空間を豊かに満たしていく。
劇中ではたびたび劇場の扉を開け、俳優たちが2劇場を行き来したり、隣の劇場とアドリブでやりとりが繰り広げられるシーンも。シアターイーストとシアターウエスト、特殊な構造の2劇場だからこそできる大胆な演出を楽しもう。なお劇場に向かう前のロワー広場を建築ユニット・tomato architecture、デザイナー・阿部太一が、劇場ロビーなどの空間づくりをデザインムジカの安藤僚子が中心となり、公募で集められたサポーターとともに手がけているので、観劇の前後にぜひ眺めてみては。
柴は創作前のインタビューで、東日本大震災をきっかけに、物理的な距離と心理的な距離の関係を考えるようになった、と語っている。本作の当日パンフレットでは、創作を進めるうえで「幸福な空間と、悲劇の空間の距離は何をもたらすのか」を追究するようになったと言い、「偶然にも、幸福に/不幸に、生きる/死ぬとはどういうことか」「その発想こそ、本作の構想の根幹となりました」と語っている。壮大なテーマに迫る本作のラストを、ぜひ劇場で確かめてみては。公演は10月15日まで。なお公演特設サイトには、本作の“観劇のヒント”が掲載されている。
※初出時、本文に一部誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
フェスティバル/トーキョー17「わたしが悲しくないのはあなたが遠いから」
2017年10月7日(土)~15日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト、シアターウエスト
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