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「ミス・サイゴン」卒業の市村正親が駒田、ユカイと役への思いを語る

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「ミス・サイゴン」にてエンジニア役を務める3人。左からダイアモンド☆ユカイ、市村正親、駒田一。

「ミス・サイゴン」にてエンジニア役を務める3人。左からダイアモンド☆ユカイ、市村正親、駒田一。

2016年10月に東京・帝国劇場で開幕するミュージカル「ミス・サイゴン」。本格的な稽古開始を前に、エンジニア役の3人が、作品と役の魅力について語った。

中心人物であるエンジニア役を、今回は市村正親、駒田一、ダイアモンド☆ユカイがトリプルキャストで演じる。前回2014年の公演では、市村が初日に出演したのみで急遽降板し、大きなニュースとなった。リベンジとなる今回で、市村は「サイゴン」を卒業することを発表している。

1989年にロンドン・ウエストエンドで初年された「ミス・サイゴン」。ウエストエンド初演後、ブロードウェイや世界各国でも上演され、日本でも1992年初演以来、公演を重ねている。舞台はベトナム戦争末期のサイゴン。ベトナム人少女キムは、フランス人とベトナム人の血を引く“エンジニア”が営む売春宿で働いている。ある日キムは、アメリカ大使館に勤めるクリスと恋に落ち……。物語の鍵を握るエンジニア役を、日本初演から24年にわたり演じ続けてきたのが市村正親だ。

市村は今回の出演について「25年前に初めてこの『ミス・サイゴン』の初演に出させていただいた時のナイーブな感覚をもう一度思い起こしながら、年齢は67歳になったけれど、駒田くんにもユカイさんにも真似できない、僕だけのビビッドな部分を呼び起こして演じたい。と同時に、僕の血はもうほとんどエンジニアの血になっていると思うので(笑)、どう演出されてもエンジニアになれるんだけど、今回はさらに新しいエンジニアになれるんじゃないかなって気がしていますね」と意気込む。

一方、10年前からエンジニア役のオーディションに挑戦し、3度目の正直で2014年に初めて役を勝ち取った駒田一は、「ミュージカル俳優としてこの作品や楽曲の素晴らしさに触れていたい、エンジニアという役にもっと近づきたいって気持ちで前回はやらせていただきました。でも一生懸命すぎて、息ができなくなる、酸欠状態の瞬間が何度もあって(笑)。今回はもう少しこの役で息ができるようになりたいですね」と苦笑した。また今回、エンジニア役に魅せられて、自らオーディションに臨んだというダイアモンド☆ユカイは「自分の人生においても、ひとつの挑戦です。ロックスターになって武道館に立つのがずっと夢でしたが、それはすでに叶えたので、今度は50過ぎて帝国劇場に立ち、『アメリカン・ドリーム』(エンジニア役の名ナンバー)を歌うのが夢(笑)。ただ、ミュージカル界では新人そのものなので、市村さん、駒田さんはじめサイゴン・ファミリーの皆さんについていけるようにがんばりたい」と目を輝かせる。

それぞれキャリアも個性も異なる3人だが、全員が口を揃えて語るのは、エンジニアという役の魅力だ。市村が「どんなことがあっても生き抜く、生き延びてやるっていう生命力の強さや生き様」と言えば、駒田も「目的に向かって手段を選ばずとにかく向かっていき、そのためには頭も平気で下げられる。そんな多面性が見せられる役はそう多くはありません」と続け、ユカイも「初めて観た時、ロックだなって雷に打たれたんです。エンジニアという役に出会えたことは、自分にとってものすごく大きい転機」と熱っぽく語る。

市村にとっては、今回が最後のエンジニア役。日本初演時の思い出を「一番大きなことは、初日に皇太子様に観ていただけて終演後にお話ができたこと。あとは週10回の公演を乗り切るためにマッサージを欠かさなかったり、ちょっと体調が不安だと点滴に行ったり……。(本田)美奈子が滑車に足を挟まれる大事件もあったし、再演の時は何度も装置の不具合があって、僕なんか何度もお客さんたちの前で、出演者を代表して謝ったなあ(笑)」と感慨深げに振り返る。自身としても思い入れの深いエンジニア役を、それでも今回“卒業”することにしたのは、「前回の本番中に降板することになり、そういつまでも(同じ役で)立てるわけではないと思ったから。今回が僕の集大成として演じきるのもいいかなと思ったんです。それに僕、ほかにもたくさんやることがあるんだよ!」と明るい笑顔で答えた。

ミュージカル「ミス・サイゴン」

2016年10月
東京都 帝国劇場
※岩手、鹿児島、福岡、愛知公演もあり

作:アラン・ブーブリル、クロード=ミッシェル・シェーンベルク
オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
出演:市村正親、駒田一、ダイアモンド☆ユカイ ほか

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