中村米吉

中村米吉の#カワイイは世界を救う? 第9回 [バックナンバー]

中村米吉、“可愛らしい生き物”とたわむれる

「金閣寺」で共演中の2匹が登場、“雪姫カワイイ”なクリアファイルも

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東京・歌舞伎座で上演中の「秀山祭九月大歌舞伎」昼の部「祇園祭礼信仰記 金閣寺」で、女方の大役である三姫の1つ、雪姫を初役で勤めている中村米吉。米吉は、持ち前のはかない美しさで、桜吹雪の中で縛られたままうろたえる“可哀想カワイイ”な雪姫の悲哀を増幅。また父・中村歌六が演じる悪役・松永大膳に斬りかかるシーンや、桜の花びらが敷き詰められた地面に、足の爪先でネズミの絵を一心不乱に描く“爪先鼠”の場面では、雪姫の持つ芯の強さや健気さを身体いっぱいで表現し、観客の心を鷲づかみにしている。なお雪姫役は、中村児太郎とのWキャスト。9月20日からは、雪姫を児太郎にバトンタッチし、代わって「土蜘」で巫子榊を演じる。いとこである中村歌昇の次男・中村秀乃介と米吉の、「土蜘」での“可愛すぎる去り際”にも注目だ。

このコラムは、カワイイ米吉に、日常で見つけた“カワイイ”を写真と共に紹介してもらい、カワイイ×カワイイの相乗効果で読者の心をときめかすことを目的としている。今回登場するのは、「金閣寺」で米吉が共演している、可愛らしい2匹の“生き物”。1匹は滝の中に現れる神々しいもの、もう1匹は雪姫を救い出す小さきもの……そんなカワイイ“2匹”とたわむれる、米吉の姿に癒やされよう。

題字:中村米吉

可愛らしい2匹の生き物をご紹介!

皆さんもうっすらご存知だとは思いますが、実は私は歌舞伎役者です。
あ、よく知ってる。そりゃそうか(笑)。

“歌舞伎”というものは総合芸術でして、私1人が突っ立っていてもどうにもなりません。
楽屋では衣裳さんに床山さん、舞台では大道具さんに照明さん、多くの皆さんに盛り立てていただいたうえで初めて舞台に立てるわけです。
そして、同じく私たちを盛り立て助けてくれている、なくてはならない存在が“小道具”。
歌舞伎の小道具を長年担ってくれている藤浪小道具さんによって、さまざまな技術や道具が今に伝わっています。

その中には生き物も!
そりゃそうですよ。本物の動物なんか使えるわけないですからね、舞台で(市川猿翁のおじさんは本物の鳩を羽ばたかせようとしたらしいですが笑)。

というわけで、今月私が出演している「金閣寺」の舞台から、可愛らしい2匹の生き物をご紹介しましょう!!

1匹は龍! ドラゴンですね。

滝に現れる龍。こうして見ると、滝から釣り上げられたよう。

滝に現れる龍。こうして見ると、滝から釣り上げられたよう。

劇中、松永大膳が刀を滝に向けるとあら不思議! 水の中に龍が出現します。
その場面で黒衣が差金を使って、この子を登場させるんです。

近くで見ると、何だかちょっと眠たそうでカワイイ。

舞台では大きな滝の中に小さく龍がちょこちょこしていて可愛らしく見えますが、実物は私の肩にしっかり乗せたところ、そこそこな大きさでした。

龍を肩に乗せた米吉。まるで龍遣いのような、ファンタジックな出で立ちに。

龍を肩に乗せた米吉。まるで龍遣いのような、ファンタジックな出で立ちに。

細かくうろこが付いていて、手足もしっかりあって、ひげもちゃんと生えています。蛇腹になっているのか、龍らしい動き方をきちんとしてくれます。

これまで観客として舞台を拝見していて、この龍がどうにも滝に対して小さすぎるような気がしていたんですが、改めて今回舞台上から雪姫として見ていて、気付いたことがありました。

きっと、滝に刀をかざして龍がジャジャーン!とジーニーみたいに出てくるわけではないんですよ!
刃に夕日があたり、その光が滝に反射して龍の形にきらめいてる。
滝の落ちる水の間で刀身の輝きがユラユラと龍の形に見える……。
のではないのかなと。

そう考えた場合、刀の大きさとそんなに違いのない龍が現れなくてはいけないはずなんです!

ちなみに、あの名刀は朝日に向けると、お不動様が現れるという設定なんですが、舞台の時間設定が朝だったら、滝の中にお不動様が差金でフワフワ浮いていたということになります。
それはそれでなんか見てみたいな(笑)。

そして「金閣寺」で最も重要なのは、ネズミちゃん!

よしよし……とネズミを愛でる、米吉扮する雪姫。

よしよし……とネズミを愛でる、米吉扮する雪姫。

縛られた雪姫が、爪先で桜の花びらと自らの涙で描いたネズミに魂が宿り、姫を助けます。“爪先鼠”と言われる雪姫の大きな見せ場ですね。

お目目が赤くて可愛いらしい。

このネズミ、素晴らしい仕掛けが施されていて、栓を抜くと解体されます(笑)。

言葉通り、華を添えてくれるネズミの仕掛け。

言葉通り、華を添えてくれるネズミの仕掛け。

このネズミの中に桜の花びらを詰めておくことで、桜で描かれたネズミが桜を散らしながら消えていくという美しい演出がなされるわけです。

ちなみにこの桜は引っ込んできた私の衣裳についていた桜を再利用しました。
すごいんだ、楽屋中が桜まみれで(笑)。

また、ネズミを開けたまま置いておくと解剖中みたいに。

米吉の撮影スキルにより、物々しい雰囲気を醸し出すネズミ。

米吉の撮影スキルにより、物々しい雰囲気を醸し出すネズミ。

爪先鼠の開き……。
あんまり可愛くない。

これだけでなく、歌舞伎の小道具には可愛らしい物がまだまだたくさんあります。
しかも、最近では小道具だけでなく、新たなカワイイものを開発してらっしゃいます。

その1つが金閣寺クリアファイル!

金閣寺クリアファイルの中の雪姫、誰かと似てる…?

金閣寺クリアファイルの中の雪姫、誰かと似てる…?

米吉さんに似てる感じがするから~と、藤浪小道具の近藤さんがくれました。

ネズミに差金が付いているところがポイント!
小道具屋さんが作った感じがしてカワイイですよね。
“フジナミヤ”というオンラインショップで、小道具にスポットを当てた、可愛らしくて、素敵な小道具さんならではのグッズを製作し、販売されています。
歌舞伎座の地下、木挽町広場にもショップが出ていますので、お芝居好きな方はもちろん、あまり詳しくない方も楽しめるはずですのでぜひ覗いてみてください!

ただ1つ、小道具さんには申し訳ない夢があるんですよね……。

それは雪姫の爪先ネズミで丸を3つ描き、差金のネズミではなくて、手袋をしたスーパースターネズミを出現させてみたい!というトチ狂った野望。
「アハッ! 縄を解いてあげるよ!」って言ってほしい……。

千葉の某所で特別公演とかできないかな(笑)。

プロフィール

中村米吉(ナカムラヨネキチ)

1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。昨年7月に上演された「風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―」、昨年12月から今年1月にかけて上演された「オンディーヌ」では、それぞれタイトルロールを務め、3・4月に上演された「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」では、ヒロイン・ユウナ役を勤めた。現在、「『秀山祭九月大歌舞伎』二世 中村吉右衛門三回忌追善」に出演中。10月には、東京・国立劇場での「『妹背山婦女庭訓』<第二部>」に入鹿妹橘姫役で、11月には歌舞伎座での「吉例顔見世大歌舞伎」昼の部「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」に汲手姫役、夜の部「秀山十種の内 松浦の太鼓」にお縫役で、来年2月から3月にかけては、東京・新橋演舞場での「スーパー歌舞伎「三代猿之助四十八撰の内『ヤマトタケル』」に兄橘姫 / 弟橘姫役で登場する。11月11日には、自身のトークショーを開催。毎週水曜日にAuDeeプレミアムにて自身がパーソナリティを務める番組「中村米吉 悪魔の時間」を配信中。

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読者の反応

藤浪小道具(株)[公式] @fujinamikodougu

米吉さんのコラムにて、「金閣寺 雪姫クリアファイル」をご紹介いただきました!!

小道具のねずみくんたちも、たくさん出演しています!
米吉さん、ありがとうございます~~

#中村米吉
#米吉さん 
#金閣寺 
#雪姫 
#歌舞伎 
#小道具 
#藤浪小道具 
#木挽町広場

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