左から武子直輝、押田岳、中屋敷法仁。

テンミニ!10分でハマる舞台

赤坂に紫テントが出現!中屋敷法仁・押田岳・武子直輝が語る「血は立ったまま眠っている」

人生の中で強く残る観劇体験に

PR赤坂芸術祭2025「血は立ったまま眠っている」

「赤坂芸術祭2025」が、10月5日から26日にかけて赤坂サカス広場 特設紫テントで開催される。「赤坂芸術祭」は、“テント芝居”を通して新たな文化発信、文化交流を図ることを目的に、2024年に「赤坂舞台芸術祭」としてスタートしたイベント。今回の「赤坂芸術祭2025」のメイン公演となるのが、柿喰う客の中屋敷法仁が寺山修司の戯曲を演出する「血は立ったまま眠っている」だ。六十年安保闘争を舞台に若者たちの姿を描いた「血は立ったまま眠っている」に、主演を務める押田岳をはじめ、武子直輝、川崎愛香里、柿喰う客の面々ら若手俳優陣が挑む。赤坂に建てられた紫テントで、“テラヤマワールド”を立ち上げるべく奮闘する中屋敷、押田、武子に、公演にかける思いを聞いた。

取材・/ 興野汐里

「自分、ビビってないか?」あえて難しい戯曲を選択

「血は立ったまま眠っている」は、寺山自身の短い詩から着想を得て、寺山が23歳のときに執筆した戯曲。浅利慶太の演出により劇団四季で初演され、2010年には蜷川幸雄演出、森田剛主演で上演された。本作では、六十年安保闘争を背景に、若者が抱える孤独、彼らの抑圧された情動や時代への反抗が、テロリストの弟分である主人公の良、テロリストの灰男、良の姉・夏美らを中心に描かれる。

赤坂芸術祭2025「血は立ったまま眠っている」メインビジュアル

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寺山と同じく青森県生まれで、少年時代から彼を敬愛していたという中屋敷は、今回「血は立ったまま眠っている」を演出することになった経緯について、「実は最初、優れたシナリオライターである寺山さんが芳醇な言葉を用いて描いた『青ひげ公の城』『星の王子さま』『毛皮のマリー』のような戯曲をやろうと思っていたんです。でも、『このチョイスをする自分、ビビってないか?』と感じて。寺山さんが成熟しきっていない、まだ彼の言葉が生々しくて、迂闊で、危険な匂いを放っていた頃の作品をやるべきなのではないかと思い直し、『血は立ったまま眠っている』を上演することにしました。演出しやすい戯曲ではなく、あえて難しい戯曲を選ぶことで、寺山さんの言葉と向き合いたいと考えたんです。演出面では、若者たちの姿を通して、衝動的なエネルギーだけは持っているけど何も成していない、“持たざる者の強さ”を表現できたら」と語る。

中屋敷法仁

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若い座組で立ち上げる“テラヤマワールド”

演出の中屋敷は1984年生まれ、良役の押田は1997年生まれ、灰男役の武子は1993年生まれ。寺山が精力的に活動していた1960・70年代からしばらく時代が下ってから生まれた若い世代の座組で、今回「血は立ったまま眠っている」に挑む。

良役の押田岳。

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「血は立ったまま眠っている」を通して、“テラヤマワールド”に触れた感想を俳優の2人に尋ねると、押田は「率直に言うと、『……わからない!』でした。時代背景も言葉遣いも今とはまったく違うので、初めは戸惑ったのですが、寺山さんの言葉って、口に出してみるとすごく言いやすいんです。自分で戯曲を読み込んだり、皆さんと本読みをしたりするうちに、『血は立ったまま眠っている』という作品は、良と灰男の2人が、攻撃性を持つことで自分のアイデンティティを確立していく物語なのではと感じました。僕が演じる良は、自分が今後どのような人生を送っていったら良いかわからない中で、憧れの灰男という存在を介して、自分自身をなんとか形作ろうとしている。現代の僕たちにも置き換えられる部分があると思うので、良の心情をしっかり汲み取って、お客さんにお伝えできたらと思います」という力強く答えた。

灰男役の武子直輝。

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武子は「『血は立ったまま眠っている』には、アーティスティックでロマンティックな描写が多く、また抽象的な要素が多分に含まれているので、人によってさまざまな受け取り方ができる作品だと感じました。だからこそ、演じる側の自分たちがしっかりと芯を持って演じる必要がありますよね。僕が演じる灰男は23歳という設定なのですが、二十代前半は目的のない葛藤をする時期なんじゃないかと思っていて。灰男って、1つひとつの出来事に対しては『これをああして、あれをこうしよう』と考えながら遂行しているんですけど、彼の最終的な目標は一体何だろう?ということが見えてこないんです。灰男を演じるうえで、その点を明確にしたほうが良いのか、濁したほうがいいのか、中屋敷さんや座組の皆さんと稽古しながら演じ方を考えたいと思います」と真摯に語った。

普段は味わえないような特別な時間

「血は立ったまま眠っている」が上演される赤坂サカス広場には、金守珍率いる新宿梁山泊の紫テントが仮設建築される。中屋敷は「赤坂という場所、そして紫テントという場所が作品とうまくマッチすると良いなと思います」と期待を込める。キャスト2人は「テントで芝居をするって、まだまだ想像がつかないところが多いよね……」と答えつつ、武子は「上演中に周囲の音が聴こえたりすると思うんですけど、それがむしろ日常の中にあるリアル感、ライブ感につながって、作品に味方してくれるかもしれないですよね」と前向きな姿勢を見せた。

カンパニーにとって大きな挑戦であり、また観客にとっても新たな体験となる可能性を秘めた本公演に向けて、押田は「『私、観に行っても大丈夫かな? ちゃんと理解できるかな?』と迷っている方が多いと思うのですが、大丈夫です! 演じる僕たちも最初は同じ気持ちでした。とにかくシンプルに、一緒に“テラヤマワールド”を楽しみましょう。会場でお待ちしています!」とコメント。武子は「疾走感がある作品なので、絶対に飽きさせない自信があります。紫テントという素敵な場所で、普段は味わえないような特別な時間を提供します」と決意を明かし、中屋敷は「人生の中で強く残る観劇体験になると思うので、楽しみにしていてください」と観客に呼びかけた。

「血は立ったまま眠っている」公式サイト

赤坂芸術祭2025「血は立ったまま眠っている」

開催日程・会場

2025年10月5日(日)〜16日(木)
東京都 赤坂サカス広場 特設紫テント

スタッフ

作:寺山修司
演出:中屋敷法仁

出演

良:押田岳
灰男:武子直輝
夏美:川崎愛香里
大村わたる / 原田理央 / 長尾友里花 / 福井夏 / 蓮井佑麻 / 中嶋海央 / 佐々木穂高 / 田中廉 / 山中啓伍 / 浦谷賢充

公演・舞台情報

中屋敷法仁(ナカヤシキノリヒト)

1984年、青森県生まれ。高校在学中に発表した「贋作マクベス」で第49回全国高等学校演劇大会・最優秀創作脚本賞を受賞した。青山学院大学在学中に柿喰う客を旗上げし、2006年に劇団化。旗揚げ以降、すべての作品の作・演出を手がける。劇団以外の主な作品に、「演劇【推しの子】2.5次元舞台編」(脚本・演出・作詞)、「ワールドトリガー the Stage」(脚本・演出)、ACMファミリーシアター「リトルセブンの冒険 ~白雪姫去りし後の “こびとたち” の物語~」(脚色・演出)、「熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」(演出)、「ダブル」(演出)、演劇集団 円「ペリクリーズ」(演出)など。舞台公演以外にも、サンリオピューロランドショー「Nakayoku Connect」の脚本・演出、TBSドラマストリーム「恋愛のすゝめ」やNHK FMシアターの脚本などを手がけている。12月に、舞台「幻想水滸伝-門の紋章戦争篇-」(脚本・演出)の公演を控える。

押田岳(オシダガク)

1997年、神奈川県生まれ。2016年、「第29回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞し、デビュー。2018年から2019年にかけて放送された特撮ドラマ「仮面ライダージオウ」で仮面ライダーゲイツ / 明光院ゲイツ役を務めた。主な出演作に、舞台「西遊記」「劇走江戸鴉~チャリンコ傾奇組~」「しばしとてこそ」、映画「水平線」「ファストブレイク」、ドラマ「コスメティック・プレイラバー」「BLドラマの主演になりました」「グラぱらっ!」などがある。

武子直輝(タケシナオキ)

1993年、東京都生まれ。2000年、子役としてデビューし、NHK教育(Eテレ)「さわやか3組」のほか、CM、映画に出演。その後、「演劇『ハイキュー!!』」シリーズ、「『僕のヒーローアカデミア』The “Ultra” Stage」シリーズ、「舞台『刀剣乱舞』」シリーズ、映画・ドラマ「牙狼」シリーズ、映画「女子高」、ドラマ「ハンサムセンキョ」などに出演した。

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