2016年の結成から今年で活動10年目を迎えた江古田発ロックバンド・時速36km。疾走感と爆発力を兼ね備えたサウンドでライブハウスシーンで存在感を示し、昨年には東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)でのワンマン公演を成功させた。そんな彼らは今年12月にニューEP「Around us」を発表。リリース直前というタイミングでの開催となった今回の渋谷CLUB QUATTROワンマンでは、約2時間にわたるライブでオーディエンスを熱狂させた。
加速度的に増していく疾走感
おなじみのSEである透明雑誌「ノラネコ」が鳴り響く中、大歓声に迎えられながら時速36kmが登場。ニューEP「Around us」収録の「Around i」でライブをスタートさせる。ホーリーな響きのシーケンスとギターのストロークが丁寧に重なり合う幕開けから一転、「tiny spark」「銀河鉄道の夜明け」では松本ヒデアキ(Dr, Cho)のドラミングがけん引する爆発的なアンサンブルによって、ライブは加速度的に疾走感を増していく。
仲川慎之介(Vo, G)のギターソロからなだれ込んだ「動物的な暮らし」では、オギノテツ(B, Throat)が「今日は撮影も入ってます! 3日後にはCDを出します! そしてあなたたちが今日集まってくれました! 来年も時速36kmぶっ飛ばしますのでよろしくお願いしまーーす!!」と早口で叫び、それに応えるようにフロアから拳と歓声が上がった。初披露となる「新式弐型」では、石井開(G, Cho)の強烈なギターソロが会場に響く。開幕から5曲を畳みかけたのち、仲川は満員のフロアを見渡して「楽しいなあ」とひと言。この日はEP「Around us」を携えたワンマンではないと説明しつつも、EP収録曲8曲すべてを演奏すること、さらに普段のライブより長尺になることを告げて観客の期待感を煽った。
EPからの1曲「デイドランカー」でパフォーマンスを再開した時速36kmは、勢いそのままに「かげろう」「真面」を続けて披露。仲川は張り上げるような歌声で、言葉1つひとつをフロアに届けていく。メロディアスな「素晴らしい日々」では会場が大合唱に包まれ、「優しい歌」ではひと際エモーショナルな空気が広がった。先日、第1子の誕生をSNSで報告していたオギノ。客席から「おめでとー」と祝福の声が飛ぶと彼はそれに感謝を示しつつ、「今日ライブに来てくれている人の中には、幸せじゃない人もいるかもしれないし、そういう人たちのために、俺たちはライブをやってます。みんなのことも幸せにして帰らせるので安心してください。よろしくお願いします」と語り、その姿を見た仲川が「いいね。変わらないね」と口角を上げるひと幕もあった。そんなオギノの「俺たちがお前らのスーパースター!」という絶叫を合図に、「スーパースター」からライブは後半戦へ突入。「スーパーソニック」「アトム」をシームレスにつなぎ、「シャイニング」では、仲川のギター弾き語りからバンドが合流するアレンジで観客を強く引き込んだ。
10年でも20年でも走り続ける
次のMCでは、オギノの口から2026年の東名阪ツアー開催が発表され、フロアから歓声が上がる。続いて会場名が明かされると、そのキャパシティの小ささに「えー」と驚きの声が広がった。そんな観客に向け、オギノは「チケット当ててください。よろしくお願いします!」と呼びかけた。そして仲川はリリースを間近に控えたEP「Around us」について言及。「渾身の自信作です。こんなにストレスがかかった作品は今までなかったと思う。『これだったらもっと届くんじゃないか』ということをすごく反芻して作った、かわいい曲たちなので、よかったら聴いてください」とアピールした。続けて「そして今年、これが最後のライブです」と切り出し、バンドの歩みを振り返った仲川。「最初は遊びで始めたようなバンドで、どうにもならなかったら1年で解散するつもりだったし、どうせそうなるだろうと思っていた。でも、そうならずにここまで転がってこれた理由として、忘れもしない、最初についてくれたお客さんの顔がチラつくんです」と語る。「そういうもののパワーって本当にデカくて。それが今、ここに何人いるんですか。そりゃもう辞められねえよな。10年でも20年でも走り続けるよ。あんたらのおかげです。本当にありがとう」と感謝の言葉を届けた。そんな真摯な言葉を経て、ライブはいよいよ佳境へ。4人は「七月七日通り」「ハロー」などアップテンポなライブチューンを畳みかけ、ラストにEPからの1曲「Gazer」を届けてステージをあとにした。
アンコールに応え、再びステージに登場した時速36kmは、ライブ初披露となる「Around you」を演奏。約1分半のファストチューンながら、フロアはじっと演奏に聴き入る。同じくライブ初披露となるEP収録曲「ゴースト」を届けたのち、ラストの「夢を見ている」では観客の熱いシンガロングを誘い、大合唱の中、約2時間にわたるワンマンライブの幕を下ろした。
セットリスト
「時速36km presents "hyper (un)usual"」2025年12月14日 渋谷CLUB QUATTRO
01. Around i
02. tiny spark
03. 銀河鉄道の夜明け
04. 動物的な暮らし
05. 新式弐型
06. デイドランカー
07. かげろう
08. 真面
09. 素晴らしい日々
10. 優しい歌
11. スーパースター
12. スーパーソニック
13. アトム
14. シャイニング
15. Stand in life
16. Happy
17. 七月七日通り
18. ハロー
19. Gazer
<アンコール>
20. Around you
21. ゴースト
22. 夢を見ている
時速36km one man live -Latency:0sec Tour
2026年3月7日(土)大阪府 LIVE HOUSE Pangea
2026年3月14日(土)愛知県 栄R.A.D
2026年3月22日(日)東京都 下北沢SHELTER
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時速36km @36km_per_hour
◎メディア情報◎
12/14(日)
時速36km presents
"hyper (un)usual"
@渋谷CLUB QUATTRO
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