「みらいのうた」は宮地が2022年から2024年までの3年以上にわたり吉井に密着して撮影した作品。喉頭がんであることが発覚した吉井が闘病とライブリハーサルを続け、東京ドームでの“復活の日”を迎えるまでの日々や、彼のミュージシャン人生の原点であるURGH POLICEのボーカル・EROとの40年ぶりのセッションの様子などが映し出される。
10月に開幕した「第38回東京国際映画祭」で初上映され、昨日5日から全国公開されている本作。ファンの感想を「エゴサしている」という吉井は「ありがたいことに、あんまり酷評はないですね(笑)。ドキュメンタリーなのに何回も観たいと言ってくださる方が多くて」と安堵の表情を浮かべ、宮地も「評判がよくて、とてもうれしく思ってます」と笑顔を見せた。
宮地が密着撮影を始めた当時を「映画になるのか、配信されるのか、僕のソロアルバムの特典映像になるのか着地点がわからないまま撮り始めた」と振り返った吉井は「まるで脚本が決まってたかのように、不思議なシンクロニシティみたいなことがどんどん起きて」と、3年間で起きたさまざまな出来事に思いを馳せる。吉井とEROがそれぞれライブ活動を休止していた時期に撮影を始めたという宮地は「『2人が再びステージに立つまで撮りたい』というのが最初に描いた構成で。それ通りにはなってるんですけど、吉井さんの病気が途中で発覚したり、EROさんが普通にギターを弾いて歌えるようになるまでのリハビリに時間がかかったり。途中想像もしてなかったことが起きたけれど、最初から決まってたかのような作品になったのは自分でも驚きました」と完成した作品について語った。
MCを務めた奥浜レイラから「泣く泣くカットしたシーンは?」と尋ねられた宮地は「けっこうあります。THE YELLOW MONKEYの皆さんの会話が面白すぎるんですよ」と、劇中にも登場するメンバーたちの場面について触れ、吉井が「あれはすごいよね、まさかヒーセ(廣瀬洋一)の……」と廣瀬の印象的なシーンを取り上げて観客の爆笑を誘うひと幕も。和やかなトークを繰り広げる一方、作品のテーマについて話が及ぶと宮地は「吉井さんは僕の中では完璧なロックスターですけど『特別な人です』というふうに描いちゃうとドキュメンタリー作品にならない。吉井さんが人間として生きている部分に、観た人が自分を投影してくれたら」と語った。
また吉井は自身の原点となった存在であるEROについて「『吉井和哉単体だとあまり面白いドキュメンタリーにならなさそう』と思って、宮地監督をEROのところに連れていったんですけど。映画を観て『こんなに自分にとってキーパーソンだったんだ』と驚きました。よくも悪くも反面教師で恩人で、ちょっとタチの悪い親戚のおじさんみたいなポジションだったんですけど(笑)、それをずっと引きずったまま生きてきたんだなと」と、真摯な表情で話す。そして「“1990年代の吉井和哉”はもう僕の中でどこかに行っちゃって。一生懸命あの人になろうとしてたところもあったけど、病気になったりもして『それは前向きなことじゃないよな』と遠ざかっていきました。それもすごい面白い人生だし、残りはあと15年ぐらいかなと思ってるんですけど、ここからの“本編”をどういうふうに終わらせるかを楽しみにしています」と自身の“みらい”について語った。
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