あたらよが感情揺さぶった「夢語り」ツアー千秋楽、ひとみが人生を通して見続けたい景色

あたらよの全国ツアー「あたらよ『夢語り Yume-gatari』TOUR 2025」のファイナル公演が11月27日に東京・Spotify O-EASTで開催された。

あたらよは本ツアーにて、9月の大阪を皮切りにアジアを含む14都市を巡回。10月にリリースしたミニアルバム「泡沫の夢は幻に」の収録曲に人気曲を織り交ぜたライブで各地のファンを熱狂させた。ファイナルの東京は小雨がぱらつくあいにくの天気であったが、会場にはたくさんの観客が詰めかけた。

「今日、俺たちと約束しよう」

幻想的なSEを経て、ひとみ（Vo）が命を救われた経験や希死念慮について朗読し、“悲しみをたべて育つバンド。”をキャッチコピーに掲げるあたらよのライブの世界観を作り上げる。そして、どこか朗読とリンクする「溺れている」でライブは幕を開けた。あたらよの強力な個性となっている、はかなくも力強い、情熱的でときに冷淡なひとみの歌声が聴衆を圧倒する。そんな歌声に呼応するように、たけお（B）と、まーしー（G）の演奏にも熱が入り、静と動の混在したステージに会場中の視線が釘付けに。最新曲や代表曲が次々に演奏され、そのたびにフロアから大きな拍手と歓声が送られた。

ライブ中盤、まーしーは次に演奏する楽曲について「会えなくなってしまった人に向けて歌いたいと思う」と宣誓。死別してしまった親友と1つの約束を交わしたこと、その約束があったからこそ今日まで生きてこられたことに触れ「みんなも今日、俺たちと約束しよう。何があってもこの場所は俺たちのものだし、みんなのものです。寂しいことがあったらまたここに帰ってきてください」とメッセージを紡ぎ、自身がボーカルを務める「夢現、夏風薫る」の演奏へとつないだ。これはひとみが2023年に梶原岳人へ提供した楽曲のセルフカバー。切なさあふれるメロディと歌詞、彼の純粋な歌声が観客の涙腺を刺激した。

「生きていてよかった」と思える景色を一緒に

「いい表情してるね！」とフロアを見渡したひとみは、ここ数年を「悲しみを悲しみとして消化できない時間が過ぎ去ってしまった」と回想。続けて「でもね、その時期を経て、気付いたらこうして大好きな音楽をやっています」「私は人生を通して『生きていてよかった』と思える景色を皆さんと一緒に見続けていきたい。今現在も皆さんが見せてくれています。歌う場所をくれて本当にありがとうございます」と語り、ファンに感謝の思いを伝えた。

その後、喪失感をつづった「しないで」でライブは再開。センチメンタルな空気を吹き飛ばすかのように「夜空を蝕んで」からムードが一変し、エモーショナルかつアッパーな楽曲が畳みかけられる。激しいステージングを伴う、ロックバンドらしいアグレッシブな演奏に、フロアから大量の拳が突き挙がった。そんなブロックを終え、まーしーは「あたらよって本当に感情がジェットコースターだよね。さっき泣きそうだったのに、今めっちゃ楽しい！」と破顔した。

終わりは始まり

たけおの貴重なMCを経て、ライブは終盤へ。この時期にぴったりの「クリスマスのよる」をプレゼントしたあたらよは、「青を掬う」「空蒼いまま」といったナンバーでジャンプやシンガロングを巻き起こし観客と一体になった。そしてラストに、たけおの歪んだベースがインパクトを残す「ツキノフネ」でフロアにこの日一番の熱狂を生み出してステージをあとにした。

アンコールに応えたあたらよは、まず芳醇なサウンドをともに作り上げたサポートメンバーの坂本暁良（Dr）と岡田基（Key, G）を紹介。さらにオフィシャルファンクラブ「アタラモノ」の会員限定ライブの開催を発表しファンを喜ばせた。ツアーの終了を惜しみながらも「終わりは始まりだと思っているので。また会えることを楽しみにしています」と前向きな言葉を贈ったひとみ。「僕は...」「雪冴ゆる」の2曲を演奏し、最後の最後に感極まってしまった彼女は「ありがとうございました！ これからも、あたらよと一緒に生きていってくれたらうれしいです！」と涙を堪えながらメッセージを伝え、約2カ月におよんだツアーをフィナーレへと導いた。

ファンクラブライブは2026年3月6日に大阪・梅田Zeela、3月14日に東京・shibuya eggmanで開催される。詳細はオフィシャルサイトで確認を。

セットリスト

「あたらよ『夢語り Yume-gatari』TOUR 2025」2025年11月27日 Spotify O-EAST

01. 溺れている
02. outcry
03. 雫
04. 忘愛
05. 夏霞
06. 10月無口な君を忘れる
07. 夢現、夏風薫る
08. しないで
09. 夜空を蝕んで
10. 差異
11. 朝凪
12. クリスマスのよる
13. 青を掬う
14. 空蒼いまま
15. ツキノフネ
＜アンコール＞
16. 「僕は...」
17. 雪冴ゆる

公演情報

ファンクラブライブ2026「アタラ場」

2026年3月6日（金）大阪府 梅田Zeela
2026年3月14日（土）東京都 shibuya eggman