STUTSという港で交差する色とりどりの人生、出会いと別れを繰り返し航海は続いていく

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STUTSが9月23日にキャリア最大規模の会場となる神奈川・Kアリーナ横浜でワンマンライブ「Odyssey」を開催した。

STUTS(撮影:renzo)

STUTS(撮影:renzo)

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プロデューサーとして、ジャンルや世代の垣根を越え、さまざまなアーティストと楽曲を生み出してきたSTUTS。シーンのハブとも呼ばれることから着想し、“港”をコンセプトにしたという今回のライブ「Odyssey」には、過去最多数の仲間たちが集まり、さながら音楽フェスのような活況を呈した。

Spikey Johnが映像演出を担当

STUTS「Odyssey」の様子。(撮影:鳥居洋介)

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今回のライブでは、STUTSのミュージックビデオを多数手がけるSpikey Johnが映像演出を担当。LEDスクリーンに映し出される波の映像と、バンドメンバーのメロウな演奏で静かにライブは始まり、「Odyssey」というライブタイトルが映し出されると、STUTSがMPCを叩いて太いドラムの音を響かせる。長い航海の始まりの合図だ。

「Pretenders feat. C.O.S.A. & Yo-Sea」のパフォーマンスの様子。(撮影:横山マサト)

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すると活動初期からの盟友である北里彰久をはじめとして、パンチのあるラップをビシバシと決めるC.O.S.A.、清涼感あふれる歌声のYo-Seaと、多彩なゲストが次々ステージへ。「マジックアワー」ではBIMとRYO-Z(RIP SLYME)、「Pointless 5」ではPUNPEEスチャダラパーという世代を超えたアーティストのストーリーが交差する。

「Pointless 5」のパフォーマンスの様子。(撮影:横山マサト)

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LEX × LANAはじめ豪華コラボが次々実現

LEXとLANA。(撮影:横山マサト)

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実の兄妹であるLEXLANAが暗い生活から成り上がるまでを歌った「明るい部屋」を皮切りに、STUTSは ZOT on the WAVEとのユニット・STUTS on the WAVEとして制作した楽曲も披露。STUTSとZOT on the WAVEは、ともに日本を代表するヒップホッププロデューサーだが、プロデュースするアーティストはこれまであまり重なっていなかった。そんな2人が手を組んだことで「Perfect Blue」ではTiji JojoDaichi Yamamoto、RYO-Z、「雨」ではiriBenjazzyといった異色のアーティストのコラボが実現した。

「Perfect Blue feat. Tiji Jojo, Daichi Yamamoto, RYO-Z」のパフォーマンスの様子。(撮影:横山マサト)

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仰木亮彦のギターが唸りを上げ、Campanella鎮座DOPENESSがトリッキーにラップする「Sticky Step」では、無数のレーザーが幾何学模様を描き出すとともに、ステージのあちらこちらで爆炎が噴出。文字通りに会場の熱気が上昇する中、人気曲「Mirrors」に続けて披露された新曲「いい感じ」では、STUTSがこの日初めてマイクを握り、Daichi Yamamotoとテキサスを訪れた際の思い出をラップした。

Daichi Yamamotoと鎮座DOPENESS。(撮影:横山マサト)

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さらに「Feel Missing」では、STUTSとのコラボレーションにより脚光を浴びた若手のKaneeeがYo-Seaとともにクリアな歌声を披露。こうして開演からノンストップで会場が沸き続ける中、ライブ前半のハイライトとなったのは、「Empire Of The Sun」だ。この曲はBAD HOPのラストライブで初披露されたSTUTSプロデュース曲。親子のような関係であるT-PablowZeebraが再び対面してヒップホップ愛を歌い上げ、大きな感動を巻き起こした。

6人のMPCプレイヤーが集結

「MPC Special Session」の様子。(撮影:Daiki Miura)

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内容盛りだくさんの今回のライブの中でも一番の目玉企画と言えるのが「MPC Special Session」。STUTSがこれまで出会ったMPCプレイヤーたちとKraftwerkのように横一列に並び、MPCで一夜限りのセッションを繰り広げる。ここで登場したのはDJ Mitsu the Beats(GAGLE)、KEIZOmachine!(HIFANA)、DJ FUMIYA(RIP SLYME)、KO-ney、熊井吾郎という熟練プレイヤーたち。STUTSによれば、このセッションはDJ FUMIYAとの何気ないやり取りがきっかけで企画されたのだという。

「MPC Special Session」の様子。(撮影:Daiki Miura)

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またSTUTSは、GAGLEの作品に付属していたHIFANAのパフォーマンス映像を観てMPCが叩けることを知ったそうで、KEIZOmachine!がいなければ今のSTUTSはいないと語る。そんなエピソードトークを挟みつつ、彼らはその姿が映し出されたLEDスクリーンをバックにして、一斉にMPCをプレイし、それぞれの楽曲素材なども使用しながらセッション。同じMPCプレイヤーと言っても、それぞれのプレイスタイルには個性があふれており、観客はMPCという機材の魅力と奥深さを存分に味わった。

「MPC Special Session」の様子。(撮影:鳥居洋介)

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シークレットゲストや初披露の新曲も

爆炎が吹き上がる中でラップするKMC。(撮影:renzo)

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その後もSTUTSの多彩な友人たちがひっきりなしに現れ、歓声が途切れることなくライブは進んでいく。ストリングスを迎えて披露された「One」ではtofubeats、「Rock the Bells」ではKMCがバイブス全開でラップし、「World's End」ではアナウンスされていなかった台湾のシンガーJulia Wuと5lackが登場して観客を喜ばせる。続けてSTUTSは、Julia Wuに加えてタイのPhum Viphuritを迎えた新曲も初披露。STUTSのシーンのハブとしての役割は、国境を超えて広がっている。

STUTS「Odyssey」の様子。(撮影:横山マサト)

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ペトロールズ長岡亮介がお祝いのテキーラを持参して登場すると、STUTSは彼とタッグを組んで制作した楽曲「いろどりのうた」を披露し、ペトロールズの楽曲「Amber」のリミックスをKID FRESINOも迎えてパフォーマンス。KID FRESINOが颯爽と去ったのちは、亡きJJJのライブ音源を使用して「心」と「Voyage」が披露される。このライブの開催が発表されたのは今年2月で、JJJは第1弾出演アーティストとしてラインナップされていたが、4月に命を落としたのだった。

長岡亮介からテキーラを受け取ったSTUTS。(撮影:横山マサト)

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サンプラーでKアリーナとか夢があるじゃん

「Expressions」のパフォーマンスの様子。(撮影:Daiki Miura)

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ライブ終盤に爆発的な盛り上がりを生み出したのが「Expressions」だ。8人ものアーティストが参加するマイクリレー曲であり、ライブで全員がそろうことはほとんどないが、この日は客演陣が全員集結。その登場の仕方も斬新で、一番手のDaichi Yamamotoが2階の通路に現れたかと思えば、続くCampanellaはその向かい側の通路に現れる。そうしてRyugo Ishida、北里彰久、SANTAWORLDVIEWNENE仙人掌、鎮座DOPNESSが別々の場所から姿を見せ、めくるめくマイクリレーで会場に熱狂を生み出した。

「Expressions」のパフォーマンスの様子。(撮影:横山マサト)

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興奮冷めやらぬ中、畳み掛けるように始まったのはSTUTSの初期の代表曲「夜を使いはたして」。再びステージに現れたPUNPEEは、横浜を代表するOZROSAURUSの「Area Area」を引用するなど、アドリブを交えたパフォーマンスで観客を沸かせ、「サンプラーでKアリーナとか夢があるじゃん!」とSTUTSの肩を揉んで彼を称えた。

PUNPEEに肩を揉まれるSTUTS。(撮影:renzo)

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新たに生まれ落ちたその命に送るはピース&乳母車

そしてSTUTSがライブ本編の締めくくりに選んだのは、彼の人生にとってかけがえのない人物であるJJJにまつわる楽曲。「Hikari」では亡きJJJへの思いをKID FRESINOが駆け抜けるようにラップし、「ありがとう言う前に会えなくなったりするのも俺達らしい」と歌い上げる。そこから生前のJJJの映像が流れると、STUTSとJJJの代表曲「Changes」へ。LEDスクリーンにはJJJとSTUTSの映像が流れ続けており、「新たに生まれ落ちたその命に送るはピース&乳母車」というラインでは、STUTSが赤子を抱き、乳母車を押す場面が映し出される。

JJJの映像が映し出された場面。(撮影:鳥居洋介)

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パフォーマンスを終えたSTUTSは、昨年子供が生まれ、リリック通りJJJにプレゼントされた乳母車を使っていることを告白。彼が第1子の誕生をマネージャー以外で最初に報告したのはJJJだったそうで、ファンにはJJJと一緒に「Changes」を披露する場所で伝えたいと考えていたのだという。

それぞれの航海を続けていきましょう

STUTS「Odyssey」の様子。(撮影:横山マサト)

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ここまでで約3時間が経過しているが、アンコールではKohjiyaと映像出演のHana Hopeを迎えた「99 Steps」、T-Pablow、Daichi Yamamoto、BIM、NENE、KID FRESINOが集結した「Presence」のリミックスが披露され、熱狂的な盛り上がりが続いていく。そしてライブのクライマックスとして行われたのが、多彩なラッパーによる台本なしのフリースタイルセッション。STUTSがバンドメンバーを改めてフィーチャーしつつ、ライブ定番曲「Renaissance Beat」を演奏すると、PUNPEEをはじめとして、SANTAWORLDVIEW、鎮座DOPNESS、Ryugo Ishida、仙人掌、KMC、Zeebraが勢いよく乗り込んでくる。

さらにKMCが「STUTSもやっちゃっていいんじゃないの! フリースタイル! 君の出番だぜ! ここでパスザマイク!」と煽ると、PUNPEEとZeebraがSTUTSに代わってMPCをプレイ。Slum Village「Eyes Up」のビートに乗ったSTUTSは、「RIP J・ディラ、そしてJJJ 最高の友達」とスピットし、会場を大いに沸かせてみせた。

最後に改めて第1子の誕生をファンに報告したSTUTSは、「これから皆さん出会いも別れもあると思いますけど、たまにこうやって集まって幸せな時間を共有して、何かをもらって帰って、新たな明日に向かっていけたらいいなと思っています」と伝えると、自ら歌う「Seasons Pass」を披露。「それぞれの航海を続けていきましょう!」と呼びかけ、過去最大規模のワンマンライブに幕を下ろした。

STUTS「Odyssey」の様子。(撮影:横山マサト)

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セットリスト

STUTS「Odyssey」2025年9月23日 Kアリーナ横浜

01. Odyssey
02. Sail Away
03. Pretenders
04. Flower
05. マジックアワー
06. Pointless 5
07. 明るい部屋
08. Shall we
09. Perfect Blue
10. 雨
11. Sticky Step
12. Mirrors
13. いい感じ
14. Feel Missing
15. Empire Of The Sun
16. MPC Sessions
17. Conflicted
18. One
19. Rock the Bells
20. World's End
21. 新曲
22. Dream Away
23. いろどりのうた
24. Amber
25. 心 with JJJ
26. Voyage with JJJ
27. Expressions
28. 夜を使いはたして
29. hikari
30. Changes with JJJ
<アンコール>
31. 99 Steps
32. Presence Remix
33. Free Style
34. Seasons Pass

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【ライブレポート】
STUTSがKアリーナ横浜で過去最大規模公演「Odyssey」開催

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