7年ぶりのアルバム「EXTRA」を昨年リリースし、一躍話題のトリプルファイヤー。同年8月に東京・渋谷CLUB QUATTROでレコ発ライブを行ったのち、リリースツアーとして、12月に愛知と大阪でワンマンライブを開催した。東京キネマ倶楽部を舞台とした今回のワンマンライブは「EXTRA」リリースツアーのファイナルとして企画されたもの。吉田靖直(Vo)、鳥居真道(G)、山本慶幸(B)、大垣翔(Dr)に加えて、アルバムに参加した沼澤成毅(Key)、シマダボーイ(Perc)、池田若菜(Fl, Sax)、PLASTICMAI(Vo)もステージに上がり、「EXTRA」の楽曲や新曲を次々に披露した。
吉田の第一声「えっ なんで」
元はキャバレーであり、独特のラグジュアリーな雰囲気で知られる東京キネマ倶楽部。この日のステージは、トロピカルな植物で装飾され、より異世界感が漂う。開演時刻の19:30を迎え、フロアが人で埋め尽くされると、リズムボックスが再生される中、バルコニーからバンドメンバーが1人ずつ登場。沼澤、鳥居、山本、シマダボーイ、大垣と順番に音を重ね、1つの楽曲を作り上げていく。会場の作りを生かした胸踊る演出だ。
レコ発ライブは「変なおっさん」で幕を開けたが、この曲はなんだろうか。新曲だろうか。ファンが考えを巡らす中、池田のサックスも加わり、演奏メンバーがそろったところで、「えっ なんで」という言葉とともにピンスポットに照らされた吉田が出現。会場の雰囲気に合わせたのか、ジャケットを羽織った彼は「えっ なんで ここまでコケにされてんのに 黙ってヘラヘラしていられるんだろう俺」とぶつくさ言い、マラカスを振りながら階段を降りてくる。1曲目は新アレンジの「次やったら殴る」だった。
「EXTRA」の次の新曲を連発
すぐにジャケットを脱いだ吉田が、景気のいい音を鳴らして缶ビールを開けると「EXTRA」収録曲「お酒を飲むと楽しいね」へ。ビールをちょびちょび口にしながら歌う吉田の「楽しいね!」という叫びがホールに響き渡る。同じく「EXTRA」からファンキーでダンサブルな「シルバースタッフ」「BAR」を演奏したのち、彼らはレコ発ライブでも披露していた新曲を演奏。どこか異国情緒の漂う楽曲で、バンドの進化を垣間見せた。
「EXTRA」完成後、鳥居が中心になって新曲をどんどん制作しているそうで、彼らはMC後に新曲を3曲連続で演奏。どれも池田のサックスやフルート、シマダボーイのパーカッションが映えるエキゾチックな雰囲気の楽曲に仕上がっており、鳥居のエネルギッシュなギターソロも観客を沸かせる。またダブアレンジの「有名な病気」に続いては、そのムードを引き継ぐ形でレゲエ調の新曲へ。ダブやエキゾが、トリプルファイヤーの次のモードのようだ。
「フジロック」「ミュージックマガジン」
この日、偶然にも野外フェスティバル「FUJI ROCK FESTIVAL '25」の出演者第1弾が発表され、Vulfpeckら豪華アーティストと並んで、トリプルファイヤーがラインナップされた。トリプルファイヤーが「フジロック」に登場するのは、苗場食堂に出演した2017年以来で8年ぶり。「フジロック」に言及した吉田は、今年の出演者について「けっこう当たり年じゃないか」と評価し、「行きましょう」とファンに呼びかけた。
「最近なんかいい感じで……なんかアルバム出すと変わるなというか……わざわざ言うようなことじゃないですけど」と切り出した吉田は、「『ミュージックマガジン』の日本のロック部門で4位でした。5位だったかもしれない。これをライブで言った人は初めてかもしれません」と「EXTRA」が憧れの音楽誌で高く評価されたことを報告。「出したほうがいいと思ってたけど出してよかったです」と改めてアルバムの手応えを語った。
肩を組んで「風の谷のナウシカ」
ライブ終盤、吉田は鍵盤ハーモニカを吹くインストの新曲で姿を消したかと思えば、PLASTICMAIとバルコニーから再登場。ここで2人が肩を組んで歌ったのは、なんと安田成美「風の谷のナウシカ」のカバーだ。この曲は松本隆が作詞、細野晴臣が作曲を手がけた映画「風の谷のナウシカ」のイメージソング。レコ発ライブではBO GUMBOS「泥んこ道を二人」をカバーしていたトリプルファイヤーだが、この選曲もバンドの今後の方向性を占う上でヒントになるのだろうか。PLASTICMAIは「ナウシカ」を彷彿とさせる衣装をまとっており、「ナウシカ」を観たことはないという吉田は、なんとなくのイメージで青いTシャツを着てきたと説明した。
その後、吉田がメンバーを1人ずつ紹介する中、Yellow Magic Orchestraバージョンの「Tighten Up」を演奏したバンドは、吉田のカウントから「カモン」に突入。「両手上げろ!」「声出せ!」「体揺らせ!」「最高!」と吉田が狂ったように連呼する一方、PLASTICMAIはバッグから取り出した飴をばら撒き、混沌とした盛り上がりを生み出す。ホールに熱気があふれる中、バンド屈指のキラーチューンとなった「相席屋に行きたい」でライブ本編は締めくくられ、アンコールはフェスを意識して作られたというディスコナンバー「ギフテッド」で終了。ストイックに鍛え上げた演奏力と、パワフルなダンスナンバーを併せ持ったトリプルファイヤーは「フジロック」も大いに沸かせることだろう。
さらに終演後には「相席屋に行きたい」のリミックスが唐突に流れ、フロアは大盛り上がり。7年も新作をリリースしなかったトリプルファイヤーだが、昨年に続いて今年も精力的な活動が期待できそうだ。
セットリスト
「トリプルファイヤー EXTRA TOUR FINAL」2025年2月21日 東京キネマ倶楽部
01. 次やったら殴る
02. お酒を飲むと楽しいね
03. シルバースタッフ
04. BAR
05. 新曲
06. 諦めない人
07. 新曲
08. 新曲
09. 新曲
10. サクセス
11. 有名な病気
12. 新曲
13. ユニバーサルカルマ
14. 新曲
15. 風の谷のナウシカ(オリジナル:安田成美)
16. ここではないどこか
17. カモン
18. スピリチュアルボーイ
19. 相席屋に行きたい
<アンコール>
20. こだわる男
21. ギフテッド
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ラッキーサウンド @LUCKYSOUND
トリプルファイヤーのキネマ倶楽部のライブレポートです。当日ご来場された方は「こんなんだったなあ」と思い出したり、ご来場されなかった方は「こんなんだったのかあ」と想像を膨らませたり、各自お楽しみください。 https://t.co/tivNgK1x6C