M!LK10周年、初のさいたまスーパーアリーナ
今年の11月に結成10周年を迎えたM!LK。この節目を記念して行われた「I CAN DRINK!」はM!LKにとって初のアリーナツアーだ。11月3、4日の埼玉・さいたまスーパーアリーナ、12月22日の大阪・大阪城ホールと2会場で全3公演が行われたツアーより、音楽ナタリーでは初日公演の模様をレポートする。
大きな節目のタイミングで初めて、5人で立ったさいたまスーパーアリーナの大舞台。M!LKの歴史に確かに刻まれるであろうひとときは「My Treasure」で幕を開けた。み!るきーず(M!LKファンの呼称)の眼前に現れた5人は、メンバーカラーのファーをあしらったロングコートをまとい、肩から提げた大きなリボンには「10th Anniversary」というワードが刻まれている。特別感いっぱいの装いと彼らがまとう強い気迫に、客席を埋め尽くす観衆からは「Yes! Yes! Yes!」と早くも力強いコールが飛んだ。続く「テルネロファイター」が始まるなり「うぉ~!」と気合いの咆哮を響かせた佐野勇斗が「M!LKの10周年見せつけちゃうぞ!」と宣言すると、5人が立つステージは上昇してアリーナエリアへと進んでいく。オープニング早々からダイナミックな演出でみ!るきーずを圧倒する5人は「反抗期アバンチュール」の曲中にひと言ずつ思いを叫び、吉田仁人は「今日はここまでのM!LKとここからのM!LKを見せられるようにがんばりたいと思います!」と、佐野は「10周年、みんなに感謝を伝えます。最後までみんなを幸せにします!」と誓った。
ムービングステージでみ!るきーずの元へ
「こっからみんなで楽しんでいくぞ!」という塩崎太智の呼びかけをきっかけに「Brave Saga」が始まると、ここからはムービングステージやトロッコを使って会場中のみ!るきーずの元へと進んでいった5人。ステージがアリーナ最後方まで進んだ「ブルーシャワー」では、お互いの肩に手を置き、笑い合いながら歌うメンバーの姿が観衆の笑顔を増幅させていく。アリーナライブならではのスケール感ある演出でみ!るきーずを高揚させたオープニングの6曲を終えると、メインステージに1人残ったのは山中柔太朗。ここで彼が披露したファンタジックなソロ曲「秘密のパレード ~誰もいない夢の街で~」で、山中は持ち前の優しく繊細な歌声を響かせながら歌詞に登場するライオンのマスコットと一緒に踊り、み!るきーずをドリーミーな世界観へと誘った。
赤と緑のホリデーファッションに着替えたメンバーが雪降る街の景色をバックに届けた「リンガベル」で冬のムードが広がったその途端、「冬もいいけど夏もいいよね!」という塩崎の言葉で「夏味ランデブー」を披露し、浮き輪を手に歌い踊る5人。季節を大胆に横断してファンを楽しませる彼らのにぎやかなサービス精神は続く「Aiシャンデリア」でも発揮され、ステージに運び込まれた縦置きのベッドの中ですやすやと眠る彼らの姿に客席からは何度も歓声が上がる。そんな客席の熱をさらに高めるべく、ステージに大きく広がった5人がみ!るきーずの声を求めた「SAY YEAH」を経て、今度は曽野舜太と佐野のソロパフォーマンスへ。学生服に赤いマフラーを巻いた曽野がスタンドマイクで歌い上げたロックナンバー「さあ今日も一歩ずつ前へ」では、曽野のまっすぐに熱い歌声と「これから先どんなことがあっても、みんなには俺がいるしM!LKがいる!」というメッセージがオーディエンスの胸を打つ。そして、スーツをルーズに着こなした佐野が披露したのは中西保志「最後の雨」のカバー。華美な演出のないステージの上、佐野は豊かな表現力と深く響く歌声で聴衆の心を震わせ、み!るきーずの熱い眼差しを一身に集めていた。
初披露曲も続々
5人が赤い衣装に着替え、再びトロッコに乗ってみ!るきーずのペンライトが揺れる光の海を進んでいった中盤のシーンでは、「Sparkle」のパフォーマンスが初披露された。トロッコに乗っていたメンバーがステージに集まり、吉田が朗々と落ちサビを歌い上げたその瞬間、残る4人は吉田のもとにギュッと集まってお互いをハグ。そんな仲睦まじいやりとりがみ!るきーずを和ませたと思いきや、短いMCのちのダンスセクションでは佐野が鍛え上げた腹筋をのぞかせて悲鳴を誘うなど、5人は激しいギャップでみ!るきーずを翻弄する。ダンスセクションから流れるように展開した「Bad Liar」もこの日が初披露となった楽曲。舞台上のあちこちからファイヤーボールが噴き上がる中、5人は鋭い視線と緊迫感に満ちたボーカルで曲の世界観を表現し、オーディエンスの体温をグッと引き上げた。
幕間に用意されていたVTRも、M!LKの10年の軌跡を観る者に深く印象付けるものだった「I CAN DRINK!」。M!LKの“始まりの場所”である東京・日本青年館から車に乗り込んだ佐野、塩崎、吉田の3人が道中で曽野、山中と合流し、5人がバーベキューやイルミネーションを笑顔で楽しむ姿がステージ上のビジョンに投影されると、ここからは塩崎、吉田のソロコーナーへと展開していく。塩崎のソロ曲「マッちょっちょ!」ではポップでシュールな塩崎の世界観が爆発。重量挙げのポーズで横移動を繰り出す彼のパフォーマンスには、どよめきのような笑いが会場のあちこちから湧き上がった。そしてソロコーナーのトリを担ったリーダーの吉田は、ギターの弾き語りで自作の楽曲「カーテン」を歌い上げる。すると、佐野は曲を終えるなり「あのさ、俺んちのカーテン変えたよね? ってことは、俺に向けて作った曲ってこと?」と質問してファンを沸かせる。吉田に「ちゃんと言っておくね。うぬぼれんな!」と即答されても、佐野は「なんだよ。ちょっと俺かな?って思ったのに(笑)。こんど俺に『カーテン2』作って!」とリクエストしていた。
たまアリにこだました「マウスウォッシュ!」
メンバーそれぞれの個性が光るソロコーナー、山中プロデュースによるゴージャスな衣装の数々……。見どころが盛りだくさんだった本公演の中でも大きなハイライトとなっていたのが、最新シングル曲「エビバディグッジョブ!」が披露された場面だ。ツアー開幕の数日前に、M!LKメンバーはYouTubeでこの楽曲のコール動画を公開。そこで明かされたコールの分量の多さ、考案者である佐野の自由な発想から繰り出されるユニークな語彙の数々がみ!るきーずの間で話題に。直前のMCでも「この曲は正直、君たちの番だよ!」とファンに語りかけるほどだったが、いざ楽曲が始まると会場中のみ!るきーずは完璧なコールをステージ上の5人に送ってみせる。そのにぎやかさと楽しさに、歌いながらもイヤモニを外して破顔した5人。「早く歯を磨け」という歌声にみ!るきーず渾身の「マウスウォッシュ!」コールが響き渡る、独特すぎる一体感がステージと客席の距離をぐっと縮めていた。
この盛り上がりをもって突入したライブ後半、「コーヒーが飲めません」がドロップされると、佐野は「みんな大好き、M!LKのデビュー曲!」と言ってみ!るきーずの声を求める。これに応じたオーディエンスが大きなコールを返すと、佐野はダイナミックなアクロバットでもファンを魅了した。するとステージ上のビジョンには、思い出の写真を柔らかな表情で眺めながら、壁にコラージュして「10」という数字を形作る5人の姿が。デビューから10年を機に制作されたのが次の披露曲にして「コーヒーが飲めません」のアンサーソングである「I CAN DRINK」で、オーロラカラーにきらめく衣装に着替えた5人はコーヒーカップの上に腰掛けながら、10年分の経験を積み重ねた温かな歌声でこの曲をみ!るきーずへと贈った。
本編のクライマックスは、10年間走り続けてきたM!LKがメンバーどうしの絆、そしてみ!るきーずとの絆を確かめ合うような時間に。お互い肩を組み合い、全員で作詞した楽曲「夢路」を歌い上げた5人は、メンバー直筆の歌詞がビジョンに投影された「ERA」を万感の表情で歌いつないでいく。そして最後を飾ったのは「10年後の僕へ 君は今何をしてますか」という佐野の問いかけから始まる「Winding Road」。最後までパワフルに場を牽引する佐野の声、どこまでも柔らかな山中の歌声、曽野の清々しくまっすぐなボーカル、塩崎の純粋な優しさが滲む声色、思いのままに響かせた吉田の熱いシャウト。5人の声の交わりにみ!るきーずもシンガロングを重ね、さいたまスーパーアリーナは感動的なムードに包まれる。10年後の未来をも照らすような晴れやかなラストシーンをもって、5人はステージ奥へと姿を消した。
この5人でM!LKを楽しくやれていれば、それでいい
み!るきーずの熱烈な「もう1杯!」コールを受けてのアンコールでは、5人それぞれが抱えるメンバーへの思い、ファンへの思いが熱い言葉で吐露された。「ここで何を言おっかなって考えて。そうしたら、本当にありがとうの言葉しか出て来なかった」と切り出した塩崎は「結局俺が好きなのは、車の中でみんなと他愛もない話をしてるときだったりして。みんなで笑いながら過ごす時間が幸せだなって。そういう、いい関係性を作ってくれるのはこの4人なんだと思って、感謝してます」と語る。すると、佐野は「いやあ。成長したよね、太智……」とみるみるうちに瞳を潤ませ「太智がしゃべってるをの見てたらさ、リリイベの情景とかも思い浮かんで。こんなに多くの人が埼玉まで来てくれて、あんなにわけのわからないコールも覚えてくれて……ホント幸せなグループだと思います」と噛み締める。「苦労とは言いたくないけど、いろんな思いを背負いながらここまで来てさ。3人が抜けたときの悔しさとか、『みんなとの約束を守れなかったな』という思いを抱えてここまでやってきたんだけどね」。そう続けた佐野は「よくここまで、俺ら5人がんばったなと思うし、みんなのおかげでこんなに大きな会場を埋められて、本当にすごく感謝してます」とまっすぐにファンへの思いを伝えた。
山中と曽野が語ったのは、道の途中でグループに加入したメンバーならではの思い。「メンバーが僕らのことを好きでいてくれたからファンのみんなも受け入れてくれたと思うし、感謝してます。本当に優しかったんだよね。3人が」と山中が佐野、塩崎、吉田に感謝を伝え、そして涙ながらに「配信を観に来てくれたり、ライブで思いを返してくれたりっていう、その1つひとつが僕にとってすごく宝物で。ホントに毎日助かってます。みんなのおかげで活動ができているし、楽しく生きれてます」と伝えると、曽野の瞳にも涙が。「がんばったもんね、俺らね」と山中に語りかけた曽野は「いい意味でも悪い意味でも末っ子だから、みんなにめちゃくちゃ迷惑をかけてると思う。みんなにすごく助けられて生きてきたからさ、ここまで連れてきてくれてありがとう」とあふれる涙をそのままに語り「これずっと思ってて言えなかったことなんだけど、これからもみんなに甘えたいなと思ってる!」と、4人の“お兄さん”に素直な思いを伝えた。
最後にバトンを受け取ったリーダーの吉田が語ったのは「4人のことを幸せにしたいっていう思いが強い」というメンバーへの感情。「いろんな挫折があって、でも続けてきて、お互いを鼓舞し合って一緒に道を歩んでるのはこの5人だから。だから、今からM!LKのことを知ってくれる人もそうだけど、今。今ここにいるみんなのことを、俺は大切に思っています。だし、俺はこの5人でM!LKを楽しくやれていれば、それでいい」。この言葉にステージ上の全員が涙を流す中、吉田は「マジでこの時間を失いたくないの。この飾りっ気のない僕らが僕らなんです。だから皆さん、飽きるまでは僕らのことを見届けてほしい。そしてあわよくば、みんなでいろんな景色を見られたらいいなと思っています」と、み!るきーずに訴えた。
そして、5人は涙の余韻を引きずりながら「Now Story」を披露。エモーショナルなムードの中でアニバーサリーライブは幕を閉じるかと思われたが、そうはいかないのがM!LKのエンタテインメント。ラストナンバー「めちゃモル」にはアンコール恒例のおふざけコーナーがこの日もしっかり用意され、5人は粉まみれの飴玉探しからの熱湯風呂という、芸人さながらのコンボを決めて「I CAN DRINK!」の幕を下ろす。客席中の泣き顔をしっかりと笑顔に変えて迎えたエンディング、佐野は「こんなM!LKだけど、こんなバカだけど好きでいてくれる?」と、楽しそうにみ!るきーずに問いかけていた。
「10th Anniversary M!LK ARENA TOUR 2024『I CAN DRINK!』」さいたまスーパーアリーナ公演の模様は、現在U-NEXTで独占配信中。
セットリスト
M!LK「10th Anniversary M!LK ARENA TOUR 2024『I CAN DRINK!』」2024年11月3日 さいたまスーパーアリーナ
01. My Treasure
02. テルネロファイター
03. 反抗期アバンチュール
04. Brave Saga
05. ブルーシャワー
06. HIKARI
07. 秘密のパレード~誰もいない夢の街で~ / 山中柔太朗
08. リンガベル
09. 夏味ランデブー
10. Aiシャンデリア
11. SAY YEAH
12. さあ今日も一歩ずつ前へ / 曽野舜太
13. 最後の雨 / 佐野勇斗
14. シアワシェイク
15. STARS
16. Sparkle
17. ダンスリミックス(MAGIC CARPET~Kiss Plan~energy)
18. Bad Liar
19. マッちょっちょ! / 塩崎太智
20. カーテン / 吉田仁人
21. エビバディグッジョブ!
22. Ribbon
23. かすかに、君だった。
24. コーヒーが飲めません
25. I CAN DRINK
26. テレパシー
27. 夢路
28. ERA
29. Winding Road
<アンコール>
30. Milky Snow
31. Now Story
32. めちゃモル
※塩崎太智の崎は、たつさきが正式表記。
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