「It Re:ARENA TOUR」は11月から3月にかけて9カ所で15公演開催されたツアー。Saucy Dog史上最大規模となる約13万人が動員された。全国アリーナツアーの開催は石原慎也(Vo, G)がかねてより目標として掲げてきたこと。そんなツアーの最終公演でSaucy Dogはスケールアップした演奏力を見せ付けつつ、以前と変わらない親しみやすさを携えてパフォーマンスを行った。
オープニングナンバーとしてセレクトされたのは「魔法にかけられて」。歌詞のドラマチックな世界観を映像演出が助長させる。続く「マザーロード」では夕日のようなオレンジの光に包まれながら、強固なアンサンブルを響かせた。さらにバンドは「あぁ、もう。」や「優しさに溢れた世界で」、「雀ノ欠伸」と、ライブ定番曲を次々と投下して会場に一体感を生み出す。そんな会場の様子を見て満面の笑みを浮かべた石原は「今日という日をめちゃめちゃ楽しみにしてきました!」と叫んだ。
せとゆいか(Dr, Cho)はオーディエンスの大歓声を受けて、「みんな、声が枯れちゃうよ?」と微笑みつつ、初めてワンマンツアーを行った頃から石原がアリーナツアーの開催を目標に掲げていたことについて触れ「そのときは『何言ってんねん』って思ってたんですけど、慎ちゃんはそれをずっと言ってて。気付いたらそれがバンドの夢になっていたんです」と語った。本ツアーにはSaucy Dog初のサポートギタリスト・作田泰地が参加。石原が作田を迎え入れ、4人は「サマーデイドリーム」を披露した。この日の関東地方は夏を先取りしたかのような暑さ。場内はそんな気候にぴったりのさわやかなサウンドや、作田が加わることで厚みを増した音で満たされた。
「誰がなんと言おうと、俺らにとって、あなたと出会わせてくれた大切な歌」と石原が前置きしてから奏でられたのは「シンデレラボーイ」。イントロのギターフレーズが鳴り始めた瞬間、静かな拍手が場内に広がった。その後「いつか」「魔法が解けたら」が続けられ、まるで1つの恋の終わりを描くようなセットリストが用意された。そんなセクションのあとに展開されたのはワンマンで恒例のアコースティックコーナー。せとがキーボードを弾きつつ歌う「へっぽこまん」、最新作「バットリアリー」のボーナストラック「星になっても」が披露される。このコーナーで最後に演奏された「届かない」では、石原が切ない歌声を響かせた。
「リスポーン」ではステージにスモークが広がり、場内が幻想的なムードに。その雰囲気を打ち消すように石原が「横浜!」と力強く叫んで、「現在を生きるのだ。」でシンガロングを巻き起こした。秋澤和貴(B)のベースソロが光る「雷に打たれて」を経て、バンドは「ゴーストバスター」「バンドワゴンに乗って」とパワフルなサウンドの楽曲を畳みかけ、一気にライブ終盤まで駆け抜ける。石原は観客に感謝を伝え、「あなたと直接手をつなぐことはできないけど、あなたの心の中にちょっとでも長く、Saucy Dogという存在が居続けられれば、一緒に生きられるんじゃないかなって思います」としみじみと語った。そしてSaucy Dogは「怪物たちよ」を熱演し、ステージをあとにした。
アンコールでSaucy Dogは映画「52ヘルツのクジラたち」の主題歌「この長い旅の中で」を披露。MCでは秋澤が「15本、長いようで短かった気がします」とツアーを振り返りつつ、作田が自身と石原の専門学校時代からの友人で、秋澤自身は作田とバンドを組んでいたこともあるというエピソードを明かした。ラストナンバーは1stミニアルバム「カントリーロード」の収録曲「グッバイ」。オーディエンスは石原の伸びやかなに歌声に導かれるように力強くハンズアップ。Saucy Dogはこの日一番の一体感を場内に生み出し、初の全国アリーナツアーの幕を下ろした。
田中大輔DT@LINE MUSIC @daisuketa18
Saucy Dog史上最大規模のアリーナツアーに幕「あなたの心の中にちょっとでも長く居続けられれば」
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