松任谷由実、パワフルなステージ繰り広げ堂々宣言「引退はまだしませんからね!」

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松任谷由実のツアー「松任谷由実 コンサートツアー 深海の街」が昨日7月9日に兵庫・神戸国際会館こくさいホールでファイナルを迎えた。

松任谷由実(撮影:田中聖太郎)

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これは2020年12月発売の最新アルバム「深海の街」のリリースツアーとして企画されたもの。コロナ禍の影響によりアルバム発売から約10カ月後の2021年9月に開幕し、全国で63本のライブを行うロングラン公演となった。この記事では2022年6月26日に行われた東京・東京国際フォーラム ホールA公演の模様をレポートする。

オープニングでの松任谷由実。

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会場が暗転するとステージ後方のモニタに、アルバム「深海の街」のジャケットに描かれている潜水士のうち1人が登場。キーボーディストがパイプオルガンの音色で美しくも荘厳なメロディを響かせる中、潜水士は暗い海の底にゆっくりと沈んでいった。その後ユーミンが床からせり上がって姿を現し、1曲目「翳りゆく部屋」を歌唱。水兵のような衣装のバンドメンバーたちによるダイナミックな演奏と神秘的なコーラスに乗せて、スチームパンク的な舞台セットの中で力強い歌声を響かせた。

松任谷由実(撮影:田中聖太郎)

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ライブ前半はアルバム「深海の街」の収録曲を中心としたセットリストでライブが進行。時折、曲間でユーミンは潜水士の視点でのモノローグをつぶやき、ライブ全体を通して1つの物語を紡ぐようなコンセプチュアルなパフォーマンスを繰り広げた。ユーミンとツアーメンバーたちが環状8号線の周辺や公園で仲よさげに遊ぶ映像を流しながら演奏された「カンナ8号線」では、終盤にギター、サックス、ベースがソロを回し、そのまま迫力のあるセッションを展開。その間にユーミンは真っ赤なワンピースに早着替えをした。

コーラスの2人と横並びになって踊る松任谷由実。(撮影:田中聖太郎)

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「What to do? waa woo」では、ユーミンはコーラスの2人と横並びになって、軽やかなステップで息の合ったダンスを披露。天井から吊るされた円形の小型モニタ3台が、ポップな映像を流しながら曲に合わせて昇降した。「知らないどうし」のパフォーマンス中には、最新技術を駆使して外見を精密に再現したユーミンのCGがアクションを繰り広げる、西部劇のようなムービーをモニタで上映。手の込んだ映像演出が観客の目を釘付けにする。「REBORN ~ 太陽よ止まって」を歌い終えたユーミンは、この曲が収録された「深海の街」の発売からすでにだいぶ時間が経ってしまったことに触れ、「この2年ちょっと、時間が一定の速度で進んでいないような感じで、いつがいつだかわからなくなっちゃいます。コロナは人を試すリトマス試験紙みたいなところがあって、私もずいぶん試されました。自分勝手なようですが、このツアーだけは無事に走りきりたいと思っています」と、ツアー完走への決意を静かに口にした。

松任谷由実(撮影:田中聖太郎)

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「ひこうき雲」では曲の終わりに神々しいゴスペル調のコーラスパートが加わり、その間にユーミンはトレンチコートの衣装にチェンジ。「LATE SUMMER LAKE」が始まると、ステージ上はスモークで包まれ、特効の音玉が大音量で炸裂した。その後ライブの終わりに向け、「Hello, my friend」「ANNIVERSARY」とそのキャリアの中でも屈指のバラードを熱唱したユーミン。彼女は最後にステージ上の階段の途中に腰を掛けて「水の影」をしっとりと歌い、モニタの映像では海底で静かに果てた潜水士の物語がエンディングを迎えた。

松任谷由実(撮影:田中聖太郎)

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バンドメンバーと横一列になって礼をする松任谷由実。(撮影:田中聖太郎)

バンドメンバーと横一列になって礼をする松任谷由実。(撮影:田中聖太郎)[拡大]

そしてアンコールで披露されたのは、ライブ本編の世界観にも通じるような「青い船で」「空と海の輝きに向けて」という海をテーマにした2曲。これらの曲が終わるとユーミンは「明けない夜はない、と言います。どんな時間も必ず過ぎていきます。いいときも悪いときも。そして明日は必ずやってくる」とオーディエンスに呼びかけ、盛大な拍手に包まれながらステージを後にした。

客電が灯って場内が明るくなるも、拍手はなかなか止まず、ユーミンはみたびステージに登場。コロナ禍がまだ終息したとは言えない状況下で会場に足を運んでくれたことを観客に感謝しつつ、「引退はまだしませんからね!」と宣言し、「私の場合、アバターとすり替わったりするかもしれないから、生身の私を覚えてください」と冗談めかして笑った。そして彼女はコロナ禍を振り返って「今まで体験したことがないくらい落ち込んで、今までやってきたことが虚しく思える無力感に苛まれて、キャリアもここまでかなと思ったりもした」と告白。それと同時に「こんな自分を記しておこう。世の中のとんでもないバイブスも記さなければ」というミュージシャン魂が生まれ、アルバム「深海の街」が作られたと明かした。そして今回のツアーで、「深海の街」の収録曲と過去50年間に作った曲で1つの物語を作ろうとしていたと説明。物語の最後を飾る1曲として、ピアノ1台の伴奏をバックに「二人のパイレーツ」を切なく歌った。

客電が灯り明るくなった客席に手を振る松任谷由実。(撮影:田中聖太郎)

客電が灯り明るくなった客席に手を振る松任谷由実。(撮影:田中聖太郎)[拡大]

2度のアンコールが終わり、会場内には規制退場を開始するアナウンスが流れ始めるが、それでも観客の力強い拍手は鳴り止まない。ユーミンは「このツアーで初めてのトリプルアンコール?」と笑いながらうれしそうに袖から現れ、「物事には終わりはあるけど、終わらなきゃ先には進めないから。楽しみにしててくださいね」と観客をたしなめた。そして彼女は観客の手拍子とピアノの伴奏に乗せて「卒業写真」を歌唱。明るくなった客席に向かって手を振りつつ、1人ひとりを確かめるように観客に目線を送りながら「あなたは私の青春そのもの」と優しく歌った。

なお、この日を含む「松任谷由実 コンサートツアー 深海の街」の5、6月に行われた東京・東京国際フォーラム ホールA公演の模様は、9月24日(土)にWOWOWプライムとWOWOWオンデマンドにて放送および配信されることが決定している。

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「松任谷由実 コンサートツアー 深海の街」2022年6月26日 東京国際フォーラム ホールA セットリスト

01. 翳りゆく部屋
02. グレイス・スリックの肖像
03. 1920
04. ノートルダム
05. 深海の街
06. カンナ8号線
07. ずっとそばに
08. What to do? waa woo
09. 知らないどうし
10. あなたと 私と
11. REBORN ~ 太陽よ止まってMC
12. 散りてなお
13. 雨の街を
14. ひこうき雲
15. NIKE ~ The goddess of victory
16. LATE SUMMER LAKE
17. Hello, my friend
18. ANNIVERSARY
19. 水の影
<アンコール>
20. 青い船で
21. 空と海の輝きに向けて
<ダブルアンコール>
22. 二人のパイレーツ
<トリプルアンコール>
23. 卒業写真

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