乃木坂46アンダーライブ3DAYS終幕、最後まで存在感を放った寺田蘭世「何1つ悔いはありません」

乃木坂46のアンダーメンバーによるライブ「乃木坂46 28thSG アンダーライブ」が10月26～28日に東京・TACHIKAWA STAGE GARDENで開催された。

今回のアンダーライブには、9月22日発表の28thシングル「君に叱られた」に収録されているアンダー楽曲「マシンガンレイン」の歌唱メンバーが参加。黒見明香は学業の都合により欠席となったが、初参加となる4期生のアンダーメンバーも含め総勢17人による熱いパフォーマンスが繰り広げられた。また「君に叱られた」の活動をもって乃木坂46から卒業する2期生・寺田蘭世にとってはこの公演がラストライブに。会場に集まった多くの観客や、ABEMAの有料生配信の視聴者が彼女の最後のステージを見届けた。この記事では最終日の昨日10月28日公演の様子をレポートする。

開演時刻になると「OVERTURE 」が流れる中、赤い衣装を身にまとったアンダーメンバーがステージセットの奥から観客の前に姿を現す。凛とした表情を浮かべた17人は、最新のアンダー曲「マシンガンレイン」を1曲目に披露。この曲でセンターを務める寺田はしなやかで華麗なダンスでファンの視線を奪い、続く「滑走路」でも強い存在感を放った。「欲望のリインカーネーション」や「傾斜する」の曲中にはメンバーがステージセットの段を上り、曲に合わせてまばゆい光を放つスクエア型の照明をバックにパフォーマンス。「13日の金曜日」では観客がメンバーの合図に応えてスティックバルーンを勢いよく鳴らし、新型コロナウイルスの感染拡大対策として声が出せない状況ながらも、会場に温かい一体感を生み出した。

最初のMCではメンバーからラストライブが始まった心境を聞かれた寺田が、「今は寂しいというより、楽しい気持ちでいっぱいです」「本当に悔いがないからか、清々しい気持ちで楽しんでいます」とさわやかな笑顔で答える。寺田がほかのメンバーと一緒に思い出話をにぎやかに語り合ったあとは、ユニット曲のコーナーに移り、まずは北川悠理、佐藤楓、寺田、吉田綾乃クリスティーがマイクスタンドを握って「意外BREAK」を歌唱した。軽快なトークで場内の空気を和らげた佐藤璃果、向井葉月、矢久保美緒の3人は、ステージ上で円陣を組んで気合いを入れてから「海流の島よ」を披露。向井が奏でるアコースティックギターのサウンドに乗せて透き通った歌声を響かせ、曲の後半ではダンスも交えた元気あふれるパフォーマンスで会場を盛り上げた。

続いて伊藤理々杏、柴田柚菜、中村麗乃、林瑠奈、弓木奈於が昭和歌謡の雰囲気が漂う恋愛ソング「遠回りの愛情」を情感たっぷりに歌い上げ、上下黒の衣装、赤い手袋という格好で登場した金川紗耶、阪口珠美、松尾美佑、和田まあやはダンサブルな楽曲「Another Ghost」でクールかつセクシーなステージングを展開。さらに「その女」では赤いハットとドレスに着替えた寺田を中心に、ステージ上から華やかで大人びた空気が発せられた。その後は1～4期がそれぞれ順番にフィーチャーされ、17人の中で先輩メンバーである1期の和田、2期の寺田、山崎は真っ赤な照明に照らされながら「Rewindあの日」をパフォーマンスする。3期生による「のような存在」、4期生による「不等号」を経て届けられた「誰よりそばにいたい」ではメンバー全員が横一列に並び、しっとりとした歌声で会場をセンチメンタルな空気で満たした。

会場のファンから盛大な拍手を浴びた寺田は、「私は自分の気持ちを言葉にして伝えるのが苦手でした。誤解されちゃうんじゃないかなって。でも、ステージで歌ったり踊ったりしていると、自分の気持ちを見せられるような気がしました。私にとってこのステージはとても大切な場所です。このステージがずっと熱くある理由は、いろんな人の等身大の思いを乗せているからだと思います。受け継ぐもの、受け継がれていくもの、それぞれの意志がここにはあって、だから魅力的なんだと思います。これから歌う楽曲たちに今の思いを乗せて、大切な人たちへまっすぐ伝えます」とひと言ひと言丁寧に言葉を紡ぐ。17人は「自由の彼方」「三角の空き地」「嫉妬の権利」などを間髪入れずに畳みかけ、気迫のこもった歌とダンスで観客を圧倒。ライブ本編の最後には寺田の「次の曲は私にとって乃木坂46での青春だったなと感じる曲です」という曲振りをきっかけに、ファンにとってもメンバーにとっても思い入れの深い人気のアンダー曲「あの日 僕は咄嗟に嘘をついた」がエモーショナルに響き渡った。

アンコールでは寺田が1人でステージへ登場し、「悔いが何1つなくて、清々しい気持ちでいっぱいです。ファンの皆さんのほうがいろいろ思うことがあるかもしれないけど、私としてはうれしいとか、楽しかったという明るい気持ちです」と挨拶。スタッフ、メンバー、家族へ感謝の思いを伝えたあと、「ファンの皆さんがいるからここまで来ることができました。いっぱい言いたいことはあるんですけど、言葉にするのは難しいことで。今までの私の行動で思いを見せられたと思うので、本当に悔いはありません」と続け、言葉数は少ないながらもしっかりとファンと気持ちを通わせた。

そして再びステージに17人そろったアンダーメンバーは、ここから寺田が選曲した思い出の楽曲を披露。寺田は、乃木坂46のデビューシングル「ぐるぐるカーテン」に収録されている最初のアンダー曲「左胸の勇気」、かねてよりセンターに立って歌いたかったという「気づいたら片想い」を悔いのないよう、心を込めて歌唱した。また「何もできずにそばにいる」では寺田がメンバーと笑顔で肩を寄せ合い、「心の薬」ではステージセットの上を移動して1人ひとりと話を交わす感動的な光景が広がる。さらに後輩の矢久保、吉田から涙ながらの挨拶の言葉を受け取った寺田は、「最後の曲は私が初めて乃木坂46のメンバーとしていただいた楽曲です。オリジナルメンバーも少なくなってしまって、歌いづらい曲になってしまうんじゃないかと私は心配していて。でも、歌い継いでほしいし、乃木坂46の過去も愛してほしいという意味を込めて選ばせていただきました」とラストナンバーを紹介。2015年発表のシングル「命は美しい」のカップリング曲で、2期生の中で最後に正規メンバーに昇格した寺田ら6人のユニット曲「ボーダー」が、乃木坂46として彼女がラストに歌う楽曲に選ばれた。

曲が終わると、メンバーたちは寺田にサプライズで手紙を用意してきたことを告げる。オーディションの4次審査から道をともにしてきた山崎が代表して手紙を読み上げ、「団体芸、集団美がよしとされるアイドルグループの中で折り合いをつけながらも一筋縄ではいかなくて、思考の癖が強くて、なんかちょっと面倒くさい同期がいることが私はすごくうれしかったですし、楽しかったです。そして、それこそがファンの皆さんが大好きな蘭世の魅力なんだと思います」「乃木坂46にまだまだあなたが必要だと思う瞬間は多々あるけども、あなたの淀みない意志で決めたこの道を阻むことはしたくありません。人から求められる寺田蘭世像を守り続けてきた優しいあなたが、これからどんな生き方をしていくのか、どんな人たちと出会って、どんな物や場所を選んでいくのか。私は同期としても、旧友としてもとても楽しみです」と愛に満ちたメッセージを送った。ほかのメンバーからも花とともに手紙を受け取った寺田は、「私を理解してくれて、愛してくれて、見つけてくれて、出会ってくれて本当にありがとうございました。これからもっともっと幸せで、カッコよくてイケてる女性になると思いますので、『どこかで蘭世がんばってるかな』って応援してくれたらうれしいです。たくさんの愛をありがとうございました」と深々とお辞儀して挨拶。最後まで笑顔と晴れやかな表情を崩すことなく、自身のラストステージの幕を閉じた。