「歌の考古学」はさくら学院校長の倉本美津留を講師に迎え、生徒自身が生まれるより前の楽曲を1曲発掘し、その楽曲についてプレゼンしてアカペラで歌うという内容の公開授業。毎年度最後の公開授業であり、卒業を目前に控える中等部3年のメンバーが後輩たちや同期へ、後輩たちが先輩たちへの思いを歌に重ねてアカペラ歌唱するという貴重な機会とあって父兄(さくら学院ファンの呼称)からの人気が高いイベントの1つだ。さくら学院は2021年8月で10年の歴史に幕を閉じることを発表しており、今回の公開授業がグループとして最後の公開授業イベントとなった。
1時限目には白鳥沙南、佐藤愛桜、戸高美湖、野崎結愛が出席。プレゼンの順番は毎年倉本校長の気分で決まるが、まずは恒例の「最初にやりたい人!」という呼びかけが生徒たちに飛ぶ。野崎以外のメンバーがスッと手を挙げると、その様子を見た野崎も渋々手を挙げた。倉本校長は「じゃあ初めての人にしようかな」と「歌の考古学」初参加となる佐藤をトップバッターに指名。佐藤は生徒会長の野中ここなから「愛桜ちゃんの声に合うと思うよ」とアドバイスをもらって決めたというZARDの曲の中から「マイ フレンド」をチョイスした。「SLAM DUNK」のエンディングテーマとしても知られるこの曲を歌うことを、1週間前に決めたという佐藤。本番までの時間があまりないという不安がある中で「あなたを想うだけで 心は強くなれる」という歌詞を胸に練習に励んだという彼女は、マイクを手に透き通った歌声を披露した。佐藤は担任の森ハヤシの「めちゃくちゃ優等生! 腹立たしいくらい!」という言葉の通りスラスラとプレゼンを行い、堂々と歌声をホールに響かせた。彼女の歌声について戸高は「愛桜のアカペラを初めて聴いたけれど、転入当初からの成長がすごくて驚いた」とコメントしていた。
2番手の白鳥は兄とのドライブの中で知ったという槇原敬之の楽曲の中から「遠く遠く」を選曲。歌詞が今の自分の境遇にぴったりだと思ったというこの曲の歌詞の背景や好きな部分を紹介したあと、「夢を叶えるためには強い意志が必要です。私は自分の夢を叶えるために友人や家族のことを思って歌います」と宣言し、「遠く遠く」の2番をエモーショナルに歌唱した。佐藤は「プレゼンの構成がしっかりしていたので、歌を聴いたときによりグッと来ました、今の沙南ちゃんにぴったり」と話し、野崎も「沙南ちゃんの強い意志が歌を通して伝わってきた」と感激した様子だった。
続いてマイクを手にしたのは野崎。2018年度の「歌の考古学」では「おジャ魔女カーニバル!!」を選曲し、ピンクのウィッチハットとマント、そして星のステッキを手にしたパフォーマンスで父兄の度肝を抜いた彼女だが、今回も「美少女戦士セーラームーンR」エンディングテーマの「乙女のポリシー」というまたしてもアニメ縛りのチョイスで会場を驚かせた。野崎はこの曲を妹が観ていたアニメの再放送で知り、タイトルから一見女の子向けの歌詞に見えるが、実はがんばるすべての人に向けた歌詞であると発見したという。そして「さくら学院が閉校すると聞いて、悲しくて悔しい気持ちでいっぱいになって。モチベーションも上がらないし、正直投げ出したくもなったけれど、この歌を聴いてがんばろうと思えたんです。何度も聴いて助けられ励ましてもらった結愛の応援歌です。応援してくださっている父兄の皆さんに届けたいと思いました」と目に涙を溜めながら語り、ステッキを手にして「乙女のポリシー」を“ピッと凛々しく”歌唱。最後はステッキの音を鳴らして締めくくった。森は「高いハードルを軽々と越えていった」と話し、白鳥も「マジで泣いちゃった……勇気をもらえました。本当にセーラームーンみたいでした」とコメントした。
1時限目のトリを務めた戸高はAIのヒット曲「Story」をチョイス。家族が歌っていたり、ショッピングモールで流れていたりと、幼少期の記憶に強く残っていたというこの曲について、戸高はAIのキャリアを交えて丁寧に説明した。そして模造紙に縦書きで書いた歌詞の内容を読み上げながら「感謝」「希望」「夢」「絆」の4ブロックに分けられると解説。そしてさくら学院加入タイミングでアミューズ所属となり、最初はグループになじめなかった戸高を受け入れてくれたメンバーたちへの感謝の言葉を述べた。そして戸高は「さくら学院は好きですか?」「最後まで応援していただけますか?」と客席に呼びかけ、父兄は拍手でそれに応える。「私はさくら学院が大好きです。この気持はずっと変わることはありません。感謝の思いを込めて歌います」と宣言し、「Story」を持ち前の歌唱力を発揮しながらパワフルに歌い上げた。倉本校長は「がんばったなあ。最後にふさわしかった」と戸高のプレゼンとパフォーマンスを褒め称えた。
2時限目には野中ここな、田中美空、八木美樹、木村咲愛が登場し、トップバッターに名乗りを上げた田中がまずプレゼンを行った。最近アニメにハマっているという田中がチョイスしたのは堀江由衣「Romantic Flight」。大好きな声優の小松未可子がライブで披露していたのを聞いて歌詞に共感しこの曲を選んだ。恋愛を描いたこの歌詞にさくら学院の絆を重ねたという田中は「8人の絆は不滅です! 父兄の皆さんの心をキャッチしてどこまでも飛んでいきます!」と力強く語り、マイクをつかみ取ると大きく息を吸って「Romantic Flight」を堂々と歌唱。森は「田中はもともとプレゼンを進めるだけで精一杯みたいなイメージがあったけれど、今日は何も見ずに気持ちを乗せてしゃべっていたね」と驚き、野中も「この曲は初めて聴いたけど、美空の“伝えたい”という気持ちが伝わってきて歌詞がスッと心に入ってきました」と田中に拍手を送った。
田中と同期の八木はTHE BLUE HEARTSの「人にやさしく」を選曲。新幹線の駅から自宅までの車で流れていたラジオでこの曲を知ったことやその際の母とのやり取りを再現したあと、今回2番を歌うことに決めた理由を明かす。「転入してきた頃、メンバーや美空、皆さんに『ガンバレ!』とたくさん応援してもらったんです。2番の歌詞はそのときの状況にそっくりなんです」と語り、まずはゆっくり「人にやさしく」の2番を歌う。そして2回目の2番はエアギターを弾きながら歌い、力強く「ガンバレ!」と叫んだ。万雷の拍手に思わず涙をこぼした八木は「なんか拍手が聞こえてきて“できたんだ”と思って……」とティッシュで目を押さえる。田中も目に涙を浮かべ「歌ってたときは我慢していたのに美樹が泣いてるのを見たら感動して涙が出てきちゃった……」と声を震わせ、父兄は同期の絆をしっかりと受け止めた。
今回は最初で最後の「歌の考古学」となる木村は、自宅にあったiPodで音楽をたまたま聴いていて知ったというGReeeeN「キセキ」をセレクト。「いい曲だなと思って聴いていたんですけど、『キセキ』の発売日は私がお母さんのお腹にいるってわかった日だったんです。それって“キセキ”じゃないですか。だからビビッと来たんです」とこの曲に感じた運命を熱弁する。その後も歌詞や「キセキ」を歌う理由を一生懸命解説し、ホワイトボードの裏側で呼吸を整えてマイクを手に取った。緊張した面持ちの木村は「キセキ」の歌詞を1つずつ噛み締めるように歌唱していたが、途中で泣き出して歌えなくなってしまう。しかし最後まで諦めずに歌いきり、彼女には大きな拍手が送られた。木村は「頭が真っ白になったし、プレッシャーに負けて泣いちゃった……悔しい……」と号泣。野中は「咲愛がひさしぶりに泣いているところを見ました。感情があふれ出ていて、これからもっといろんな表現ができるんじゃないかなと思いましたし、歌がすごく心に残りました」と木村を励ます。森が「ねえ、加工してるんじゃないの?」と前日に行われた「写真の授業」で生まれた木村の名言を引き出そうとすると、木村は「無加工ー!」と元気いっぱいにコメント。涙が収まった様子の木村は「すごく悔しかったしうまく歌えなかったけど、すごくいい経験になったと思えました!」と晴れやかな笑顔を見せた。
2020年度最後の公開授業の大トリを務めるのはもちろん生徒会長の野中。彼女はエレファントカシマシの代表曲「今宵の月のように」を選曲した。母から勧められるも、聴いた人が楽しい気持ちになれる明るい曲を選ぼうと思っていたが、楽曲を選んでいくうちに関連楽曲として「今宵の月のように」が登場したため運命を感じたという。そしてこの曲のミュージックビデオを調べたところ、サムネイルの宮本浩次のどアップに衝撃を受け、さらに曲の雰囲気も好みだったため今回この曲を歌うことに決めたと話した。宮本がドラマ主題歌の書き下ろしを依頼されるもなかなかプロデューサーからのOKが出ず、ようやく完成した楽曲が自身最大のヒット曲になったというエピソードがある「今宵の月のように」。野中は「いつの日か輝くだろう 今宵の月のように」という歌詞に「ここから8人は1人ずつになるけれど、さくら学院にいるときのようにそれぞれ輝けたら」という思いを託し、「今宵の月のように」を感情を込めながら伸びやかに歌い上げた。森は野中の歌声やプレゼン内容について「凄みがあった。自分の言葉で落ち着いて話して、空間を支配しているように見えたよ。この世界でやっていくぞという気迫を感じました」と評価。八木は「中等部1年で転入してきて当初はおどおどしていたけれど、今はその真逆で堂々としているなと思った。途中で止まったのも演出に見えるぐらい心が奪われました。ここなは歌うときに自分のゾーンに入ると歌い切るまですごくて本当に尊敬します」と感想を語った。
さくら学院「歌の考古学」歌唱曲
・野中ここな:エレファントカシマシ「今宵の月のように」
・白鳥沙南:槇原敬之「遠く遠く」
・八木美樹:THE BLUE HEARTS「人にやさしく」
・田中美空:堀江由衣「Romantic Flight」
・戸高美湖:AI「Story」
・佐藤愛桜:ZARD「マイ フレンド」
・野崎結愛:石田よう子「乙女のポリシー」
・木村咲愛:GReeeeN「キセキ」
リンク
J_ROCKNews @J_ROCKNews
さくら学院が最後の「歌の考古学」開催、8人が思い込めた8曲とは https://t.co/yKQFWzUzgO