この日Homecomingsは、昨年10月に京都・KBSホールとMETROで行われたライブイベント「ボロフェスタ2019」以来約1年2カ月ぶりにストリングス隊を迎えた8人編成“Homecomings Chamber Set”としてパフォーマンスを実施。公演は新型コロナウイルス感染拡大防止のため観客数を会場キャパシティの約3分の1に抑えて開催されたほか、ライブの模様がPIA LIVE STREAMで生配信された。
定刻を少し過ぎた頃、テーブルライトや観葉植物などが並べられたステージにHomecomingsが登場。ゆっくりと楽器を鳴らし始めた4人はストリングス隊と、インスト曲「Corridor(to blue hour)」、さわやかな歌声が印象的な「Blue Hour」を続けて披露し公演をスタートさせた。畳野彩加(Vo, G)は客席を見回しながら「今日は12月25日。皆さんにクリスマスの気分を少しでも味わっていただけたらうれしいです」と挨拶。メトロノームとストリングスの音色に乗せて「Lighthouse Melodies」を歌い始め、福田穂那美(B, Cho)、石田成美(Dr, Cho)によるコーラスとのハーモニーを会場いっぱいに響かせた。その後Homecomingsは、ゆったりとしたサウンドが心地よい「Smoke」、軽やかに弾むような「Living Life」、疾走感のある「HURTS」など緩急のあるセットリストを展開。曲中でオレンジ色のテーブルライトが点滅したり、セットの右側に設置された窓型のスクリーンにさまざまな景色が映し出されたりと、楽曲と連動した数々の演出で観客を驚かせた。
この日、ケガのため椅子に腰掛けて演奏をしていた福富優樹(G)。「この大一番に手をケガしてしまいまして……でもこれもレアなこと。『手、ケガしてるんだなー』と思って観てもらえると」と観客の笑いを誘う。また今回のセットリストの曲順は“時間の流れ”を意識して決めたこと、窓型スクリーンには曲ごとに異なる景色が浮かび上がり、それらは曲のイメージに沿った“時間帯”を表現していることを説明。窓の向こうで雪が降り始めると、Homecomingsは「Special Today」、クリスマスソングの定番曲「Have Yourself A Merry Little Christmas」、「Moving Day Part1」を演奏し、会場を幻想的な雰囲気で包み込んだ。
後半に差し掛かると、福富が次の曲について「2年前に大好きなマンガ家の方が亡くなられたときに書いた曲です」と紹介。昨年の「ボロフェスタ」でもストリングスを交えて同曲を披露したことに触れつつ、「もともと曲を作った理由が明るくなかったこともあり、ライブでやるのはなと思っていたんですが、ストリングスと一緒ならできるんじゃないかなと思って」「Homecomingsの活動においてストリングスとセットで演奏することが大事になってきている、その証のような大事な曲です」と話したあと、全員で「Continue」を大切に奏でた。その後「PLAY YARD SYMPHONY」「Cakes」「Songbirds」が続けて展開され、観客はさわやかなバンドサウンドと繊細で華やかな弦楽器の音色にうっとりと耳を傾けた。
アンコールでは、福富が今年1年を「世界中でいろんなことがあって、悲しいニュースもたくさんあった」と振り返る。しかしその一方で、少しずつよいほうに変化していると感じたこともあったとしながら、「ずっと怒ってばっかではダメやし、そういうことに目を向けて、思いを声に出すことも大事。これからも優しくないことにはちゃんとNOと言えるようなバンドでありたいし、そういうふうにみんなでなりませんか?という音楽を、こういう時代だからこそやっていきたい」とまっすぐに語った。そして、「世界が少しでもよくなるように毎日優しさを持って暮らそうよという思いを込めたアルバムから」と続け、3rdアルバム「WHALE LIVING」より「Whale Living」をストリングス隊とともに丁寧にパフォーマンスした。
ダブルアンコールに突入し、Homecomingsは4人だけでステージに登場。談笑のあと畳野が緊張した面持ちで「今日は皆さまにお知らせがありまして」と切り出すも、「発表するのまだじゃない?」とすかさず福富がさえぎる。「先に言ったらおかしいかな?」「うん」「えっと……ちょっとあとで言いますね」というほほえましいやりとりに客席から笑い声が沸き起こる中、頬を赤らめた畳野が「新曲やります」と宣言。4人はカントリー調の新曲「Pedal」を伸び伸びと披露した。その後、福富の「で、お知らせっていうのは一体?」というパスを受け、畳野はHomecomingsが来春ポニーキャニオン内のIRORI Recordsからメジャーデビューする旨を発表。大きな拍手がメンバー4人を温かく包み込んだあと、福富は「1人は手をケガして座ってるし、1人はこんな感じだし(笑)。でもそれがHomecomingsらしいというか。変わらないところは変わらず、力をお借りできるところは借りながら、自分たちがいいと思うことや、みんながあっと驚くような素敵なことができたらと思いますので、これからもよろしくお願いします」と改めてファンへ語りかけた。そして「病院の先生、観てたらごめんなさい!」とずっと腰掛けていた椅子から立ち上がると、2013年のデビュー当時、まだ自分たちが大学生だった頃を思いながら「学生時代に部室で作ったこの曲を最後に演奏します」とコメント。4人でラストナンバー「I Want You Back」を勢いよくパフォーマンスし、約2時間におよぶ公演の幕を下ろした。
なおチケットぴあでは、生配信されたライブ映像を再編集した“ディレクターズカット版”の視聴チケットを2月14日21:00まで販売中。映像は1月29日0:00から2月14日23:59まで楽しむことができる。またYouTubeでは公演冒頭の模様を収めたライブ映像が公開されている。
Homecomings「BLANKET TOWN BLUES」2020年12月25日 東京・日本橋三井ホール セットリスト
01. Corridor(to blue hour)
02. Blue Hour
03. Hull Down
04. Lighthouse Melodies
05. Smoke
06. Living Life
07. ANOTHER NEW YEAR
08. LEMON SOUNDS
09. HURTS
10. Special Today
11. Have Yourself A Merry Little Christmas
12. Moving Day Part1
13. Continue
14. PLAY YARD SYMPHONY
15. Cakes
16. Songbirds
<アンコール>
17. Whale Living
<ダブルアンコール>
18. Pedal
19. I Want You Back
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Homecomingsがストリングス隊と奏でたクリスマスの夜、メジャーデビュー後も「毎日優しさを持って」 https://t.co/Dg1l3gJQHI