Nakamuraは、今年2月にベストアルバム「NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2」をリリースした。この作品を引っさげ3月から実施予定だったワンマンツアーは新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となってしまったが、彼女はその代わりとなる今回のライブを開催。11月のアコースティック編成での公演に続き行われたこの日のライブはバンド編成で、ベスト盤の収録曲を中心に全14曲のパフォーマンスが披露された。
この日のライブは「BEST」で幕を開けた。カメラは乾いた音色のギターイントロに体を揺らすNakamuraの姿を捉え、彼女はカメラレンズを指差して視聴者にまっすぐ力強いボーカルを届ける。ライブハウスのフロアに敷かれたカーペット上を自由に動きリズムに身を委ねながら、Nakamuraは女性の飾らない本音を鋭いラップで叩きつける「ばけもの」、闘う社会人をエネルギッシュに鼓舞する「Don't」と楽曲を続けていく。「Don't」では歌詞を「スポットライトもいいけど配信ライブも最高だよ!」と歌い替え、画面の向こうで彼女の熱演を見守るファンへ、柔らかな笑顔を見せていた。
「大人の言うことを聞け」を歌い終えると、この日最初のMCへ。Nakamuraはベストアルバムのリリースツアーが新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になってしまったことを説明し「ツアーは中止になってしまったけど、年内にお届けしたいということで配信ライブを企画しました。画面の向こうではありますが、いろんな思いが伝わるようにやっていきたいと思うので、お付き合いをお願いします」と視聴者に向けて語りかけた。
「NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2」に収録された新曲「東京タワー」について、Nakamuraは「ベストアルバムを背負う新曲という重い責任を負わせたから、その分かわいくて仕方ない曲」と紹介した。“自分のリアルを歌う”という彼女の音楽スタイルの真骨頂を見せるこの曲を、Nakamuraは揺らぐ感情をむき出しにした歌声で表現し聴き手を圧倒する。その後も彼女はベスト盤に収録された「N」「ちっとも知らなかった」といったナンバーを1つひとつ、その曲への思い入れを語りながら慈しむように歌い上げた。
バンドメンバーが織りなす温かみのあるサウンドに乗せ、些細な日常の風景や心の動きを繊細な描写で歌い伝えるNakamura。優しくも切なさの滲むボーカルで「甘っちょろい私が目に染みて」を歌ったのちに披露された「痛ぇ」は、竹原ピストルのライブに触発されて生まれた曲だと言い、「竹原さんのライブを見たことが、自分の人生が大きく変わるきっかけになりました。感謝を込めて」と思いを語ったNakamuraはカワムラヒロシ(G)、Tomo Kanno(Dr)との濃密なセッションを展開した。
「かかってこいよ」が披露されるとライブも佳境。静かなギターのイントロからスタートした新曲「一服」は「デモを作って置いておいた曲なんですが、今が歌うときなのかなと思って掘り起こしてきました」というNakamuraの言葉と共に届けられた。揺れる画面が不規則なリズムでNakamuraの姿を捉え、彼女はカワムラとの息の合ったコンビネーションで届ける。複雑な乙女心を歌う「チクッ」では、バンドが織りなす彩り豊かな音色を楽しむように歌声を響かせた。
最後にNakamuraは、音楽について「いろんなことがあるけど、ずっとそばにあるものなんだなと思います。そこからお客さんとつながれるか、つながれないかは自分次第」と語った。この日のラストナンバーは「YAMABIKO」。「ここまで来られたのはこの曲のおかげ。今年は初心に返った年だったので、この曲を大事に、一生歌っていきたいと思います。そして医療従事者の皆さんのエールになれば」と話し、Nakamuraは力強いフェイクを交えた渾身のボーカルでライブを締めくくった。
NakamuraEmi「NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST2 ~Release Tour 2020~ BAND ver.」2020年12月12日 セットリスト
01. BEST
02. ばけもの
03. Don't
04. 大人の言うことを聞け
05. 東京タワー
06. N
07. ちっとも知らなかった
08. ふふ
09. 甘っちょろい私が目に染みて
10. 痛ぇ
11. かかってこいよ
12. 一服
13. チクッ
14. YAMABIKO
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