この日のライブは、スカパラが2019年から今年にかけて行った、デビュー30周年記念の全国ツアー「TOKYO SKA 30 ~ズレたままハジキ飛ばしていこう~」の京都・ロームシアター京都公演の振替公演として行われたもの。3月に実施予定だったロームシアター京都公演は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため5月に延期となったが、延期公演も実施が見送られ、この日会場を変えて野外の大阪城音楽堂で行われることに。スカパラが有観客のライブを実施するのは、約8カ月ぶりのこととなった。
開演時刻の18:00を迎え、突如鳴りだしたオープニングSEの「リボン」に、反射的に椅子から立ち上がるオーディエンス。温かく大きな拍手に迎えられたメンバー9人は、客席に大きく手を振ってそれに応えた。沖祐市(Key)がSEに音を重ねたのを合図にスカパラメンバー全員による「リボン」が力強く高らかに奏でられ、スカパラにとって8カ月ぶりとなる有観客ライブは幕開け。2曲目に「HAMMER HEAD」を力強く届けると、客席の熱量をさっそく受け取った加藤隆志(G)は「OK、最後までよろしく!」と思い切り叫んだ。
ホーンセクションの4人が楽器をぐるぐると回すアクションを聴衆がクラップで盛り上げた「5 days of TEQUILA」の演奏が終わるなり、鳴り止まない拍手が9人に送られる。愛おしげな眼差しでオーディエンスを見つめた谷中敦(Baritone Sax)は「制約がたくさんあって声とかあまり出せないけど、体を動かしてくれたら伝わるから。むしろ、何もしなくても伝わるっていうくらいです」とひと言。「夢の中にいるみたいだ」とつぶやいた彼は「感動MCするのやめようって思ったけど、こみ上げてくるものがあるな(笑)。お客さんを入れてのライブができない8カ月、自分たちのパラダイスを守ろうと思っていろいろやってきましたけど、やっぱりお客さんあってのパラダイスだね!」と、あふれ出す思いを口にした。
序盤の見せ場として披露されたのは、スカパラの30年の歴史に刻まれる数多の楽曲の中から、ファン垂涎の“B面曲”をつないだメドレー。沖が椅子から立ち上がり、情熱的な鍵盤さばきを見せた「'JAZZIE' SPEAKS」、北原雅彦(Tb)のアジテートを受け、ステージ中央に立つ谷中とGAMO(Tenor Sax)が深く艶のある音色のユニゾンで聴き手を魅了した「BLACK JACK」と、9人はレアな人気曲をつないでゆく。NARGO(Tp)の吹くトランペットのシャープな音色が、夜空を覆う厚い雲を裂くように響いた「国境の北、オーロラの果て」では、大森はじめ(Per)の奏でる乾いたコンガの音色も印象的なリズムセクションのタイトな演奏に、ホーンセクションが奏でるスケール感のあるメロディが乗る。茂木欣一(Dr)が「君が真夜中に目覚めてしまったとき、君のためだけに瞬く星になりたい……」と優しくささやいた「I Want To Be A Star Which Twinkles Only For You」でメドレーはロマンティックに幕を閉じ、バンドが次々と投げかける彩り豊かな音のシャワーを浴びたオーディエンスは、ひとときの余韻に心地よさそうに浸っていた。
谷中はここで「雨も降ってないよ。最高だね!」と夜空を見上げる。この日の大阪の天気は雨の予報だったが、大阪城音楽堂の上空はライブスタートの直前から曇り空を保っていた。谷中の言葉にメンバーも「吹き飛ばしていこう!」と盛り上がり、9人はオーディエンスを煽り立てるような攻撃的な演奏で「遊戯みたいにGO」を届ける。そしてGAMOがマイクを握ると、ライブの鉄板曲「Paradise Has No Border」へ。「今日は手を挙げて喜びを表現してください!」と呼びかけたGAMOは、メンバーを率いてステージを右へ左へと動き回り、諸手を挙げて盛り上がる会場を1つにまとめ上げていく。「画面観てる君も1つになろうぜ!」とライブ配信を観ている視聴者までも巻き込むと、メンバーは舞台の中央でフォーメーションを組み、高らかに楽曲のテーマを吹き鳴らした。
北原改め“きたっち”の「ライブとかけまして、ビールの大ジョッキと解く。その心は“生の迫力を味わえます”」という謎掛けが炸裂した「Natty Parade」では、見事な謎掛けとメンバーのご機嫌な演奏に、オーディエンスがリズミカルなハンドウェーブで応えた。そして、生演奏のBGMに乗せて届けられるトークコーナー「PARADISE RADIO」では、MCの茂木が「みんなと一番自然な場所にいるって感じがするね。何度でも言うよ、本当にありがとう!」とファンとの再会を大いに喜び、「マスクの下の口元は全開の笑顔だよね? その最高の表情に向かって、今夜届けたいと思います!」と、自身が歌う新曲「仮面ライダーセイバー」を高らかに歌い上げてみせた。
電飾がきらめくピアニカをNARGOが吹き鳴らす「SKA ME CRAZY」のパフォーマンスの際には、メンバーがスクワットをしながらリズムに乗るのに合わせ、ファンも膝を曲げてアップダウンを繰り返すというコミカルな光景が広がる一幕も。「White Light」では、曲をリードする加藤の「みんな元気だったかー!」という叫びに観客が大きなハンズアップとジャンプで応え、強烈な高揚感が場内に充満していった。バンドが30年間演奏し続けてきた名曲「君と僕」は、この曲を作った沖の「全部君たちのおかげです、どうもありがとう。君たちに捧げます。聴いてください」という言葉と共に聴き手へと贈られる。沖の吹く口笛はひんやりと静かな野音の空にまっすぐ澄み渡り、オーディエンスはその美しい音色にじっくりと聴き入っていた。
「これからも耐え忍ぶ時間があるかもしれないけど、『これは本当の春なんだ』と思えるときまでがんばっていこう」と茂木が呼びかけた「倒れないドミノ」が披露されるとライブも佳境。「みんなと最高の春を迎えたい」という思いで今年の3月に制作したというこの曲で、茂木はバンドの勇壮な演奏に優しい歌声を乗せた。9月に配信リリースされたばかりの「Great Conjunction 2020」のスリリングなセッションで聴き手を圧倒したのち、9人は本編ラストに「Glorious」をパフォーマンス。ステージから放たれるエネルギーに満ちた音に観客は満面の笑みを浮かべ、両手を挙げたりタオルを回したりのお祭り騒ぎに。力強い一体感を確かめた谷中は「ありがとう大阪!」とシャウトし、「東京スカ」と書かれたビッグタオルを背中で高らかに掲げた。
ファンは万雷の拍手でアンコールを求め、これに応えてメンバーは再びステージへ。最初にマイクを握った谷中は、そんな観客に向けて拍手を送り返し「みんなこの1年よくがんばった。いろいろ我慢もしてる。ルールも守ってる。本当にえらいよ。そして今日来てくれて本当にありがとう!」とこみ上げる思いを口にした。加藤が「予想以上に胸に来るものがあって。みんなの心がガチッとこっちまで伝わって。今日のライブは一生忘れないと思います」と続くと、沖は「みんなの思いで今があると思います。地球人の思いの強さをアルファ・ケンタウリ星人に見せつけてやりたい!」と絶叫。そして茂木は「僕らの究極の願いは思いっきり密になること。今日、ルールを守りながら密になるところまで来れたので、協力してくれて感謝しかありません!」と語り、年末の単独公演と全国ツアー開催が決まったことをファンに伝えた。
川上つよし(B)は来年の全国ツアーで大阪のファンに再会できることを喜び、GAMOは「マスクという“ボーダー”をパラダイスは飛び越えられるのか?と考えていたんですけど、今日皆さんのパワーをもらって、絶対に乗り越えられると確信しました」と思いを語った。スカパラがこの日最後に届けたのは「DOWN BEAT STOMP」。軽快なリズムに乗り、ステージ上も客席も関係なしにモンキーダンスを踊りまくる“いつものライブの光景”が、この日はその場に集う人々の喜びを何倍にも増幅させていた。
東京スカパラダイスオーケストラ「30th Anniversary Hall Tour 2019-20『TOKYO SKA 30 ~ズレたままハジキ飛ばしていこう~』」2020年10月22日 大阪城音楽堂 セットリスト
01. Opening SE~リボン
02. HAMMER HEAD
03. 5 days of TEQUILA
04. ツギハギカラフル
05. 'JAZZIE' SPEAKS
06. BLACK JACK
07. 月のウィンク
08. 国境の北、オーロラの果て
09. 月に吠える
10. I Want To Be A Star Which Twinkles Only For You
11. 遊戯みたいにGO
12. Paradise Has No Border
13. Natty Parade
14. 仮面ライダーセイバー
15. SKA ME CRAZY
16. White Light
17. 君と僕
18. 倒れないドミノ
19. Great Conjunction 2020
20. iDale Dale! ~ダレ・ダレ!~
21. Glorious
<アンコール>
22. DOWN BEAT STOMP
※「'JAZZIE' SPEAKS」から「I Want To Be A Star Which Twinkles Only For You」まではメドレー。
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【ライブレポート】パラダイスはボーダーを飛び越える!スカパラ、8カ月ぶりにファンと踊った大阪城野音に天気も味方(写真22枚) https://t.co/dDIkiEvZSZ