定刻を迎え、2人は静かにステージに登場。言葉を発することなく「リボルバー」でライブの口火を切る。yonige初の日本武道館公演となったこの日のチケットはソールドアウト。牛丸ありさ(Vo, G)は満員の観客を前に声を詰まらせ、約8000人の観客に気圧された様子を垣間見せた。その後気を取り直すように2人は「our time city」「最終回」とアップテンポな楽曲を勢いよく続けて観客のテンションを高揚させる。序盤には最新アルバム「HOUSE」の収録曲が多く届けられ、リード曲の「顔で虫が死ぬ」ではごっきん(B, Cho)が跳ねるようなリズムで観客を盛り上げた。
これまで数多くのライブハウス公演を重ねてきたyonige。彼女たちはこの日、演奏だけではなく、大規模な会場を生かした幻想的な演出でも観客を魅了した。「2月の水槽」では演奏が始まると共に紗幕がゆっくりとステージを覆い、そこに水中の様子が投影される。牛丸はたゆたうような歌声を会場に響かせた。続けて彼女は「バッドエンド週末」で透明感のあるハイトーンボイスで会場をうっとりとさせたあと、「こんばんは、yonigeです」と簡潔に挨拶をした。ごっきんはおなじみのサポートドラマー・ホリエに加え、5月から6月にかけて行われたワンマンツアー「これ、落としましたよ」からサポートギタリストを務めている土器大洋(LILI LIMIT)を紹介する。彼女は「スリーピースがいいとか、いろんな意見があると思うんですけど、大人になってやりたいことが増えて、もう1つ手がほしいということで。今めちゃくちゃバンドが楽しいです」と語った。
ライブ中盤には「アボカド」「センチメンタルシスター」など人気曲が並べられ、4人編成のyonigeはリアレンジが施されたメロディを力強く奏でた。新曲「往生際」の演奏前には、ごっきんが配信シングルのジャケット写真がファンから「気持ち悪い」と不評だと嘆息する。それに対して牛丸が「ゾウの頭ですからね。そう思えばかわいいでしょ」とフォローを入れた。この曲の演奏では4人全員が向き合い、ノイズミュージックのように歪ませた音を轟かせて観客を圧倒した。
後半では憂いを帯びたバラードやミドルチューンがしっとりと披露された。「沙希」ではミラーボールのカラフルな光が会場中を照らし、彼女たちは「ベランダ」で海辺の映像をバックにノスタルジックな音色を奏でて、オーディエンスをバンドの世界観に引き込んだ。1stミニアルバム「Coming Spring」のリード曲「さよならアイデンティティー」の冒頭を牛丸が情感たっぷりに弾き語ると、涙を浮かべるファンの姿も。本編ラストに彼女たちは「春の嵐」をエモーショナルに演奏する。「今年もお花見できないな」と歌われるこの曲で、フロアには花びらを模した紙吹雪が降り注ぎ、会場全体が桜色のライトで照らされた。
yonigeはこれまでにタイトルに“さよなら”を含む楽曲を3曲発表しており、彼女たちがアンコール1曲目としてセレクトしたのは「さよならプリズナー」。彼女たちは普段通り気負わないパフォーマンスで会場の熱を高めた。この日の会場となった日本武道館は、9月から約1年間、改修工事が施工される。ごっきんはこのことについて触れ、「改修工事前のバンドの公演はうちらが最後らしいです。yonigeの初武道館と、改装前の武道館でやる最後のバンドということで、ダブルパンチお祝いです」と会場の喝采を誘った。最後に2人は初期曲「さよならバイバイ」を物憂げに奏で、余韻をたたえたまま牛丸が「ありがとうございました。yonigeでした」と感謝を述べてこのワンマンライブの幕を閉じた。
yonige「一本」2019年8月13日 日本武道館 セットリスト
01. リボルバー
02. our time city
03. 最終回
04. 顔で虫が死ぬ
05. 2月の水槽
06. バッドエンド週末
07. アボカド
08. センチメンタルシスター
09. 悲しみはいつもの中
10. ワンルーム
11. 往生際
12. どうでもよくなる
13. 沙希
14. サイケデリックイエスタデイ
15. ベランダ
16. しがないふたり
17. 最愛の恋人たち
18. トラック
19. さよならアイデンティティー
20. 春の嵐
<アンコール>
21. さよならプリズナー
22. さよならバイバイ
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Yong Kim @gama_cat
【ライブレポート】yonige、初の日本武道館で“一本”(写真11枚) - 音楽ナタリー https://t.co/g3mbjKH2Td 行きたかったわね