「朗読演奏実験空間」とはamazarashiの楽曲群、秋田ひろむ(Vo, G)が朗読する書き下ろしの小説「新言語秩序」、照明や映像が混ざり合う、ライブ会場全体を表現空間と捉えたamazarashiの新たなライブ表現を指したもの。「新言語秩序」のシナリオは、“テンプレート言語”を逸脱したネガティブや過激な言葉が“検閲”される世界で、言語を検閲する組織「新言語秩序」側の人物・実多(みた)、それに抵抗する「言語ゾンビ」のリーダー・希明(きあ)が主人公として登場する“言葉のディストピア”を描いた物語だ。11月7日にリリースされた最新シングル「リビングデッド」、小説「新言語秩序」、そして“検閲解除ツール”として事前に配信されたスマートフォン用アプリが連動した公演として行われ、観客はスマホアプリを起動してライブに参加した。
日本武道館公演では、中央に設置されたステージと客席の間に半透化LEDスクリーンが紗幕として設置され、amazarashiは四方を囲まれた状態でライブを実施した。ノイズ混じりで全体を聞き取ることが難しい秋田の朗読に続いて、彼らは「ワードプロセッサー」を演奏。秋田は「歌うなと言われた歌を歌う」と力強いメッセージを届け、「日本武道館、“新言語秩序”! 青森から来ました、amazarashiです」と高らかに挨拶した。「リビングデッド」では観客のスマホのライトが一斉に点灯。スクリーンにはSNSのタイムラインを模した画面に歌詞や、あたりさわりのない言葉の数々が並ぶ。続く「空洞空洞」では看板の文字が検閲されている繁華街の様子がスクリーンに映し出され、その奥のステージには定位置で寡黙に演奏するamazarashiの姿が。「季節は次々死んでいく」では“テンプレート言語”に抵抗する過激化した“言葉ゾンビ”の運動を報じる物々しい新聞の紙面に、歌詞が表示されてはすぐに塗り潰されていき、楽曲の内容ともリンクしたストーリーが展開されていく。その世界観に引き込まれた観客は曲を聴き終えると喝采を上げた。
秋田は小説の第1章をステージで朗読。その内容から父親からレイプされた過去を持つ実多が「言葉を殺さなくてはならない」という思いを持って、“テンプレート逸脱”を検閲する立場として生きていることなどが明らかになった。続けて「自虐家のアリー」では動画サイトを模した画面がスクリーンに映し出された。その中のコメント欄では規制派の実多が同曲を通報。また“言葉ゾンビ”の活動家である希明によって「amazarashiは言葉ゾンビの象徴だ」という書き込みがされるも、すぐにコメントは削除され、曲終わりには「自虐家のアリー」の動画自体が“検閲済”となってしまった。「フィロソフィー」に続き、バラード「ナモナキヒト」でもスクリーンに映る歌詞が表示されてはネガティブな言葉が次々に塗り潰されるという状況ながらも、amazarashiの演奏が消されるようなことはなく、説得力のある歌声が場内いっぱいに響き渡った。「命にふさわしい」で再び観客のスマホが光を発し、検閲を解除するターンになると、スクリーンには希明が集結を呼びかけるデモ活動のビラや、検閲を免れた映画のポスターなどの文字が踊り、規制対象であるはずの言葉が表示された。
小説の第2章の朗読では、“新言語秩序”が過激な発言への注意喚起を促す草の根運動からいつしか政府と世論の後押しもあって国民に受け入れられるようになったこと、“テンプレート逸脱”をした者には“テンプレート言語強制プログラム”として“再教育”を施している状況などが伝えられた。また物語の中でそれに抵抗する“言葉ゾンビ”が検閲を解除するアプリを配布していることにも触れられ、現実のライブ空間とリンクしたストーリーが展開されていく。amazarashiは“テンプレート言語”にまつわるいたちごっこが続く物語にあわせて「ムカデ」を激しく演奏したほか、「月が綺麗」「吐きそうだ」「しらふ」と次々に楽曲を届けた。
ライブ後半、小説の第3章の朗読は“再教育”を受けたことで衰弱した希明と、実多の会話をメインに進められ、秋田は実多の言葉である「『言葉を消した』という言葉は消えなかった。『<言葉を消した>という言葉は消えなかった』という言葉も消えなかった」を読み上げてから、「僕が死のうと思ったのは」を歌唱。スクリーンには検閲された遺書などが映し出されると共に、実多のつらい過去が投影された。物語が進行していく中、amazarashiはメッセージ性の強い「性善説」や「空っぽの空に潰される」を演奏。物語は“テンプレート言語”の使用が激化し、ほとんどの言葉が塗り潰されるという状況ながら、その消される寸前の言葉は“新言語秩序”に抵抗する怒りをつづったものとなっていた。「カルマ」の演奏中には再び観客のスマホのライトが光り、「どうかあの娘を救って」と叫ぶ秋田の言葉に呼応するかのように、スクリーンの中ではデモを行う群衆の拳が突き上げる。演奏が終わると武道館にはオーディエンスの大歓声が沸き起こった。
第4章の“真”バージョンの規制が解除されたことを伝える映像に続いて、秋田は物語のクライマックスを朗読し始める。「言葉を取り戻せ!」と叫ぶ群衆の先で希明がマイクを持ち、“テンプレート逸脱”活動を扇動。群衆の中には実多を含む“新言語秩序”のメンバーが紛れ込んでいた。そして「言葉殺しがいるぞ!」と群衆に見つかった実多は恐怖を覚えるも、希明から「自由に言葉を話す権利がある」とマイクを差し出される。実多がステージへと向かってそのマイクを受け取ったところまでの朗読を行った秋田は、いよいよラストナンバー「独白」を演奏し始めた。
「独白」は最新シングル「リビングデッド」の収録曲だが、シングルにはほとんどの言葉が聞き取れない“検閲済み”バージョンが収められている。ライブでは観客のスマホのライトが光り、画面には「言葉を取り戻せ」の文字がいくつも並ぶ。秋田は検閲が解除された本来の歌詞を歌い、「言葉を取り戻せ!」と何度も絶叫。そしてギターのフィードバックが響く中、最後に「日本武道館! ありがとうございました!」と挨拶して、ステージを去っていった。その後の数分間、エンディングでスタッフロールが流れ終わって客電が点くまで観客の拍手は鳴り止まなかった。なお本公演で朗読された物語はスマホアプリで“検閲を解除”することで閲覧が可能。なお11月25、26日には全国の映画館で、本公演が上演される。
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amazarashi「朗読演奏実験空間“新言語秩序”」supported by uP!!! 2018年11月16日 東京都 日本武道館 セットリスト
01. ワードプロセッサー
02. リビングデッド
03. 空洞空洞
04. 季節は次々死んでいく
05. 自虐家のアリー
06. フィロソフィー
07. ナモナキヒト
08. 命にふさわしい
09. ムカデ
10. 月が綺麗
11. 吐きそうだ
12. しらふ
13. 僕が死のうと思ったのは
14. 性善説
15. 空っぽの空に潰される
16. カルマ
17. 独白
amazarashi Live「朗読演奏実験空間“新言語秩序”」DELAY VIEWING
2018年11月25日(日)全国の映画館
2018年11月26日(月)全国の映画館
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- amazarashi official HP
- 「新言語秩序」 / amazarashi
- ライブ・ビューイング・ジャパン : amazarashi Live『朗読演奏実験空間“新言語秩序”』LIVE VIEWING & DELAY VIEWING
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ナタリーにて武道館のライブレーポートが掲載されました。
amazarashi、日本武道館公演で繰り広げた圧巻の“朗読演奏実験空間
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