1月17日と29日に東京・LIQUIDROOMで
2010年のゆらゆら帝国の解散後、2011年に自身のレーベルzelone recordsを立ち上げてソロ活動をスタートさせた坂本。それからは同年に「幻とのつきあい方」、2014年に「ナマで踊ろう」、2016年に「できれば愛を」と3枚のソロアルバムをリリースしてきた。ほかにも他アーティストに歌詞や曲を提供するなど、精力的に音楽制作を続けている。しかしその間、ソロ名義ではライブを一切行うことがなかったため、再び彼がステージに立つ姿を多くのファンが熱望していた。
そんな坂本は、2017年6月に、同年10月のドイツ・ケルンのイベント「Week-End Festival #7」に出演することを発表。いよいよライブを行うことや、初めてのソロライブが海外となることなどが音楽好きを驚かせた。さらに翌11月には今回のLIQIDROOM公演の開催をアナウンス。ついに坂本が日本でソロ名義のライブをお披露目するとあり、ファンはチケットの争奪戦を余儀なくされていた。なおこの2公演はいずれも坂本(Vo, G)、AYA(B, Cho / OOIOO)、菅沼雄太(Dr, Cho)にサポートメンバーとして西内徹(Sax, Flute /
トレードマークであるGIBSON SGを手にステージに姿を現した坂本は、オープニングナンバーに「超人大会」をセレクト。菅沼によるゆったりとしたドラムのビートの上にギター、フルートと音が重ねられるにつれて、ぎゅうぎゅうのフロアの熱気とは対比を成すようなひやりとした楽曲の世界観が場内に立ち上がっていく。観客は声を発することも体を揺らすこともなく、静かにバンドのアンサンブルと坂本の歌に耳と目を集中させているようだった。それから坂本とAYA、菅沼によるボーカルの掛け合いがダークな雰囲気を作る「スーパーカルト誕生」が続けられるなど、ライブは静かな幕開けとなった。
この日演奏されたのはソロアルバム3作品の収録曲の数々が中心。全体を通して派手な照明や演出は排除され、坂本も曲間にMCを挟むことも、ギターを交換することもなく淡々と演奏を続けていく。バンドの編成のシンプルさはメンバーそれぞれの演奏の巧さやアレンジの妙を生々しく際立たせ、オーディエンスはサウンドに身を委ねるように揺れながら、坂本の描く独特の世界観を存分に味わっていた。
またシンプルなバンドの中において、楽曲によってさまざまな楽器を使い分けた西内のパフォーマンスも出色のものとなった。「君はそう決めた」「幻とのつきあい方」ではソプラノサックスのソロで観客を圧倒し、「べつの星」「ディスコって」では豊かなフルートの音色を響かせる。また、ときにはギロやマラカスを操るなど、多彩な音色を操り各曲に彩りをもたらしていた。
本編ラストの「動物らしく」のイントロ時には、この日初めて坂本からフロアに言葉が送られる。「今日最後の曲です。今日はどうもありがとうございます」のひと言に、この日一番の歓声が起こっていた。なお「動物らしく」の終盤では坂本がループサンプラーやディレイを用いてカオティックな空間を作り出すなど、この日のハイライトと言える熱演でオーディエンスを魅了。演奏終了後の余韻の中で、「ゆらゆら帝国みたい」と口にする観客も見られた。
本編の14曲を演奏し終えると、坂本は改めてフロアに挨拶。二見や照明スタッフ、PAエンジニアを含めたメンバー紹介を挟み、そのまま「ここからアンコールをやります」と話して観客を笑わせる。それから「好きではないけど懐かしい」「悲しみのない世界」を届けて、しっとりとした雰囲気の中で全演目を終えた。観客は再びDJブースに現れた二見がセレクトするBGMの中、思い思いにライブの感想を語りながら会場をあとにしていた。
坂本慎太郎「坂本慎太郎LIVE 追加公演」2018年1月29日 LIQUIDROOM セットリスト
01. 超人大会
02. スーパーカルト誕生
03. めちゃくちゃ悪い男
04. べつの星
05. 義務のように
06. ずぼんとぼう
07. できれば愛を
08. 幽霊の気分で
09. 君はそう決めた
10. 鬼退治
11. ディスコって
12. ナマで踊ろう
13. 幻とのつきあい方
14. 動物らしく
<アンコール>
15. 好きではないけど懐かしい
16. 悲しみのない世界
リンク
- zelone records
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
sat @satoru_takeuchi
ライブ盤出してください
https://t.co/dk9vmBU80T