トリプルファイヤー、満員のLIQUIDROOMで魅せた「FIRE」の世界

トリプルファイヤーが11月16日に東京・LIQUIDROOMにて、ワンマンライブ「アルティメット パーティー 4」を開催した。

新作アルバム「FIRE」のリリースを記念して行われた本公演には、サポートとしてシマダボーイ（Per）と遊佐春菜（Key / 壊れかけのテープレコーダーズ）の2人が参加。バンドは「FIRE」全収録曲を含むバラエティに富んだセットリストで観客を楽しませた。

映画館の開演ブザーのような音が場内にこだまし、しばしの沈黙のあとメンバーがステージに登場。最後に現れた吉田靖直（Vo）はポケットから酒の缶を取り出し、短く挨拶を済ませると「SEXはダサい」でライブを開始した。「FIRE」のオープニングナンバー「中一からやり直したい」ではシマダボーイが放つ多彩な音色と山本慶幸（B）の太いベース音がオーディエンスを魅了。続く「Jimi Hendrix Experience」では後半にかけて強烈なグルーヴが生まれ、場内の熱気も徐々に高まっていった。

遊佐が弾く怪しげなキーボードの音色が強い存在感を放った「漁師の手」「人生を変える言葉」を経て、ライブ中盤にはメンバー4人のみで演奏するブロックも。「エキサイティングフラッシュ」「次やったら殴る」といったひんやりとした空気が漂うナンバーから、鳥居真道（G）の軽快なギターフレーズがフロアを揺らした「変なおっさん」「全国大会」、そしてライブでの再現は不可能と言われていた「じじいの同窓会」などが次々と披露された。

吉田は「人多くないすか。こんな人気あんだ……すげえ人気ありますね」「恵比寿はたまに来るといいですね」ととりとめのないMCを挟みつつライブを進行。「ガンダーラ」では大垣翔（Dr）のタイトなドラミングに乗せて淡々とリズムを刻むように歌い、「人生を変えた言葉」では力の抜けたふわふわとした歌声で楽曲に不気味なニュアンスを加えていた。戦争の話をさせまいとさまざまな言葉を重ねていく「戦争の話」では吉田のアドリブが炸裂。「はい、じゃあジブリの都市伝説の話しまーす！」という一言と共に演奏が終了すると、フロアからは大きな歓声が上がった。

ほのぼのとした調子で「銀行に行く用事」を済ませた安堵を歌う「銀行に行った日」の演奏のあと、吉田は「もうちょっとイケる気がする。今もみんながんばって、心から音楽と一体となってくれてるのはわかるんだけど」と喋り出す。「俺はもっと先を見てる。行こう、その先へ。こんなもんじゃねえだろ」という彼の言葉を合図に披露されたのは「カモン」。自動再生のごとく繰り返される「両手挙げろ」「声出せ、みんなー！」といったフレーズに反応を示さない観客に対し、吉田は「ワンマンだとこんなに誰も手挙げないんすね。ありがとう」と伝えていた。彼らはラストに「こだわる男」でとびきり陽気なサウンドを奏でて本編を終えた。

アンコールを受け、メンバーは再びステージへ。吉田は満員のフロアを眺め「この大人数の前でパッと見意味のないことを言った人は、あんまいないんじゃないですかね」とつぶやいたあと、「これからもやっていくんで、CDとか聴いてください。ありがとうございました」と感謝を述べる。彼らは「スキルアップ」で場内の熱気をぐっと高めたあと、サポートの2人を交え「普通は走り出す」を披露した。歌唱前、吉田は同曲について「ちょっと物議を醸してる」「不思議な気持ちになる曲で終わるのが僕ららしい。だからこれが終わったあと、手を叩かなくてもいいです」と話していたものの、演奏が終了するとフロアからは盛大な拍手と歓声が。吉田は「出し切りましたー！ これからもよろしくお願いします、ありがとございましたー！」と声を上げ、ワンマンライブを締めくくった。