「BREAK OUT」でシーンの盛り上がりを後押し
──中川さんは「BREAK OUT」の制作にも携わっていたそうですね。テレビ局の制作スタッフの立場ではないと思うんですが、どんなことをするんですか?
中川 撮影や編集などの実作業的な部分は番組制作会社が行っていて、私たちは「企画を立て、番組で何を起こすか」を考える立場ですね。音楽出版社の中で「BREAK OUT」と「musicるTV」という2つの音楽番組を企画・運営しているのは当社だけなんです。番組を通じて新しいアーティストやクリエイターを発掘し、成長を応援していく。そうした姿勢は昔から大事にしています。
──つまり「誰を取り上げるか」を含めた企画の部分を担っていると。
中川 私自身は部署異動を挟みながら関わってきたんですが、初期はヴィジュアル系、その後は“歌い手”系、そしてダンスボーカルグループへと移っていって。当時、そのジャンルで活動されていた新人アーティストをいち早く取り上げ、シーンの盛り上がりを後押しできたのが印象に残っています。また「BREAK OUT祭」というイベントも開催してきましたが、人によって「ダンスボーカルグループのイベント」というイメージもあれば「ヴィジュアル系の祭り」と思っている人もいて、世代ごとに異なる印象で捉えられているのは面白いですね。
──番組を持っている強みとして、やっぱりアーティストのプロモーションに生かせる部分もあります?
中川 私たちの強みは“楽曲の出口”を確保できるところです。“タイアップして終わり”ではなく、リリースやツアーのタイミングに合わせて番組で特集を組むなど、点ではなく線でプロモーションを設計できる。年間を通して一緒に動くアーティストさんもいるので、そこは当社ならではの強みだと思います。
楽曲を広告使用する際のバランス
──最近、過去の楽曲がCMに再び使われるケースも増えてますよね。
中川 そうした再開発は主に広告代理店や音楽制作プロダクション、ときには企業とダイレクトに進めています。私たちが普段相手にしているテレビ局と連携するのとは異なる角度から楽曲を広めます。
──管理楽曲が膨大にある中で、提案する際はやっぱり担当者の熱量や好みも関わってきます? ミュージシャンや作詞・作曲者と音楽出版社の方って直接会って話す機会があまり多くないのかなって思うんですけど。
平山 私自身は作家さんと直接会うことは少ないですが、事務所を通してやりとりすることはあります。提案する際は“好み”よりも、その作品とCMのターゲット層との親和性を重視します。もちろん私たちが「いい曲だからぜひ!」と思っても、作家さんが「この作品はCMに合わない」と判断されれば無理に勧めることはありません。その代わり「こちらの楽曲はいかがでしょう?」と別の提案をする。それが音楽出版社の役割だと思います。
──例えばもし僕の曲を預かってもらった場合、僕はほとんどNGないんですけど(笑)、その場合プロモーションはやりやすい?
平山 広告に関して「なんでも大丈夫です」と言っていただけると、代理店の要望に沿う形でプッシュしやすいですね。そういう意味では、制約が少ないほうがプロモーションの幅は広がります。
──ただ、アーティストの作家性をどこまで尊重するか、そのバランスも大事ですよね。
平山 そうですね。例えば「替え歌で使いたい」という要望があったときに、替え歌そのものがNGではなくても「この言葉は曲の雰囲気に合わないので使わないでほしい」というケースもあります。そこで「どこまでなら大丈夫か」というすり合わせをする。白黒はっきりではなく、柔軟に調整することが多いです。
──逆に「なんでもいいです」と言いながら、完成したあとに文句を言われるのは困りますよね。
中川 私自身はそのような経験はないですが、確かにそうですね。逆に「替え歌は絶対にNGです」と明確に決めている作家さんもいらっしゃるので、そのあたりはバランスを取る必要があります。
楽曲の書き下ろしについて
──今のは既存の楽曲をどう使うかという話でしたけど、「このアーティストに書き下ろしてほしい」と依頼が来ることもあるんですか?
中川 ありますね。私の場合はテレビ朝日やBS朝日と向き合うことが多いのですが、例えばドラマやアニメ、映画の場合は、企画書や脚本をプロデューサーから共有していただきます。そのうえで「女性ボーカルがいいか」「男性アーティストが合うか」などイメージを伺いながら、作品に合うアーティストを提案しますが、ヒット性の高いアーティストや、これからブレイクしそうなアーティストを提案することが多いですね。その後、レーベルや事務所と権利交渉を行い、タイアップが決定した際は、楽曲制作に入ります。完成した楽曲については「解禁日をどうするか」「どう展開していくか」を関係者と話し合い、「BREAK OUT」や「musicるTV」などでのプロモーションにつなげる。提案から出口まで一貫して進行するのが私の役割です。
──ドラマ主題歌がどうやって決まるのか気になっていたんですが、音楽出版社の方がプロデューサーと密にやりとりされているんですね。
中川 「どういったアーティストがいいか」という話は各クールごとにプロデューサーと会話を重ねています。基本的にアーティストには書き下ろしをお願いするケースが多いですね。アーティストにとっても、今の自分を表現した楽曲を世に出せる機会になりますから。
──音楽出版社って、著作権の管理だけじゃなくて実にいろいろなことをやってるんですね。よかったら、ぜひ僕を主題歌アーティストとしてプッシュお願いします……! 今日はありがとうございました!
プロフィール
中川瑛美
2014年度入社。テレビ朝日・系列各局の番組に音楽を提案するタイアップ業務、「BREAK OUT」の番組担当などを幅広く経験。産休・育休を取得し、現在はタイアップチームの課長として部下の育成と、ドラマ・アニメ・映画の主題歌や劇伴などの音楽周りを担当している。
平山歩果
2023年度入社。著作権部にて、アーティストや作詞・作曲家との契約業務、締結後の印税の入金管理まで一連の業務を行っている。管理する楽曲をより多くの人に届けるため、テレビやCM、映画、ゲームなどで楽曲を利用してもらえるよう各媒体への提案・関係権利者との利用条件のクリアランスも行う。
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