左からKEN THE 390、般若。

ジャパニーズMCバトル:PAST<FUTURE hosted by KEN THE 390 EPISODE.extra [バックナンバー]

「BATTLE SUMMIT II」から「B-BOY PARK」までさかのぼる“般若の見てきたMCバトル”

歴史塗り替えちゃってごめんね…天才だからしょうがない

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「フリースタイルダンジョン」の推進力となった焚巻戦、そして“闘魂伝承”のR-指定戦

KEN THE 390

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──そしてまたさかのぼると「フリースタイルダンジョン」でのラスボス起用という流れがありました。

KEN 2008年のUMB以来だから、7年ぶりのバトルでしたよね。出演オファーを受けたのは?

般若 たまにはZeebraのオファーも聞いてみようかなって。俺は最後のボスということが決まってたから、出番は少ないと聞いてたし、俺としてもそもそも番組自体がそんなに続かないっていうイメージだった。そしたら収録2回目で(チャレンジャーの焚巻と)戦うことになったし、しかも番組はずっと継続するし「大人に騙された!」って(笑)。正直、出てくるラッパーも知らない人ばっかりだったから、ACEに「あの子は誰?」と毎回確認してた。

KEN MCバトルで名を上げたラッパーが多かったですもんね。俺も会ったことがないラッパーも多くて。

般若 KENですらそうなんだから、俺なんか全然知らないよ。本当に「ダンジョン」はなんだったんだろう……人生返してくれ!(笑)

KEN でも、般若さんがラスボスにいるっていうのは、番組の1つの推進力になってたと思うんですよね。焚巻VS般若戦が番組初期にあったのとなかったのでは、全然違ったと思う。

般若 そうなんだ。「バトルってこんな感じだったか」ぐらいしか思ってなかったし、「なんでみんな泣いてんの?」って感じだったよね。

KEN めちゃくちゃ熱い試合だったからですよ(笑)。

般若 大変な幕開けでしたよ。みんな50万獲って帰りゃいいのに。俺がチャレンジャーだったら1回勝ったら即降りてる。それでまた来るのを繰り返すね。

──小遣いもらいに来てるんじゃないんだから(笑)。

般若 「アイツまた来たわ! 今月携帯代キツいのかな?」みたいな(笑)。

KEN やっぱりチャレンジャーは世代的にも般若さんの音源がラップを始める原点になってる人が多かったですよね。だからこそ感情も高まるし、みんな自分をぶつけにいったと思うんですよ。

般若 「ちょっと落ち着けよ! 冷静になれよ」と思うよ(笑)。

──R-指定との卒業バトルは本当に感動的でしたよ。まさに闘魂伝承を感じました。

KEN バトルで相手の背中を押したり、感謝を伝えたりすることができるのを、あのバトルが一番表現していたと思いますね。

般若 あの日は、実はドラマの撮影が早朝からあって、朝7時から殴り合いのシーンを撮ってそのままバトルだったんだよ。だから、よく見ると顔がめちゃくちゃむくんでる(笑)。風の噂で聞いたんだけど、そのあとすぐ番組終わったんでしょ?

KEN う~ん……そうっすね(笑)。

──終了に関してオフィシャルにアナウンスがあったわけではないですが、ZeebraさんはWREPの番組「Zeebra's LUNCHTIME BREAKS」の中で参加アーティストの不祥事が1つの理由になったというお話はされていました。

般若 だから「MOGURA」の出演者も誰も捕まらないでくれと願ってるよ……って言いながら、俺が捕まったら笑うよな。しかも痴漢とか盗撮とか、人間として下の下みたいなことで(笑)。

バトルはドラッグと同じようなもん

左からKEN THE 390、般若。

左からKEN THE 390、般若。

──「ダンジョン」でMCバトルブームが起きましたが、どう感じましたか?

般若 ん~……「こんなもん時間の無駄だよ」かな。

──それはどういった意味で?

般若 もちろん、MCバトルにはいい面もあると思う。手っ取り早く名前が売れるだろうし、ステージングや空気の把握能力みたいなものは培われるかもなと。でも、そこに出続けるのは何になるんだろう、それしかないのかな、と正直思うんですよね。MCバトルが楽しくて出てるのかもしれないけど、それって続ける意味があるの? 絶対に疲れてるでしょ、って。言い方は難しいけど、バトルはドラッグと同じようなもんだと思うんですよね。

KEN 刺激にはなるし、勝てば気持ちいいけど……。

般若 いずれにしてもメンタルに影響があるような、キツいことだっていうのもわかるから、どっぷりそこに染まったらダメじゃねえかなって。俺が出始めた頃は、今みたいにSNSもなければプロモーションの場もないから、出るしかなかったし、俺にとってはその程度のもの。

──売名の手段というか。

般若 それぐらいのもんだし、それぐらいの関わり方でいいと考えているのは今も変わらない。だから付き合い方が大事だよね。

──1つの手段、余技だったものがメインになってしまうと、バランスが崩れるというか。

般若 そうだね。MCバトルは全然いいんだけど、そこに全力を尽くすのは単純にもったいない。言葉があってラップができるなら、曲を作ればいいわけだからさ。

KEN 「UMB2008」のときもそういうマインドでした?

般若 いろいろ思うところはあったけど、一番はアルバム(「ドクタートーキョー」)のプロモーションだったよね。

KEN その意味でも、作品とバトルの結果を両立させてたと思うし、リリースアーティストとして名前が確立してた般若さんがUMBに出るのは、超驚きだったんですよね。

──ほかにもリリースアーティストで優勝している人は当然いるんだけど、中でも2007年のGOCCI(LUNCH TIME SPEAX)さんと、2008年の般若さんは、特にすでにキャリアが確立されていたラッパーで。

般若 あのUMBの本戦は大阪で開催されていて。その前列にR-指定がいて、俺のバトルを観て「俺もいつかあの場に!」と思ったというね。つまり“R-指定が憧れてるラッパーは俺”ということらしいんだ。

KEN 改めて粒立てましたね(笑)。

──R-指定の単行本「Rの異常な愛情」(白夜書房刊)でも、それはずっと話してますね。

般若 まあプロモーションでもあったし、ちょうど30歳になるタイミングだったから、ちょっと出てみようかなって。結局BBPで優勝できてないというのが、自分の中で1つのコンプレックスでもあったからさ。あとHIDADDY(韻踏合組合)の存在も大きかった。当時、ヒダから「明日、渋谷に行くから会ってくれ」って連絡があって、行ったらビデオカメラを回してて。

KEN ヒダさんのDVD「ヒダディー ひとり旅」の撮影ですね。

般若 そのときに「俺、今のバトルに出たらいけるかな」って聞いたら、真面目に「ほんまにいけると思うで」と。それで出ようかなと思ったんだよね。そしてヤツは本戦で俺に負けるという……。

KEN ヒダさんもあんなこと言わなきゃよかったと思ってるかも(笑)。

般若 皮肉なもんだよ(笑)。それもあって、普通にエントリー費払って出たんだよね。ただ東京予選は大変だった。メンツもそろってたし。

──UMBの当時の公式ブログ(引用:ULTIMATE MC BATTLE 2008 OFFICIAL WEBLOG)に書かれていて、DVDにもなっていますが、PUNPEE(このバトル時はppppppp!!!)やZORN(当時はZONE THE DARKNESS)、DARTHREIDER、鎮座DOPENESS、ISSUGI、TKda黒ぶち、KMCなど、現在も活躍するメンツが登場していますね。般若さんは妄走族のMASARU、そして決勝ではRUMIと当たるという展開で。

般若 体張ったよ。DOTAMAと戦ったのもあれが最初だよね。

──初めての対戦であの強烈なディスり方をするDOTAMAさんはちょっと恐ろしかったですね。

KEN 気合いが入ってたんだろうし、愛が深すぎてめちゃくちゃ言っちゃったんだと思います。

般若 DOTAMAはあのバトルから1年間ぐらい「お前、俺のストーカーなの?」と思うほどイベントに来て。「あの……すいません……CD渡していいですか?」みたいな。

──バトルのときとテンションが違いすぎますね。

般若 「大丈夫か? こいつ」って。いまだにバトルで20も年下の女の子にめちゃくちゃ言ってるんでしょ。怖すぎるよ(笑)。

──その意味ではブレてないと言えますね(笑)。

般若 俺は今だったらUMBの地方大会に出て、日本各地の女性ラッパーにクソミソにディスられたいよね。

──それはもはやバトルでなくプレイ(笑)。

般若 俺がバトルを主催するなら……ずっと女性にディスられるMCバトルだね。正装(四つん這い)になって、それでガンガンにディスられる。そして俺はそれをすべて受け止めたい。

──受け止めたい……バトルじゃないし、もうお任せしますとしか言えない(笑)。

「UMB2008」で優勝 賞金30万円を有馬記念に突っ込んで全負け

般若

般若

KEN 話は戻りますが(笑)、UMBは地方予選に勝って、全国での本戦に進む甲子園みたいな形じゃないですか。

──2008年の東京予選は56人参加だから7回、本戦は16人参加で4回勝つ必要がありました。

KEN だから運や勢いのレベルでは生き残れないんだけど、UMB初参戦の般若さんが、普段からMCバトルに出てるようなラッパーをなぎ倒していくのに、度肝を抜かれたんですよ。

般若 大阪本戦のほうが精神的には楽だったかな。会場がなんばHatchで、ほとんどの出場ラッパーがあの規模の会場に慣れてなくて、緊張とかで自分の力が発揮できなかった気がする。でも、俺はすでにそこに立ってたという地の利があったよね。

KEN 場馴れは実は大きいですよね。

般若 ……いや違うな、俺の覇気にみんな飲まれたんだな! そういうことだ。

KEN 緊張じゃなくてオーラにやられた(笑)。多くのラッパーが仲間を引き連れて登場していた中で、般若さんは1人でしたよね。

般若 俺には連れて行ける仲間がいないから「仲間か……」って考えさせられたよ。子供とか、まったくラップと関係ない人を連れてったら面白かったな(笑)。

──優勝したときの感情は覚えていますか?

般若 やっぱり安堵ですよね。「ちゃんと終われたな」って。後日談なんだけど、あの年の優勝賞金は30万円で、その金は有馬記念に突っ込んで全負けした(笑)。もっと余談だけど、優勝したあとにポケットに手を突っ込んだら、TENGA EGGが入ってたんだ。

KEN どういう話の展開ですか(笑)。

般若 前の日に出たイベントがTENGA協賛で、イベント明けでそのまま直行したから、そこでもらったTENGAが入れっぱなしだったことを今思い出した(笑)。

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「B-BOY PARK」第1回MCバトルに参戦 すべてが粗削りだった

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