ジャパニーズMCバトル:PAST<FUTURE hosted by KEN THE 390 EPISODE.8(後編) [バックナンバー]
バトルから距離を置いて:R-指定
MCバトルにはまだ可能性がある
2024年6月27日 19:00 18
バトルから距離は置いてるけど、“スイッチ”はある
──一方、ブームのさなかは「特急が停まる駅ではどこでもサイファーがある」とサイプレス上野さんが言ってましたが、最近その数はかなり減っているようですね。もちろん、ラッパーの数がサイファーの数ではないし、エントリーの形がサイファーから、ネット発信やオーディションに変化したというのはあると思いますが、それでもフリースタイルブームは落ち着いたのかなと思います。
KEN もちろん、今もサイファーをやってる人はいるだろうし、そこから登場するラッパーもいると思うけどね。そしてブームの中で新しいプレイヤーを増やす影響を与えたのは、やっぱりRとT-Pablowなのかなって。
KEN 確かにテレビでバトルを聴いて、字幕を見て、「これをラップで、即興でやるの!?」と説明不要で驚かせたのは、Rだったと思うな。
R-指定 勉学じゃないところの、変な脳の使い方というか。「ラップってこんな入り組んだ言葉遊びをするんや」みたいなことを、そのまま伝えたかったのはありますね。
──一昨年は「FSL(FREE STYLE LEAGUE)」にエキシビションで参加されましたが、これからバトルに出る心づもりは?
R-指定 さんざん聞かれるし、いろんなバトルの主催の人に「ちなみに……」みたいに言われるんですけど、正直、俺が普通のバトルに出ても負けますよ。今のトーナメントに放り込まれたら、1回戦で負けると思いますね。
──それはスキル的に?
R-指定 自分のモードとしてバトル脳になってないし、頭の回転の早い若い子についていけるかなというのもありますけど、そもそもバトルにモチベーションがないのが大きい。俺の中で“いいバトル”ができるとしたら、ストーリーがないと難しいんですよね。それができるのが晋平太さんやったし、パブロやった。ニューカマーと当たっても、言うことがたぶんないですよ。ちゃんと会話が成立して、歴史や背景、ストーリーがないと、おもろいバトルにはならんと思うし、おもろくないバトル見せてもしょうがないよな、と。
KEN モチベーションがないのに出ても、得することはないからね。
R-指定 そうなんすよ。FSLも「パブロが出るなら相手は俺やろうし、俺が出るならパブロやんな」という物語がモチベーションやったんで。ただ、バトルから距離は置いてるけど、“スイッチ”はあるんですよ。だから「これはやり合いたいな」みたいに思える相手がいれば、スイッチが入るとは思うんですけど……。でも、パブロが言うてたみたいに「自分に気合を入れるため」というのは、わからなくもないんですよね。だから、この業界がヤバくなったとき、自分がヤバくなったときに、それを盛り上げるために出るときがあるかもしれない。バトルに出るのは完全にないとも言い切れないし、あるとも言い切れない……それぐらいの感じですね。
MCバトルにはまだ可能性がある
──最後に、これからのバトルに望むことは?
R-指定 前々から言ってるんですけど、ワードセンスとかライミングは前提として、オートチューンが使えるとか、メロディメイク、作曲センス、フロウセンスが鍵になるようなバトルも観てみたいですね。演奏技術、歌唱技術自体は断然上がってると思うんで、それをもっとフリースタイルに取り入れられるようなシステムがあれば、「即興で歌ったりフロウするのは得意やけど、バトルは苦手」というやつにも門戸が開くのかなって。
KEN オートチューンマイクと普通のマイク2本あるとかもいいかもね。
R-指定 おもろいっすね。そういう部分でも自由度が高まると面白くなる気がします。あとはラバダブやクラッシュのすごさを改めて感じることも多いんすよね。やっぱりラバダブって「自分もサウンドの一部である、演奏者である」という部分が強いと思うし、そういう部分がMCバトルにもっと入ってくる、理解される、つながると、より広がりが生まれるのかなと。だから、まだ可能性は全然あると思いますね、バトルには。
R-指定(アールシテイ)
大阪府堺市出身のラッパー。2015年にDJ松永と
KEN THE 390(ケンザサンキューマル)
ラッパー、音楽レーベル・DREAM BOY主宰。フリースタイルバトルで実績を重ねたのち、2006年、アルバム「プロローグ」にてデビュー。全国でのライブツアーから、タイ、ベトナム、ペルーなど、海外でのライブも精力的に行う。MCバトル番組「フリースタイルダンジョン」に審査員として出演。その的確な審査コメントが話題を呼んだ。近年は、テレビ番組やCMなどのへ出演、さまざまなアーティストへの楽曲提供、舞台の音楽監督、映像作品でのラップ監修、ボーイズグループのプロデュースなど、活動の幅を広げている。
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