出した声、叩いた手、その全部が俺らとのコラボになる
開演時間を迎えると場内は暗転。
続けて2人は「doppelgänger」「ビリケン」と、アルバム「LEGION」の収録順に次々披露。R-指定はその後、「今日はマイク1本とターンテーブルで、この5万人とやり合えるのか試しに来たわ。ダンサーも客演もないぞ。唯一客演があるとしたら、お前ら1人ひとり全員や。出した声、叩いた手、その全部が俺らとのコラボになる」と客席に向けて呼びかけた。その言葉の通り、この日のライブは以降も彼ら以外に誰もステージに上がることはなく、たった2人から発せられるエネルギーが満員のオーディエンスを圧倒。アルバム表題曲「LEGION」のリリック「客演要らずとは俺の事」を証明するようなステージとなった。
「お前に手を引かれて 東京ドームまで来てしまった」と、この日ならではのリリックに替えて歌った「よふかしのうた」や、「堕天」「合法的トビ方のススメ」などの人気曲でオーディエンスをヒートアップさせた2人。曲が終わると「めちゃくちゃデカいな……」と言いながら会場を見渡しつつ、R-指定は「みんなで歌ったときの大声の圧が違う」と喜び、DJ松永は「人がいっぱいいると照れるというか、恥ずかしい。あんまり見ないでほしい」と戸惑っていた。ここまで迫力に満ちたパフォーマンスを続けてきた彼らだが、MCでは自由奔放なトークが始まり、東京ドームのステージがさながらラジオのスタジオのような雰囲気に。大舞台に似つかわしくないほどの肩の力が抜けた掛け合いに、客席から笑いが起こった。
アカペラ「生業」で5万人を圧倒、さらには新たなボーカルスタイルも
普段のR-指定は自分の子供とどう接しているのか?というトークから流れるようにスタートした「はらぺこあおむし」は、フックの「はらぺこあおむしだった俺ら」という部分を観客に歌ってもらおうというR-指定の提案から、ライブ初披露の新曲にもかかわらず会場中で大合唱に。さらに「ちゅだい」から「耳無し芳一Style」へと、スピーディなトラックの上で低音と高音のラップが高速で入り乱れる曲をつないでいく。その後、凶暴なビートとテクニカルなスクラッチによるDJ松永のルーティンでフロアが沸き上がったタイミングで「Bling-Bang-Bang-Born」がスタート。客席に向けて銀テープが発射され、ステージの床からは炎が吹き上がり、会場はお祭り騒ぎとなった。そして「風来」「dawn」「ロスタイム」と、レイドバックしたメロウな選曲を続けてリラックスしたムードを作り出したのち、花道の先に立ったR-指定はこのように語り始めた。
「俺がラップを始めてから唯一ブレてないことは、ラップをするということだけなんですよ。それ以外はめっちゃ変わり続けてるし、進化してるし退化もしている。俺がブレないのは、その時々を歌詞にしてきたからなんですよ。間違ったことも早とちりも失敗も、全部音に乗せてきた。ノートがあれば、聴いてくれる人がいてヤバいビートがあれば、よくなったこともダメになったことも全部表現できるわけです。でも、マイクもペンもノートも、ステージもスピーカーも、仲間も、お客さんも、ビートもなくなったとしても、ひとりぼっちで真っ暗な空間の中でもたぶん俺はラップを選ぶと思います」
するとR-指定はアカペラで、感情をぶつけるように「生業」を熱唱。周囲360°を5万人に囲まれながら気迫に満ちたパフォーマンスを続ける彼の姿に観客も気圧されて、この日一番の大きな歓声が上がった。「生業」で「お前のバース オートチューンがかかってる 俺のバース いくつも意味がかかってる」というリリックを「俺のバース オートチューンも意味もかかってる」と替えて歌った彼は、続く「LEGION」でマイクにオートチューンをかけて歌唱。これまでのR-指定とはひと味違ったボーカルスタイルで、自身の進化を見せつけた。真っ赤な照明を浴びながらシリアスな雰囲気で披露された「15才」を経て、「Get Higher」では満員の東京ドームに立つまさの今の胸中を吐露するように「1人じゃ何一つできないや でも数万人とGet Higher」と歌い、観客はその言葉にじっと聴き入っていた。
キラーチューンの連発に会場興奮、意外な選曲に驚きの声も
「Get Higher」のリリックを踏まえて「中学の頃、ヒップホップに出会ってから20年経って、まったく想像してなかったことになってるわけです。あのとき、こんなに大きいところでライブさせてもらえると思ってなかったし、そもそも人前でラップすることで生活できることになると思ってなかった。逆に言うと、もうちょっとマシな大人になってると思ってましたよ。こんなにあの頃のまま20年経つんだって驚いたりもしてます」と振り返るR-指定。続けて「あの頃の自分と今の自分、違うところもいっぱいあるけれど、見てくれよこの景色、伸びしろのほうがあったんじゃないかと思いますね」と語って「のびしろ」を歌い始めた。この曲では全編にわたってオーディエンスによる大合唱がドームいっぱいに響き渡る圧巻の光景に。これを皮切りに彼らは「かつて天才だった俺たちへ」「二度寝」「オトノケ」とキラーチューンを次々に畳み掛け、イントロが流れるたびに会場が興奮に包まれた。
さらに、2014年にリリースされたR-指定の1stソロアルバム「セカンドオピニオン」から「使えないやつら」もセットリスト入りし、意外な選曲に驚きの声も。ドームを感傷的なムードで満たした「土産話」では、ラストの「ホールにアリーナ? またデカい山 ガキ使にピザ? カウントダウン紅白 まぁ今年も年末空けとくわ」というラインを「年末空けといてよかったわ」と変えて締めくくり、「NHK紅白歌合戦」出場を有言実行したことをアピールした。
アホくさくて最高で、しょうもなくてスペシャルな通常回でした
最後に観客に向けて「俺らみたいな人間でも、ひたすらやりたいことを信じてやってきたわけです。それがこの先も見せていく姿だと思っています」とメッセージを送ったR-指定。「いい1日を過ごさせてもらいました。めちゃくちゃ素晴らしくて感動的で、アホくさくて最高で、しょうもなくてスペシャルな通常回でした。ありがとうございました」と改めて感謝を述べ、ラストナンバーとして「毎日クライマックス最終回みたいな通常回」と歌う「通常回」を披露した。曲の終盤には「東京ドームでライブ...通常回」というリリックがひと際大きく響き、この感動的な“通常回”に対して会場中から万雷の拍手が轟く。2人きりで5万人とともに作り上げた初の東京ドーム公演は、全26曲、約2時間20分で終了。自らを信じ続け、自分を変えることのないまま東京ドームの舞台にたどり着いた2人の、これまでの人生を濃縮したかのような一夜となった。
終演後、ステージ上のスクリーンでは、Creepy Nutsがソウル、台北、香港、上海、北京の全5都市をめぐるアジアツアーを10月から11月にかけて開催することが発表された。なお、この東京ドーム公演の模様は4月28日よりPrime Videoにて独占配信される。
セットリスト
「Creepy Nuts LIVE at TOKYO DOME」2025年2月11日 東京ドーム
01. 中学22年生
02. doppelgänger
03. ビリケン
04. よふかしのうた
05. 堕天
06. 紙様
07. 合法的トビ方のススメ
08. はらぺこあおむし
09. オトナ
10. ちゅだい
11. 耳無し芳一Style
ルーティン
12. Bling-Bang-Bang-Born
13. 風来
14. dawn
15. ロスタイム
16. 生業 アカペラ
17. LEGION
18. 15才
19. Get Higher
20. のびしろ
21. かつて天才だった俺たちへ
22. 二度寝
23. オトノケ
24. 使えないやつら
25. 土産話
26. 通常回
公演情報
Creepy Nuts ASIA TOUR 2025
2025年10月18日(土)ソウル
2025年10月25日(土)台北
2025年10月29日(水)香港
2025年10月31日(金)上海
2025年11月2日(日)北京
Creepy NutsのTV・ラジオ出演情報
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みその🍥3/2全艦東02【A-21】🐰🍓 @misonokan
【ライブレポート】Creepy Nutsが5万人と作り上げた東京ドーム公演、自分を変えずに生きてきた2人の人生を濃縮した一夜 https://t.co/avE7BTBABu