Shizuoka UMBER

店長たちに聞くライブハウスの魅力 第10回 [バックナンバー]

静岡・Shizuoka UMBER

地元アーティストとタッグを組む、居心地のいいライブハウス

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全国のライブハウスの店長の話を通して、それぞれの店の特徴や“ライブハウスへ行くこと”の魅力を伝える本連載。第10回は静岡・Shizuoka UMBERの店長・南谷吉光氏に登場してもらった。同店の店長を務める傍ら、静岡出身のバンド・Track'sのマネージャーとして全国を奔走している南谷氏。彼に店を設立した経緯やこだわり、現況について聞いた。

取材・/ 酒匂里奈(音楽ナタリー編集部) 撮影 / 日置真光

義理の兄と2011年に設立

「この店は義理の兄でもある現オーナーと一緒に、2011年に設立しました。設立する前は2003年から6年ほど、バンド活動をしながら静岡のライブハウスで働いていました。今はもうないのですが清水JAMJAMJAMというハコです。店長が女性の方で、あるとき彼女が結婚したんです。そのタイミングで『俺に継がせてくれ』とお願いしたことがあって。でも彼女には『まだ引退はしない』と断られました。それが自分でライブハウスを作ろうと思ったきっかけです。作ると決めて、最初に苦労したのは資金集めでした。当時はバンドマンかつフリーターで、借金もある状態で。お金を借りられそうな人をなんとか探して、たどりついたのが義理の兄。彼に相談したら『じゃあ一緒に作る?』と言ってくれて今に至ります」

Shizuoka UMBERの現店長の南谷吉光氏。

Shizuoka UMBERの現店長の南谷吉光氏。

地元アーティストとタッグを組みたい

「静岡の音楽シーンって、もともと全国区になるアーティストがほぼいなかったんです。そこで、地元アーティストとタッグを組めるライブハウスを作れば、今後全国で活躍するアーティストも出てくるんじゃないかと考えました。もう1つ気になっていたのが、アーティストの全国ツアーの会場にあまり静岡が含まれていないこと。ツアーで来てもらえるようにするためには、ライブハウススタッフにも地元アーティストにも興味を持ってもらわなければと思いました。『あのスタッフ、あのアーティストがいるから静岡行こうぜ』ってなるくらい、面白いヤツが出てきてほしいというのは昔から頭にありましたね」

Shizuoka UMBERのエントランス。

Shizuoka UMBERのエントランス。

静岡で一番使いやすくて音がいいハコに

「設立にあたっては、バンド活動とJAMJAMJAMで働いた経験を生かして、静岡で一番使いやすくて音がいいハコを目指しました。お客さん目線で作った部分は、分煙にしたり、エントランスを広めにして逃げ場を作ったりしたところ。動線や楽屋の広さは、アーティストの使いやすさを意識しました。内装のこだわりは、まずフロアの壁に白を多く使ったことです。照明映えするように真っ黒な壁のライブハウスが多いと思いますが、それだと圧迫感があると感じて。フロアの壁のイラストは、五味アイコンでおなじみのLOSTAGEの五味(岳久)さんが描いてくれたものです。機材に関しては、スピーカーとパワーアンプはいいヤツをそろえました。特にスピーカーは、当時静岡のほかのライブハウスにはあまり置いていなかったメーカーのものを買ったんです」

フロアの壁には五味岳久が2週間泊まり込んで作業したイラストが描かれている。

フロアの壁には五味岳久が2週間泊まり込んで作業したイラストが描かれている。

マネージャーと店長を兼務

「自分は店長業に加えて、THE NINTH APOLLOに所属しているTrack'sのマネジメント業務も行ってます。彼らのライブをUMBERで観てから、自分でレーベルを作って彼らのCDを出そうとしていたんです。そんな矢先にナインスから彼らに声がかかって。そのときに、メンバーが静岡在住で若すぎるということもあり、ナインスの方に『マネージャーをやってくれませんか?』とお願いされたんです。実は彼らのUMBERでの初ライブは、全然覚えてないんですけどね(笑)。Track'sを認識したのは2014年。その頃の彼らはELLEGARDENなどのカバー曲とオリジナル曲を半々くらいで演奏していました。当時は正直下手くそだと思ったんですけど、オリジナル曲に魅かれる部分があって『とりあえず全曲オリジナルで演奏できるようにしてこい』と助言した記憶があります」

Track's

Track's

5年で引退したかった

「マネージャーと店長を兼務することについては、葛藤し続けています。Track'sがある程度経験を重ねたバンドなら県外のライブでも快く送り出せますが、ツアー経験もないままレーベルに所属したバンドなので、まだ心配な面があるんですよね。彼らについていくことが多いから、最近は全然店に来れていない。実を言うと……ホントは店は誰かに任せたいんです。そもそも店を作るときの目標が『5年で引退』だったから。この仕事は流行に敏感であることが大事だし、若い人たちが築いていくものだと考えていて。『今時の若い子は~』と言っているおっさんが居座り続けるのってどうなの!?と思ったんです。もちろん長年業界にいる素晴らしい方たちもたくさんいます。ただ設立当時の自分は、そういうモードだったんですよね。ライブだけ観て、打ち上げで『あのおっさん誰?』と言われながら飲んでるような立場になりたかった。結果、店を任せられる人がいなくて5年は無理でした(笑)。今は『10年で引退』を目標にしています」

Shizuoka UMBERのドリンクカウンター。

Shizuoka UMBERのドリンクカウンター。

ドリンクメニューの1つとして、南谷氏が横須賀かぼちゃ屋の店長・清遠武彦氏にレシピを教わったというカクテル“ヘルグラインダー”が提供されている。

ドリンクメニューの1つとして、南谷氏が横須賀かぼちゃ屋の店長・清遠武彦氏にレシピを教わったというカクテル“ヘルグラインダー”が提供されている。

地元の若手アーティストが活気付いてきている

「ブッキングは、来るもの拒まずだと思っています。若い子に出たいと言ってもらえることが多くて、初見の子たちにも『Your House』という地元アーティスト限定のイベントに出演してもらっています。Track'sの影響かはわからないですが、最近地元の若手アーティストが活気付いてきているんですよ。個人的に注目しているのはAtomic_skipperとイカスタンジャケットというバンド。Atomic_skipperは簡単に言うと、ハルカミライの女性ボーカリスト版。青春パンクみたいな感じですね。イカスタンはTHE BLUE HEARTS大好きな感じのスリーピースバンドです」

Shizuoka UMBERの楽屋。

Shizuoka UMBERの楽屋。

“裏ファイナル”会場として使ってほしい

「去年の7月にうちで開催したTrack'sのツアーファイナル『Track's “On my way home” TOUR 2018』は印象に残っています。自分の中で、地元アーティストがデカい会場で全国ツアーをするようになったときに、“裏ファイナル”の会場としてUMBERを使ってほしいという思いがあって。この公演中に、思い描いていた“裏ファイナル”のような雰囲気と熱量が感じられて、PAをやりながらちょっと感動してしまいました。ライブは盛り上がったし、UMBERの過去最多動員だったし、何より地元のお客さんがたくさん来てくれたことがうれしかったですね」

Shizuoka UMBERのステージ。

Shizuoka UMBERのステージ。

Shizuoka UMBERの魅力は居心地のよさ

「音楽をCDで聴いても、ライブを動画で観ても、きっと感動はしますよね。でもそれだと得られる情報は耳、目からだけだと思うんです。ライブハウスでは、ベースの音を床鳴りで足から、バスドラムの音を胸で感じられる。体全体で音を聴けるのはこの空間だけだと思います。その中でもUMBERとしての魅力を挙げるなら、居心地のよさですかね。そのおかげか設立から8年経って、全国ツアーで来てくれるアーティストが増えました。ツアーのたびに来てくれるアーティストも多くて、居心地よく感じてくれたのかなと思います。あとは……ドリンクスタッフがかわいい子ばかりなのも魅力です(笑)」

Shizuoka UMBERの店内。

Shizuoka UMBERの店内。

店舗情報

Shizuoka UMBERのロゴ。

Shizuoka UMBERのロゴ。

住所: 〒422-8005 静岡県静岡市駿河区池田146-1
アクセス:JR東海道本線 東静岡駅より徒歩8分
営業時間:14:00~23:00 ※公演により異なる場合あり
定休日:月・火
ロッカー:あり
駐車場:なし
再入場:公演により異なる
キャパシティ:200人
ドリンク代:500円
フリーWi-Fi:なし
貸切:可
※情報は4月8日時点のもの。

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店長たちに聞くライブハウスの魅力 第10回 [バックナンバー]
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自分の中で、地元アーティストがデカい会場で全国ツアーをするようになったときに、“裏ファイナル”の会場として使ってほしい

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