「
「Songwriters' SHOWCASE」は、ミュージカル作家・作曲家の育成と日本のミュージカルの底上げを目的として東宝が企画・制作し、一般社団法人映画演劇文化協会が主催として加わったプログラム。日本、韓国、アメリカ、イギリスから選抜された作家・作曲家が制作したミュージカルの楽曲を、日韓のミュージカル俳優が披露した。構成・演出を手がけるのは
ステージには、シアタークリエで上演中のミュージカル「next to normal」のセットがそのまま建てられている。家屋のシルエットを模した舞台美術の足元には椅子やテーブルが置かれ、そこには開演10分ほど前からキャストが姿を現し、談笑しながら待機していた。やがて軽快な音楽が流れてくると、井上が楽しげな足取りで登場し「フウー!」と観客を煽る。井上にトークを振られ、階段の後ろからひょっこりと姿を現した中川は「ウキウキするイベントですね。みんなで言ってみよう、“ウキウキ”!」と観客を巻き込む。ノリノリで「ウキウキ!」とレスポンスした観客に、井上は「言わなくていい!!」と即座にツッコんで笑いを誘った。
今回のショーケースでは、作詞・作曲者による解説に続いてキャストが歌うという形で、日本、韓国、アメリカ、イギリスからの各3組、合計12組のクリエイターたちによる12曲が披露された。1曲目は韓国のイ・レアが脚本・作詞、ソン・ボンギが作曲の「きょうの料理」より「食べさせたい」。この曲では、矢崎演じる料理教室の講師セビョクと、吉高演じる生徒イルムが、恋の相手においしいものを食べさせようと本格的に料理を始めたという事情に共感し合う様子が、スタンドマイクの前に立つ2人の優しいデュエットで描き出された。
2曲目はアメリカのアビー・ゴールドバーグ脚本・作詞、メイソン・マクドゥエル作曲の「504:The Musical」より「I'm Okay」。同作は、1977年にアメリカ・サンフランシスコで100人以上の障がい者が政府ビルを占拠したという抗議運動に基づいている。「I'm Okay」では、車いすの弟キースのため、メンタルに不調を抱えながら抗議行動に参加したポールが「僕は大丈夫」と悲痛に繰り返す様子が、マクドゥエル自身のピアノの弾き語りで歌われた。
3曲目はイギリスのリオ・マーサー、スティーブン・ハイドの「Pop Art」より「Mystery to Me」。これはレオナルド・ダ・ヴィンチの絵画「モナ・リザ」が、自分自身の“人生”のすべてが謎であることの苦しみを歌う曲。遥海は「レオナルド、レオナルド」とダ・ヴィンチに呼びかけながら感情を爆発させていくモナ・リザの姿を、持ち前のパワフルな歌声で表現し、大きな拍手を浴びた。
続く4曲目では、日本の上野窓が脚本・作詞、広田流衣が作曲を担う「惑星の旬」より、「Late Summer Love Song」を中川が歌唱。中川は、ケンがラジオDJとリスナーを1人2役でこなしながら、幼なじみのサツキへの恋心を吐露するさまを、シティポップのメロディに乗せて軽やかに歌う。5曲目はイギリスのレイチェル・ベルマン、エリザベス・チャールズワースの「The Dickens Girls」より「Fortune」。この曲ではダンドイが、チャールズ・ディケンズと共に女性の支援施設を立ち上げた慈善家アンジェラに扮し、彼女が巨額の遺産相続という“幸運”に感じる罪悪感と闘うさまを力強く歌った。
6曲目は韓国のイ・チャンヒとイ・ナレによる「Dawn Touch」より「世界一混んでいる、誰もいない場所」。このナンバーではイ・チュンジュとチェ・ナへが歌唱を担当し、夜明けの誰もいない遊園地を舞台に、とある男女のロマンチックなデュエットが披露された。7曲目の「アンナの手紙」は、日本の翠嵐るいと桑原まこによる「贋作!フェノメーノ」のナンバー。ここでは霧矢と田村が登場し、師クラウディアと弟子アンナのスリリングなやり取りが、緊迫感のあるデュエットで描かれた。
8曲目はアメリカのクレア・フユコ・ビアマンとエリカ・ジィのタッグによる「VISARE」より「Smoke and Mirrors」。“虚構”を表す慣用句をタイトルに持つこの楽曲では、ゆらゆらと揺れ動くような幻想的かつ難解なメロディをチェがパワフルに歌い上げる。9曲目では、脚本・作詞・作曲をイギリスのフィン・アンダーソンが手がけた「The Swansong」より「Caledonian Sleeper」を、アンダーソン自身とグラブがデュエット。この楽曲では、夜行列車に乗った女性が夢うつつの中で自分自身と向き合う様子が、美しい二重唱で表された。
10曲目は日本の大德未帆、竹内秀太郎のタッグによる「Picasso」より「Echo」。ここでは井上が、画家Aから画家ピカソへの「なぜお前は俺じゃない?」という嫉妬心や愛憎を、ドラマティックなメロディに乗せて歌い上げる。11曲目では、アメリカのアディー・シモンズとアダム・ラポートの「Mommy Issues」より「Never Gonna Be Like Them」を、中川が歌唱した。これは「人形の家」の舞台をテキサス州に置き換えた作品。中川は、最悪の夜を過ごしたあと、妻に夫が「僕らは、離婚したうちの親のようにはならない」と、どこかズレた励ましの言葉をかける姿をコミカルに表現した。
ラストの12曲目は、韓国のハン・チアンとハ・テソンによる「The Miracle Boy」より「I Wish You a Merry Christmas」。イ・チュンジュが歌唱を担当したこの曲では、観客や舞台上のキャストが“街の声”として一緒に歌うひと幕も。曲の締めくくりには、イ・チュンジュの温かな歌声が響く中で白い紙吹雪がステージに降り注ぎ、劇場はクリスマスムードに包まれた。
全曲のパフォーマンスが終わると、ステージにはキャストとクリエイターたちが勢ぞろい。最後は井上が「今日は新しい才能と出会う素晴らしい機会になりました。僕らも今後、より素晴らしい作品を届けられたら。本日は誠にありがとうございました!」とあいさつし、ショーケースは幕を閉じた。
Songwriters' SHOWCASE
2024年12月18日(水) ※公演終了
東京都 シアタークリエ
スタッフ
構成・演出:
出演
MC:
イ・チュンジュ /
関連記事
めかりんまる @kijishiroMARU
お写真キター😆✨ https://t.co/2irALFjGEf