中村勘九郎&七之助、父・勘三郎が上演した「きらら浮世伝」に向け「“爆発”をお見せできたら」

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2月に東京・歌舞伎座で行われる松竹創業百三十周年「猿若祭二月大歌舞伎」の取材会が、本日12月12日に東京都内で行われた。

左から中村七之助、中村勘九郎。

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左から中村七之助、中村勘九郎。

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「猿若祭」は、1624年に初代中村(猿若)勘三郎が猿若座(のちの中村座)の櫓を上げ、江戸で初めて歌舞伎興行を創始したことを記念し始まった公演。1976年に十七世勘三郎を中心に第1回が行われ、1994年に十七世勘三郎の七回忌追善として第3回、2017年には、中村勘九郎の息子である中村勘太郎、中村長三郎が初舞台を踏んだ第4回、また今年2月には、十八世勘三郎の十三回忌追善として第5回が行われた。第6回を迎える今回は、松竹創業130周年を記念し実施され、勘九郎と中村七之助らが、中村屋ゆかりの演目に臨む。

中村勘九郎

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取材会には、勘九郎と七之助が参加。勘九郎は「松竹の創業130周年というおめでたい年に、“猿若祭”と銘打った公演をさせていただけることを、とてもうれしく思っております。6度目になりますが、これをきっかけに定着して、“2月は猿若祭”という形になればうれしい」と瞳を輝かせる。続けて、勘九郎は上演演目を説明。「昼の部の幕開けは、(坂東)巳之助さん、(中村)児太郎さん、(中村)隼人さんの3人での『鞘当』となります。短い幕ではございますが、歌舞伎の魅力が凝縮された、とても美しい作品です。続くのは『醍醐の花見』。(中村)梅玉のおじさまに豊臣秀吉役で出ていただき、絢爛豪華な舞台をご覧いただきます」と話す。

「きらら浮世伝」(昭和63年3月銀座セゾン劇場上演)より、十八世中村勘三郎(当時・勘九郎)扮する蔦屋重三郎。(c)㈱えんぶ

「きらら浮世伝」(昭和63年3月銀座セゾン劇場上演)より、十八世中村勘三郎(当時・勘九郎)扮する蔦屋重三郎。(c)㈱えんぶ[拡大]

「きらら浮世伝」(昭和63年3月銀座セゾン劇場上演)より、十八世中村勘三郎(当時・勘九郎)扮する蔦屋重三郎。(早稲田大学演劇博物館所蔵F30-12591)

「きらら浮世伝」(昭和63年3月銀座セゾン劇場上演)より、十八世中村勘三郎(当時・勘九郎)扮する蔦屋重三郎。(早稲田大学演劇博物館所蔵F30-12591)[拡大]

昼の部ラストとなる「きらら浮世伝」について、勘九郎は「こちらは父(十八世勘三郎)が1988年、三十代の頃に銀座セゾン劇場で上演した作品」と説明。「きらら浮世伝」は、“江戸のメディア王”と称された、“蔦重”こと蔦屋重三郎を主人公に、喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴、恋川春町、大田南畝ら江戸時代に活躍した芸術家たち、そして吉原の遊女お篠らの物語が、青春群像劇として描かれる。1988年の上演版では、横内謙介が脚本、河合義隆が演出を手がけ、今回は横内が演出も担う。勘九郎は蔦屋重三郎が、来年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の主人公になることにも触れつつ「『きらら浮世伝』は、いつかやりたいと思っていた作品で、やるならこのタイミングしかないと。もちろん、セゾン劇場でやった演出をそのまま歌舞伎座に持ってくることは難しいので、演出の横内さんと話し合いながら“歌舞伎座仕様”にし、抑圧された芸術家たちの“爆発”をお見せできたら」と意気込みを述べる。

父・中村勘三郎の「きらら浮世伝」舞台写真を見つめる中村勘九郎(右)と中村七之助(左)。

父・中村勘三郎の「きらら浮世伝」舞台写真を見つめる中村勘九郎(右)と中村七之助(左)。[拡大]

また取材会の壇上には、1988年上演の「きらら浮世伝」より、勘三郎扮する蔦屋重三郎の姿が収められた舞台写真が。勘九郎は、写真を見つめながら「まずは『若い!』と思いました(笑)。頭も地の頭にかつらをつけていて、素に近い感じですよね。とにかく“出し切っているな”という印象」と話す。七之助は「『きらら浮世伝』の“壮絶な稽古”のエピソードは、父から100回以上聞いていますね(笑)。でも、父にとっては、それがすごく良い思い出だったみたいです。稽古には、父の思いを胸に臨みたいと思っていますし、“歌舞伎座仕様”になりますので、お客様には期待していただきたいですね」と話す。

また夜の部は「壇浦兜軍記 阿古屋」で幕開け。勘九郎は「また歌舞伎座で(坂東)玉三郎のおじさまの『阿古屋』が観られるということは、いちファンとして本当にうれしいですし、『猿若祭』でかかるというのも幸せ」と言い、続く「江島生島」については「『江島生島』は、1カ月の興行でかかるのは久しぶりなのでは。江島生島事件という江戸時代の事件を扱った舞踊で、(尾上)菊之助さんと七之助が出演します」と説明する。さらに夜の部最後の「文七元結」について勘九郎は、祖父・十七代目、父・十八代目共に大事にしてきた、私にとっても大好きなお芝居。現代社会で忘れがちな、江戸時代ならではの人情をご覧いただき、ほっこりしていただければ。また、私と七之助、2人で夫婦をやるのも珍しいと思いますので(笑)、楽しく勤めたい」と七之助と見つめ合った。

中村七之助

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なお、今年は2月から10月にかけて、十八世勘三郎の十三回忌追善興行が全国各地で行われた。七之助は、2月の「猿若祭」での満員の客席に感激したことを明かしつつ「歌舞伎座での『猿若祭』を皮切りに、全国を巡り、そして最後は『俊寛』を、実際に俊寛僧都が流れた硫黄島で上演し、兄が初役で俊寛僧都を勤めました。本当に努力が実を結んだ1年じゃないかなと深く思っていますし、父が上で喜んでくれていることを実感する1年でした」と話す。勘九郎も追善興行について「本当にお客様がたくさん来てくださって、父のことをしのんでくれました。また、父の舞台を観られなかった方たちも、本当に多くお越しくださって。私たちの肉体を通して、父の魂というものを感じ取っていただけた1年になったと思います。また、“追善”と銘打っていない公演でも、中村屋ゆかりの演目が並んだ年になりました。本当にいい経験をさせていただきましたし、これからもどんどん力をつけて、お客様に楽しんでいただけるよう、『猿若祭』に思いをぶつけていきたい」と言葉に力を込める。

左から中村七之助、中村勘九郎。

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カメラマンから次々発せられる「手を振ってください!」「手を下ろしてください!」という要望に、思わず笑ってしまう中村勘九郎(右)と中村七之助(左)。

カメラマンから次々発せられる「手を振ってください!」「手を下ろしてください!」という要望に、思わず笑ってしまう中村勘九郎(右)と中村七之助(左)。[拡大]

話題は、12月5日に命日を迎えた、父・勘三郎の十三回忌の法要の話に。勘九郎は「親族はもちろん、いろんな方が来てくださいました。でも、もう12年も経つのに、まだみんな実感がないんですよ。生きていてもまだ六十代で、来年70歳なので」と述べ、七之助は「不思議な人で、死んでからのほうが、どんどん距離が近くなっているんです。毎日ではないんですけど、3日に1回ぐらいは、夢にも出てきますし。だからこそ、法要では『あ、死んだんだ』と現実を突きつけられて、法要って残酷なものなんだなと思いました」とそれぞれ父への思いを語った。

公演は2月2日から25日まで東京・歌舞伎座にて。チケットの一般販売は、1月14日10:00にスタート。

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松竹創業百三十周年「猿若祭二月大歌舞伎」昼の部

2025年2月2日(日)~2025年2月25日(火)
東京都 歌舞伎座

スタッフ

二、「醍醐の花見」

作:中内蝶二
脚本:今井豊茂

三、「きらら浮世伝」

脚本・演出:横内謙介

出演

一、「其俤対編笠 鞘當」

不破伴左衛門:坂東巳之助
茶屋女房:中村児太郎
名古屋山三:中村隼人

二、「醍醐の花見」

豊臣秀吉:中村梅玉
利家正室まつ:中村雀右衛門
淀殿:中村福助
福島正則:坂東亀蔵
大野治房:尾上左近
曽呂利新左衛門:中村歌昇
加藤清正:坂東彦三郎
前田利家:中村又五郎
北の政所:中村魁春

三、「きらら浮世伝」

蔦屋重三郎:中村勘九郎
遊女お篠:中村七之助
遊女お菊:中村米吉
喜多川歌麿:中村隼人
滝沢馬琴:中村福之助
葛飾北斎:中村歌之助
山東京伝:中村橋之助
初鹿野河内守信興:中村錦之助
恋川春町:中村芝翫
太田南畝:中村歌六

公演・舞台情報

松竹創業百三十周年「猿若祭二月大歌舞伎」夜の部

2025年2月2日(日)~2025年2月25日(火)
東京都 歌舞伎座

スタッフ

二、「江島生島」

作:長谷川時雨

三、「人情噺文七元結」

口演:三遊亭円朝
作:榎戸賢治

出演

一、「壇浦兜軍記 阿古屋」

遊君阿古屋:坂東玉三郎
岩永左衛門:中村種之助
秩父庄司重忠:尾上菊之助

二、「江島生島」

生島新五郎:尾上菊之助
旅商人:中村萬太郎
中臈江島 / 江島に似た海女:中村七之助

三、「人情噺文七元結」

左官長兵衛:中村勘九郎
女房お兼:中村七之助
長兵衛娘お久:中村勘太郎
手代文七:中村鶴松
鳶頭伊兵衛:尾上松緑
和泉屋清兵衛:中村芝翫
角海老女将お駒:中村萬壽

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