中村時蔵、三代での襲名披露に感慨「この先の私たちの成長も見守っていただけたら」

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6月に東京・歌舞伎座で上演される「六月大歌舞伎」で、初代中村萬壽を襲名する中村時蔵、六代目中村時蔵を襲名する中村梅枝、五代目中村梅枝として初舞台を踏む小川大晴の取材会が、去る5月13日に東京都内で行われた。

左から中村梅枝、小川大晴、中村時蔵。

左から中村梅枝、小川大晴、中村時蔵。

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中村時蔵扮する山姥。(c)松竹

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左から中村梅枝、小川大晴、中村時蔵。

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昼の部では、六代目時蔵襲名披露狂言として「妹背山婦女庭訓」の「三笠山御殿」が上演され、梅枝が女方の大役・お三輪を初役で勤める。夜の部では、初代萬壽襲名披露、五代目梅枝初舞台として行われる舞踊「山姥」に、時蔵が山姥役、大晴が怪童丸後に坂田金時役で出演する。時蔵は、息子・梅枝、孫・大晴との三代での襲名披露を行うことに、各所への感謝の言葉を述べつつ「(時蔵の名前は)梅枝の出来が悪かったら絶対に譲らないつもりでしたが、厳しい目で見ても(梅枝の演技が)ずいぶん良くなってきたと思い、43年間名乗りました時蔵の名前を息子に譲ることにいたしました。譲る以上は、私も萬壽として、梅枝のがんばりに負けないように一生懸命勤めていきたいと思っております。お客様には、この三代の襲名披露を観ていただき、この先の私たちの成長も見守っていただけたら」と言葉に力を込める。

中村時蔵

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また襲名披露の演目について、時蔵は「『山姥』は、上演される機会の少ない作品ですが、実は大変な名曲。私はこういった、良い演目でありながら、普段あまり日の目を見ない作品がやりたいと思い、今回上演させていただくことにいたしました」「梅枝が勤める『三笠山御殿』のお三輪は、私や、私の父(四世中村時蔵)も、時蔵を襲名した際に勤めたお役。我が家には大変ゆかりのある演目でございますので、梅枝がどのように演じてくれるのかが楽しみでございます」とそれぞれ述べた。

中村梅枝

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梅枝は「つい2日ほど前に、『六月大歌舞伎』の台本が届いたのですが、その宛名が“中村時蔵さま”になっておりましたので、そのときに『次の公演からは中村時蔵なんだな』と実感しました」と語る。またファンから“梅(ばい)ちゃん”と親しみを持って呼ばれていたことに触れ「もう梅ちゃんと呼ばれなくなると思うと、とても名残惜しいです(笑)。新しい六代目時蔵として自分に何ができるのか、どれだけ歌舞伎に貢献できるかを考えて過ごしていきたい」と言葉に力を込める。なお、お三輪の役を、すでに時蔵から教わったことを明かしつつ「さきほど父も申しておりましたが、襲名披露でこの役に挑めることは、ある意味めぐり合わせなのかなと感じています」と感慨を述べ、「お三輪は、女方なら誰でも憧れるお役。この『妹背山婦女庭訓』という世界観や、ファンタジックなところを存分にお客様に楽しんでいただけるように演じることが、私の最終的な目標なのですが、その第一歩として、今回はきっちり丁寧に勤めたい」と意気込みを語った。

中村梅枝扮する杉酒屋娘お三輪。(c)松竹

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時蔵は、お三輪を演じる上でのポイントを「多々ありますが、やはり嫉妬が凝り固まった“疑着の相”と呼ばれる表情でしょうか。“疑着の相”に至るまでに、いじめの官女たちから、どのようにいじめられるかも大事なんです。私は、六代目の中村歌右衛門のおじさまからお三輪を教わりましたが、稽古場では、いじめの官女たちに『もっとこういった感じでいじめてあげて』とダメ出しされていました。今回、いじめの官女たちは(中村)歌六を始め、親戚ばかりになりましたので(笑)、どこまでダメ出しできるかわかりませんが、『こうやってほしい』と相談しながらやっていきたいと思います」と話した。

小川大晴

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小川大晴(右)に耳打ちする中村梅枝(左)。

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「五代目中村梅枝を襲名することになりました。よろしくお願いします」とハキハキ述べた大晴に、記者は「初舞台が近づいているな、と感じることはありますか?」と質問。もじもじする大晴に、父・梅枝が「あるよね。もう稽古してるんだもんね」と問いかけると、大晴は「たまに思う」とうなずく。時蔵は、大晴との「山姥」について「大晴は女方がやりたくなくて(笑)、立役が好きなんですね。それも立廻りが好きなのですが、見得を切るのがなかなかうまいんですよ。大晴が演じる怪童丸は、実は金太郎さん。イノシシや熊と相撲を取るような力持ちの役で、見得を切るシーンもたくさんありますので、初舞台にちょうど良いかなと」と話す。

小川大晴扮する怪童丸後に坂田金時。(c)松竹

小川大晴扮する怪童丸後に坂田金時。(c)松竹[拡大]

また、話題がスチール写真の、大晴扮する怪童丸後に坂田金時の姿に移ると、時蔵が「(同じく坂田金時をモチーフにした)『土蜘』に出てくる四天王の坂田公時はもっと赤っ面なのですが、あまり赤くするとかわいそうだからと、父とじいじが少し薄くしました(笑)。頭も、本当はこんなにカッコいい感じじゃないんですけど……昔、私が梅枝と『山姥』を踊って、梅枝が怪童丸を演じたとき、梅枝はその頭が嫌だったらしいんです(笑)。ですので、今回はカッコよくしました」と明かす。梅枝も「カッパみたいな頭で嫌だったのを覚えています(笑)。嫌でしょ、カッパ」と大晴に聞くと、大晴はこくりとうなずいた。

「六月大歌舞伎」は6月1日から24日まで歌舞伎座にて。

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「六月大歌舞伎」昼の部

2024年6月1日(土)~2024年6月24日(月) ※公演終了
東京都 歌舞伎座

スタッフ

一、「上州土産百両首」

作:川村花菱
演出:齋藤雅文

出演

一、「上州土産百両首」

正太郎:中村獅童
牙次郎:尾上菊之助
宇兵衛娘おそで:中村米吉
みぐるみ三次:中村隼人
亭主宇兵衛:松本錦吾
勘次女房おせき:市村萬次郎
金的の与一:中村錦之助
隼の勘次:中村歌六

二、「『義経千本桜』所作事 時鳥花有里」

源義経:中村又五郎
傀儡師種吉:中村種之助
鷲尾三郎:市川染五郎
白拍子伏屋:尾上左近
白拍子帚木:中村児太郎
白拍子園原:中村米吉
白拍子三芳野:片岡孝太郎

三、六代目中村時蔵 襲名披露狂言「『妹背山婦女庭訓』三笠山御殿 劇中にて襲名口上申し上げ候」

杉酒屋娘お三輪:中村梅枝改め中村時蔵
漁師鱶七実は金輪五郎今国:尾上松緑
入鹿妹橘姫:中村七之助
おむらの娘おひろ:中村梅枝(初舞台)
官女桐の局:中村隼人
官女菊の局:中村種之助
官女芦の局:中村萬太郎
官女萩の局:中村歌昇
官女桂の局:中村獅童
官女柏の局:中村錦之助
官女桜の局:中村又五郎
官女梅の局:中村歌六
烏帽子折求女実は藤原淡海:中村時蔵改め中村萬壽
豆腐買おむら:片岡仁左衛門

「六月大歌舞伎」夜の部

2024年6月1日(土)~2024年6月24日(月) ※公演終了
東京都 歌舞伎座

スタッフ

一、「『南総里見八犬伝』円塚山の場」

原作:曲亭馬琴

三、「新皿屋舗月雨暈『魚屋宗五郎』初代中村陽喜 初代中村夏幹 初舞台」

作:河竹黙阿弥

出演

一、「『南総里見八犬伝』円塚山の場」

犬山道節:中村歌昇
犬村角太郎:中村種之助
犬坂毛野:中村児太郎
犬川荘助:市川染五郎
犬江親兵衛:尾上左近
犬田小文吾:中村橋之助
犬塚信乃:中村米吉
犬飼現八:坂東巳之助

二、初代中村萬壽 襲名披露狂言「『山姥』五代目中村梅枝 初舞台 劇中にて襲名口上申し上げ候」

山姥:中村時蔵改め中村萬壽
山樵峯蔵実は三田の仕:中村芝翫
怪童丸後に坂田金時:中村梅枝 (初舞台)
源頼光:中村獅童
腰元白菊:中村梅枝改め中村時蔵
猪熊入道:中村萬太郎
渡辺綱:中村陽喜(初舞台)
卜部季武:中村夏幹(初舞台)
源賢阿闍梨:中村錦之助
平井保昌:中村又五郎
多田満仲:中村歌六
藤原兼冬:尾上菊五郎

三、「新皿屋舗月雨暈『魚屋宗五郎』初代中村陽喜 初代中村夏幹 初舞台」

魚屋宗五郎:中村獅童
女房おはま:中村七之助
丁稚与吉:中村陽喜(初舞台)
丁稚長吉:中村夏幹(初舞台)
召使おなぎ:片岡孝太郎
鳶吉五郎:尾上松緑
小奴三吉:中村萬太郎
磯部主計之助:中村隼人
浦戸十左衛門:坂東亀蔵
父太兵衛:河原崎権十郎
菊茶屋女房おみつ:中村魁春

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6/1(土)初日→6/24(月)千穐楽🎊
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