「當世流小栗判官」市川猿之助&市川笑也、“人馬一体”の宙乗りに向け意気込み

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「七月大歌舞伎」第1部「通し狂言『當世流小栗判官』」より、出演者の市川猿之助市川笑也の取材会が、本日6月14日に東京都内で行われた。

左から市川笑也、市川猿之助。(c)松竹

左から市川笑也、市川猿之助。(c)松竹

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「當世流小栗判官」より、市川猿之助扮する小栗判官。(c)松竹

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「當世流小栗判官」は、知勇に優れた小栗判官と、その許嫁で、常陸国の領主の娘・照手姫を描いた物語。2人は国の横領を企む横山大膳の計略により、離れ離れになるが……。本作は、1983年に三代目市川猿之助(現・市川猿翁)が初演して以来、“三代猿之助四十八撰の内”として上演が重ねられてきた。約11年ぶりの上演となる今回は、猿之助が小栗判官と浪七の2役、笑也が照手姫を勤める。

市川猿之助(c)松竹

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猿之助は、上演のきっかけを「歌舞伎座で宙乗りができるようになりましたし、(本作が)11年も上演されていないので、そろそろやってもいいんじゃないかなと」と話し、「3部制で、時間の制約があるので、外せないお約束事などは残しつつ、無駄な部分は削ぎ落とした構成にします」と述べる。また記者から、同じく“小栗判官”を描いた「スーパー歌舞伎 オグリ」「スーパー歌舞伎II(セカンド)『新版 オグリ』」と本作の違いを聞かれると「まったくの別物。スーパー歌舞伎は“愛の物語”ですが、『當世流小栗判官』はいわばお家騒動のお話。『新版 オグリ』をご覧になられた方は、あまりにも違うからびっくりするんじゃないでしょうか(笑)」とニヤリと笑う。

市川笑也(c)松竹

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笑也は、猿翁(当時は猿之助)演じる小栗判官の相手役として、1993年と1997年に照手姫を演じ、2011年の前回公演では、照手姫として、猿之助演じる小栗判官の相手役を勤めた。2011年公演を「(猿之助が)師匠(猿翁)とそっくりだったので、涙が出ました」としみじみ振り返る。なお、笑也は同公演で猿翁から“シンデレラ賞”を贈られた。このことについて笑也は「当時は“奇跡の52歳”としてその賞をいただいたのですが、今回は“奇跡の63歳”になります(笑)」と茶目っ気たっぷりにほほ笑み、報道陣の笑いを誘った。

「當世流小栗判官」より、左から市川猿之助扮する小栗判官、市川笑也扮する照手姫。(c)松竹

「當世流小栗判官」より、左から市川猿之助扮する小栗判官、市川笑也扮する照手姫。(c)松竹[拡大]

本公演の見どころは、小栗判官と照手姫による、天馬に乗った状態での宙乗りだ。猿之助は「“人馬一体”で、馬に乗っているため、動きが制約されます。宙乗りの技として珍しいですし、“馬が飛ぶ”というのは新しい歌舞伎座になって初めてかと」とコメント。笑也は「馬の脚って電動なんです。スイッチを入れると前脚と後ろ脚が動くんですけど、たまに故障して、片方だけ動かなくなってしまう。そういう日に当たったら、ラッキーだと思ってください(笑)」と冗談交じりに語った。

「當世流小栗判官」より、市川笑也扮する照手姫。(c)松竹

「當世流小栗判官」より、市川笑也扮する照手姫。(c)松竹[拡大]

なお、笑也は本公演の初日7月4日に、自身にとって1000回目の宙乗りを達成する。笑也は、初めての宙乗りが1987年上演の「當世流小栗判官」だったことを明かし、「お槙役で、首をはねられてピンスポットを浴びながら舞台上を頭が上がっていく、という宙乗りでした(笑)。“小栗”に始まって、“小栗”の初日に1000回を達成、というのは感無量です」と言葉に力を込める。さらに、2017年に東京・国立代々木競技場第一体育館で行われた「氷艶 hyoen2017ー破沙羅ー」で、松本幸四郎(当時は市川染五郎)と宙乗りしたときのエピソードを「ものすごく(宙乗りの位置が)高かったのですが、幸四郎さんも私も高所恐怖症で(笑)。テストのときは『怖い! 怖い!』『なんでこんなことやるの!?』『しょうがないでしょ!』って言い合いながら宙乗りをしました(笑)」と披露した。

本公演には、遊行上人弟子一真役で寺嶋眞秀が出演する。記者からキャスティング理由を問われると、猿之助は「眞秀くんと僕は、血のつながりもないので、身びいきでもなんでもなく、純粋に才能があると感じ、『ぜひ』とお願いしました。彼はとても芸感が良く、また音感やリズム感も良い。とにかく今は、舞台に出て『楽しい』という経験をしてほしいですね」と述べ、「(公演に向けて)まだ直接はお話していませんが、お稽古をがんばっているみたいです」と笑顔を見せた。「七月大歌舞伎」は、7月4日から29日まで東京・歌舞伎座にて。

ステージナタリーでは、現在歌舞伎座で上演されている「六月大歌舞伎」の特集を展開中。本特集では、「信康」で主演を務める市川染五郎が、演出の齋藤雅文と共に作品の魅力を語っている。

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「七月大歌舞伎」

2022年7月4日(月)~29日(金)
東京都 歌舞伎座

第1部

「三代猿之助四十八撰の内 通し狂言『當世流小栗判官』市川猿之助 市川笑也 天馬にて宙乗り相勤め申し候」

原作:近松門左衛門、文耕堂・竹田出雲、勝諺蔵
脚本:奈河彰輔
補綴・演出:石川耕士
演出:市川猿翁

出演
小栗判官 / 浪七:市川猿之助
照手姫:市川笑也
矢橋の橋蔵 / 横山太郎:坂東巳之助
万屋娘お駒 / 岡村采女之助:尾上右近
横山三郎:市川男寅
遊行上人弟子一真:寺嶋眞秀
横山次郎:市川青虎
横山太郎女房浅香:中村梅花
旅女房およし:市川寿猿
後家お槙:市川笑三郎
横山大膳:市川猿弥
鬼瓦の胴八:市川男女蔵
浪七女房お藤 / 上杉安房守:市川門之助
遊行上人:中村歌六

第2部

一、「『夏祭浪花鑑』住吉鳥居前 三婦内 長町裏」

作:並木千柳、三好松洛

出演
団七九郎兵衛:市川海老蔵
一寸徳兵衛:市川右團次
お梶:中村児太郎
琴浦:中村莟玉
伜市松:堀越勸玄
玉島磯之丞:大谷廣松
下剃三吉:市川九團次
三河屋義平次:片岡市蔵
おつぎ:市川齊入
堤藤内:市村家橘
お辰:中村雀右衛門
釣舟三婦:市川左團次

二、「新歌舞伎十八番の内『雪月花三景』仲国」

出演
仲国:市川海老蔵
女蝶の精:市川ぼたん
男蝶の精:堀越勸玄
虫の精:市村竹松
同:大谷廣松
同:中村男寅
同:中村莟玉
同:市川九團次
小督局:中村児太郎
仲章:中村種之助
八条女院:中村福助

第3部

「風の谷のナウシカ 上の巻 ―白き魔女の戦記―」

原作:宮崎駿(徳間書店)
脚本:丹羽圭子、戸部和久 
演出:G2、尾上菊之助
演出・振付:尾上菊之丞
協力:スタジオジブリ

出演
クシャナ:尾上菊之助
ナウシカ:中村米吉
アスベル / 口上:尾上右近
ケチャ:中村莟玉
幼い王蟲の精:尾上丑之助
幼きナウシカ:寺嶋知世
ラステル:上村吉太朗
クロトワ:中村吉之丞
ミト:市村橘太郎
トルメキアの王妃:上村吉弥
ジル:河原崎権十郎
城ババ:市村萬次郎
チャルカ:中村錦之助
ユパ:坂東彌十郎
マニ族僧正:中村又五郎

※初出時、情報に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

※2022年7月19日追記:新型コロナウイルスの影響で、7月18日の第1部「當世流小栗判官」、19日の全プログラムが中止になりました。

※2022年7月22日追記:新型コロナウイルスの影響で、7月19日以降の全公演が中止になりました。

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