“鬼”とは何か、Noism×鼓童「鬼」金森穣・石塚充・原田敬子が意気込み

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Noism×鼓童「鬼」が7月に新潟・埼玉・京都・愛知・山形で上演される。公演開催にあたり、本日4月22日に記者発表が行われた。

左から原田敬子、金森穣、石塚充。

左から原田敬子、金森穣、石塚充。

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本公演は新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館の専属舞踊団・Noism Company Niigataと、新潟県佐渡市を拠点に活動する太鼓芸能集団 鼓童による新作公演。金森穣が演出振付を担う本公演では“ディアギレフ生誕150周年”と冠し、第1部にストラヴィンスキー「結婚」、第2部に作曲家・原田敬子が書き下ろすNoism×鼓童「鬼」を送る。

金森穣

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記者発表では登壇した金森、原田、鼓童の石塚充が公演について語った。金森は創作の経緯として、“新潟”をテーマにした作品を作りたかったこと、「第9回シアター・オリンピックス」で原田の音楽で「still / speed / silence」を創作したこと、コロナ禍で行われた鼓童の代表・船橋裕一郎との対談がきっかけになったと話す。

原田敬子

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石塚充

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金森に「新潟とは何か」と尋ねたところ「“平野”という答えが返ってきた」と微笑む原田は、「演奏者の演奏中の身体の内部がどう変わるかをライフワークにしているのですが、“平野”から音楽を想像するのが難しくて。地形や環境で形成される人の特徴を捉えられたらとリサーチするうちに、新潟の人々の真面目さや堅実さ、土地に根付いたものを作っているという自信を感じました」と言う。「前身となる鬼太鼓座(おんでこざ)と合わせると50年の歴史がある鼓童さんの、様式や身体の中が変容してしまうようなことに挑めたらと、作曲に取り組みました」と告白した。また、石塚は公演について「(Noismとの共演は)身が引き締まるような思い。原田さんの楽曲はシンプルに難しくて、鼓童の歴史上最高難度と思うくらい。原田さんが魂を込めて作ってくれた曲に鼓童が魂を注ぎ、その音にNoismさんが魂を入れ込んで、新しい空間が生まれている実感があります」と喜びを表現。なお、「鬼」では鼓童の若手7人が演奏を務める。

同時上演される新作「結婚」について金森は、「原田さんから楽曲テーマが“鬼”だと聴いたときに、ストラヴィンスキーの『結婚』と付合することがたくさん出てきて」と話し、ピエール・ロチの小説「お菊さん」をベースに創作することを明かした。

左から金森穣、石塚充。

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“鬼”というテーマの由来について、原田は「新潟県には鬼にまつわる民話が多い。“鬼”とは私にとって人間が作り出したもので、一説によれば鬼という漢字には、心が邪気に襲われて頭がネガティブな発想にとらわれてしまい、暴走するという成り立ちがあるらしいんです。奇しくも今の(世の中の)状況と重なる部分があり、それを感じていたのかなと思いました」と振り返る。すると、金森が「鬼は必ずしもネガティブなものばかりではなく、この国には『鬼は内』など、鬼を家の中に取り込むという文化もある。鬼は人間の中にあるものとして、それを肯定する精神の強度、光の部分にもなりうると解釈しています」と付け加えた。また、石塚は「佐渡の暮らしや鼓童の中では、鬼は神様や人をつなぐ橋渡しのような存在。人間のエネルギーを何かに変化させて届けるという意味では、僕らのような人間のことだと考えています」と述べた。

リハーサルより。(撮影:遠藤龍)

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数日前より行われているリハーサルで、自身も飛び入りで踊ったという金森は「鼓童さんの強烈な響き方は身体に及ぼす影響が多大で、ヒリヒリするものがありました。拍が明白でない楽曲、響きのうねりがその都度違うものから舞踊家が、成すべき所作にどう落とし込むかという作業はスリリング」と実感を語る。一方、石塚は「踊り手の身体を通して自分たちの音楽を届けるという経験は今までにはない感覚。若いメンバーの音の出し方が、日々変わっていくのを感じます」と話した。

「舞踊は難解だと思われがち」という話題では、原田が「難解の極地が(見えるものではない)音楽の部分かなと思うのですが(笑)、『鬼』には音楽的な旋律はなく、リズムがあります。一番最初に出てくるリズムが“ゆがんだ三拍子”と言われる、鼓動のリズムになっていて、鼓童さんの名前の由来であることにリスペクトを持ってテーマにさせていただきました。全曲にわたっていろいろな形で出てきます」と楽曲へのヒントを明かした。最後に金森が「7人の奏者が14本の腕で1つの音を奏でるというのは、14本の腕を持った鬼が演奏しているみたいな感じなんです。その音世界の中で14人の舞踊家が踊る、その難しさたるや。原田さんが一番“鬼”だなと思います」と言うと、報道陣から笑い声が漏れた。

Noism×鼓童「鬼」ビジュアル

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公演は7月1日から3日まで新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場、8日から10日まで埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホール、17日に京都・ロームシアター京都 メインホール、23日に愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、30日に山形・荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館) 大ホールで上演される。チケットは明日4月23日に一般発売開始。

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Noism×鼓童「鬼」

2022年7月1日(金)~3日(日)
新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場

2022年7月8日(金)~10日(日)
埼玉県 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

2022年7月17日(日)
京都府 ロームシアター京都 メインホール

2022年7月23日(土)
愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール

2022年7月30日(土)
山形県 荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館) 大ホール

第1部 ディアギレフ生誕150周年・ストラヴィンスキー「結婚」

演出振付:金森穣
音楽:I.ストラヴィンスキー(録音使用)
衣裳:堂本教子
出演:Noism0、Noism1

第2部 Noism×鼓童「鬼」

演出振付:金森穣
音楽:原田敬子
演奏:太鼓芸能集団 鼓童
衣裳:堂本教子
出演:Noism0、Noism1

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