まぎれもなく「デラックス」に、市原佐都子「妖精の問題 デラックス」開幕

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市原佐都子 / Q「妖精の問題 デラックス」が、本日1月21日に京都・ロームシアター京都 ノースホールで開幕した。

レパートリーの創造 市原佐都子 / Q「妖精の問題 デラックス」より。(撮影:中谷利明)

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レパートリーの創造は、ロームシアター京都が劇場のレパートリー演目として時代を超えて末永く上演されることを念頭に、2017年度から取り組んでいるプログラム。その第5弾として上演される「妖精の問題 デラックス」は、2016年に神奈川県相模原市で起きた障害者施設での事件をきっかけに市原が創作した「妖精の問題」のリクリエーション作品となる。

レパートリーの創造 市原佐都子 / Q「妖精の問題 デラックス」より。(撮影:中谷利明)

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レパートリーの創造 市原佐都子 / Q「妖精の問題 デラックス」より。(撮影:中谷利明)

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劇場に入ってまず目に飛び込んで来るのは、ぼんやりと会場を照らす、赤くて丸い提灯の数々。舞台の上手にはキッチンやテレビ、布団、冷蔵庫などが並ぶ部屋のような空間があり、奥には富士山と松の画が描かれた衝立と1本のスタンドマイクが立つステージがある。下手にはバンドブースがあって、その3つのエリアは回廊でつながっている。さらに部屋の中央には座布団がいくつも置かれ、観客は自分が観る場所を、自分で決めることができる。

レパートリーの創造 市原佐都子 / Q「妖精の問題 デラックス」より。(撮影:中谷利明)

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レパートリーの創造 市原佐都子 / Q「妖精の問題 デラックス」より。(撮影:中谷利明)

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作品は3部に分かれて展開。第1部「ブス」では、“ブス”な女学生2人の対話が描かれる。これまでの上演では、1人の俳優による落語形式だったが、今回の「デラックス」では女性コンビ、ハイジニーナの漫才シーンとして立ち上げられる。“ブス”だけどみんなと同じことがしたい女学生と、“ブス”だから同じことができるわけはないと思っている女学生の自虐的なやり取りを、朝倉千恵子筒井茄奈子はハイテンションで繰り広げ、笑いを巻き起こす。さらに不自然撲滅党・屁当弁憤子の演説シーンでは、仮面を付けた俳優がもっともらしい口調で“不自然なもの”への排他的な主張を繰り広げ、その無表情かつ無機質な様子が恐怖を煽った。

レパートリーの創造 市原佐都子 / Q「妖精の問題 デラックス」より。(撮影:中谷利明)

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第2部「ゴキブリ」では、家に生息するゴキブリに悩まされている貧困夫婦の物語が描かれる。キキ花香演じる妻はうなだれた様子で登場し、ぐるりと回廊を歩いて部屋に向かう。そして買ってきた牛乳とホウ酸をミキサーにかけ、大石英史演じるテレビを見続ける夫の傍らで、ホウ酸団子を丸め始めた。やがて夫が部屋を出て行くと、彼女は“変身”。押さえていた感情を爆発させるように、ゴキブリや夫、世間に対する思いを歌にぶつけ、バンドと熱っぽく激しいセッションを繰り広げた。

第3部「マングルト」では、自分自身の体内常在菌を利用して作る食べ物“マングルト”についてのセミナーが展開。廣川真菜美演じる礼子と、富名腰拓哉演じる助手の山田は、緑ファンタ演じる小室淑子が考案したマングルトの良さを説明する。彼らの話は一見すると突飛だが、その人当たり良さげな様子や、“マングルトギャグ”で笑い合う姿には妙な引力があり、話に引き込まれそうになる。やがて彼らの主張は、観客それぞれの中にある価値観に揺さぶりをかけ始め……。

レパートリーの創造 市原佐都子 / Q「妖精の問題 デラックス」より。(撮影:中谷利明)

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落語形式から漫才形式になった第1部を除き、第2・3部は台本上の大きな変更はなく、作品の芯はこれまでと変わらない。だが、演出は文字通り“デラックス”にバージョンアップしており、dot architectsによる自由度の高い空間デザインや、お寿司・南野詩恵が手がけるユニークな衣裳など、どれも魅力的で細部まで目が離せない。さらに東京塩麹 / ヌトミックの額田大志による音楽は、作品にスピード感と軽み、温かさや膨らみを与え、笑いが生まれる“幅”を作り出した。

開幕に際し市原は「最高のメンバーと共にまぎれもなく『デラックス』なものをつくることができました。初演から、こんな姿に作品が生まれ変わることを、作品だけでなく私たちの暮らしや考え方がこんなにも変わってしまうことを、想像していませんでした。いま再演することでさらに意味を持つ作品です」とコメントした。

レパートリーの創造 市原佐都子 / Q「妖精の問題 デラックス」の公演は1月24日まで。22日18:00開演回と、24日14:00開演回にはアフタートークが実施され、22日18:00開演回には市原と本作のドラマトゥルクである木村覚、24日14:00開演回には市原と音楽担当の額田が登場する。

ステージナタリーでは、市原と「妖精の問題」オリジナルキャストの竹中香子、ロームシアター京都プログラムディレクターの小倉由佳子による座談会を掲載している。

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レパートリーの創造 市原佐都子 / Q「妖精の問題 デラックス」

2022年1月21日(金)~24日(月)
京都府 ロームシアター京都 ノースホール

作・演出:市原佐都子
音楽:額田大志
演奏:秋元修、石垣陽菜、高橋佑成、額田大志

出演

第1部:朝倉千恵子筒井茄奈子
第2部:キキ花香大石英史
第3部:廣川真菜美、富名腰拓哉、緑ファンタ

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