「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」今回は前川知大の、あの名作

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岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」が12月25日に東京・東京国際フォーラム ホールCで開催された。

岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」より。(c)平岩と毛利

岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」より。(c)平岩と毛利

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「いきなり本読み!」は、出演者に演目を事前に告知せず、ステージ上で台本を渡し、その場で岩井秀人が配役・演出する企画。2月にスタートし、8月には東京・本多劇場、9月には「豊岡演劇祭2020」の演目として上演された。今回は松たか子神木隆之介後藤剛範大倉孝二の4人が出演した。

開演時間になると、岩井がふらっと舞台上に現れ、会場をぐるっと見回してから観客に軽く挨拶。そしてさっそく出演者を舞台上に呼び込むと、後藤、大倉、松、神木の順で、なぜか全員小走りになって舞台に姿を現した。そして全員がそろったところで岩井が「世にも珍しい、これから何をやるのかわからず入ってきた役者さんたちです!」と紹介すると、会場がドッとわいた。

現在の心境を問われると後藤は「目の前が真っ白です!」、大倉は「ホント楽しくないですね。なんでこんなことしなきゃならないのか……」、松は「今年の仕事納めです!」、神木は「広い! すごいですねえ」とそれぞれの感想を述べた。

岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」より。松たか子。(c)平岩と毛利

岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」より。松たか子。(c)平岩と毛利[拡大]

続けて岩井の手により、俳優たちの前に“本日の台本”が配られる。岩井は作品タイトルを告げぬまま、冒頭シーンの配役を発表。舞台奥のスクリーンには、上段に台本、中段に配役、下段に岩井を含む5人の表情が映し出され、最初は神木がニュースキャスター、松が大森、大倉が鳴海、後藤が真治を担当することになった。

1幕では、ニュースキャスターがとある殺人事件について語る中、3日間行方不明になっていて保護された夫・真治を、不本意ながら病院に迎えに来た妻の鳴海、真治の不可解な様子を伝える医師の大森……という物語の“入り口”が提示される。これまでと様子が変わった真治に、鳴海が突っかかりながら問いかけるシーンでは、素なのか演技なのかわからない後藤のリアクションと、なんでもないセリフにもニュアンスを付けていく大倉の巧みさに、客席はもちろん、舞台上の松、神木、岩井からも笑いが起きる。

岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」より。神木隆之介。(c)平岩と毛利

岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」より。神木隆之介。(c)平岩と毛利[拡大]

一度目の本読みを終えて、岩井が「真治は浮気していたことをもっととぼけている感じで。鳴海はヤンキーっぽく」と演出を付けると、後藤は急に話し方がたどたどしくなり、とぼけているというより、異邦人のような具合に。岩井が「え、ちょっと待ってもらっていいですか?(笑)」と止めると、後藤は大きな身体を小さくし、ハンカチで顔中の汗を拭いた。その様子に隣りの大倉が「汗だくじゃん!」とツッコみ、会場は再び大きな笑い声に包まれた。

岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」より。左から大倉孝二、後藤剛範、大倉孝二。(c)平岩と毛利

岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」より。左から大倉孝二、後藤剛範、大倉孝二。(c)平岩と毛利[拡大]

その後も作品のタイトルが明かされぬまま、配役を変えながら進行。大倉は最初、「全然わからない……」とこぼしていたが、途中から「自分が読んでないと話がよくわかる」と表情を変えた。対して松は、振られた役をそのシーンにピタリと合ったトーンで演じるが、内容については「わからない」を繰り返し、岩井が「松さん、こういう人なんです。すごい理解してそうなのに、実はよくわかってなかったりする。なのにこの読み方ができるのはすごい!」と讃えた。また少年から六十代の男性までさまざまな役を振られた神木は、「実態がない感じで」「歯がない感じで」という岩井の演出にもバッチリ対応。特に事件の鍵を握る少年・天野役のハマり具合には、岩井も驚きの表情を見せた。

物語の後半、鳴海と真治の“愛”を巡るやり取りでは、最初は神木が鳴海、後藤が真治を演じた。神木が女性を意識した口調で読み始めると、岩井は「女性を演じず、男性同士という設置でやってみて」と神木にリクエスト。そのまま少し読んだところで、「あ、わかりました!」と何かに閃いた岩井が、配役を突如変更した。「俺、真治? 俺、真治!?」と神木は驚くが、最初の配役でどこかコメディっぽく感じられた2人のやり取りが、2度目の配役ではシリアスな愛の物語として響いた。ラストの一歩手前で岩井はシーンを止め、今度は鳴海を松、真治を大倉が演じることに。「今の良かったじゃない……」と大倉はつぶやくが、松と大倉が読み始めるや、緊迫した空気が会場に流れた。

岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」より。左から岩井秀人、神木隆之介、松たか子、大倉孝二、後藤剛範。(c)平岩と毛利

岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」より。左から岩井秀人、神木隆之介、松たか子、大倉孝二、後藤剛範。(c)平岩と毛利[拡大]

松は、柔らかさと芯の強さを持った声で鳴海の真摯な思いを語る。そんな鳴海を前に、ためらいつつも考えを変化させていく真治を、大倉は感情を抑えた声と絶妙な間で表現した。そしていよいよ真治の聴かせどころ……というところで「はい! ここまでです!」と岩井がシーンを切り、終了を告げた。「えー! えー!?」と大倉は台本を二度見し、先のページをめくる素振りを見せるが、岩井は「この企画は最後まで読まない、毎回“寸止め”なんです!」と言い、本作が前川知大の「散歩する侵略者」だったことを明かした。俳優たちは腰を上げながらホッとしたような、名残惜しそうな様子で舞台を後にし、最後に岩井が舞台を後にした。

なお来年3月には本公演がWOWOWにて放送される予定だ。詳細は今後の発表を待とう。

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岩井秀人(WARE)プロデュース「いきなり本読み! in 東京国際フォーラム」

2020年12月25日(金)※公演終了
東京都 東京国際フォーラム ホールC

進行・演出:岩井秀人
出演者:松たか子神木隆之介後藤剛範大倉孝二

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こむ @kommm

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