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水谷八重子・波乃久里子が“バッチシピッタシ”「犬神家の一族」東京へ

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左から河合雪之丞、浜中文一、波乃久里子、水谷八重子、佐藤B作、喜多村緑郎。

左から河合雪之丞、浜中文一、波乃久里子、水谷八重子、佐藤B作、喜多村緑郎。

11月新派特別公演「犬神家の一族」の東京公演が、本日11月14日に東京・新橋演舞場で開幕した。ステージナタリーでは開演前に行われた囲み取材と、初日公演の様子をレポートする。

本作は、今年2018年に130周年を迎えた劇団新派の新作公演。原作である「犬神家の一族」は、1950年から51年にかけて雑誌「キング」に掲載された横溝正史のミステリー小説。作中では、私立探偵の金田一耕助が財閥の創始者・犬神佐兵衛の遺産相続を巡る騒動に挑むさまが描かれる。脚本・演出は齋藤雅文が務め、出演者には宮川香琴役の水谷八重子、犬神松子役の波乃久里子、犬神竹子役の瀬戸摩純、犬神梅子役の河合雪之丞のほか、犬神佐清・青沼静馬の2役を演じる浜中文一、野々宮珠世役を交互出演で務める春本由香と河合宥季、金田一耕助役の喜多村緑郎、古館恭三役の田口守、橘警察署長役の佐藤B作らが名を連ねた。

緞帳が上がると、にぎやかな音楽に乗せて佐兵衛の誕生会が繰り広げられており、観客を物語の世界へと誘う。作中では新橋演舞場の間口の広さや回転盆が生かされ、舞台上は湖畔の展望台、佐兵衛の白黒写真が飾られた座敷など次々に様相を変えていく。復員服の男が屋敷内を逃げ回る場面では、ふすまの描かれた背景パネルが目まぐるしくスライドすることで、迷宮のように入り組んだ犬神家の屋敷の様子が表された。76年の映画「犬神家の一族」でポスターにも使用された、湖から脚が突き出る有名なワンシーンが舞台でどのように表現されるか、ファンは楽しみにしておこう。

物静かな香琴を穏やかに演じる八重子は、過去を振り返る独白シーンで強い憎悪をにじませて観客を惹き付け、松子役の久里子は、息子のために悪事へと手を染める母の愛を貫禄たっぷりに表現。また雪之丞は梅子の残酷さを優雅な所作や高い笑い声で表しながら、時折コミカルな仕草を交えて客席の笑いを誘う。浜中は犬神佐清と青沼静馬の2役を巧みに演じ分け、緑郎はもじゃもじゃ頭をかきむしりながら謎解きに奔走する金田一探偵を爽やかに演じた。

開演前に行われた囲み取材には、八重子、久里子、雪之丞、浜中、緑郎、佐藤が出席した。香琴役の八重子は、息子役の浜中について尋ねられると「覆面の中の目だけでちゃんと2役演じている。私と一緒の場面ではその目だけで『僕が息子ですよ』って思わされてしまいます」と演技を称賛。また本作の上演に際して「何よりうれしいのは、新派の中からこの作品が生まれたこと」と胸の内を明かし、「この『犬神家の一族』の脚色・演出をされている齋藤雅文さんは新派の一員。そんな方が新派130周年に、今までにない路線の作品をぶつけてこられた。私たちは作品の中の“駒”として綺麗に動いて、この『犬神家の一族』を後世に残していくことができればと、いつもと違う興奮と怖さを持ってやっています」と思いを語った。

大阪公演を終え、東京公演に臨むことについて久里子は「格別に怖い」と心境を述べ、「もうひとつ盛り上げて深い芝居をしようと思って、今パニック。何か聞かれてもセリフしか出てこないから、もうお聞きにならないで!(笑)」と答えて記者たちを和ませる。さらに久里子は、浜中に会った際の印象を「『あ、私この子産んだ』と思った」と振り返りながら、「息子なんですよ、もう。お母さん!ってやってくるとうれしくなっちゃう」と微笑んで浜中に視線を送り、「“新派の一族”が一丸となって燃えていますので、1人でも多くの方に観ていただけたら」とメッセージを送った。

「古典ではないこういうお芝居で、女形としての存在感が出せたら」と意気込むのは、梅子役の雪之丞。開幕に向けては、「メジャーな作品を舞台にして、お客様にどう受け入れていただけるか最初はすごく不安でしたが、大阪公演ではたくさんのお客様に喜んでいただけました。そのときの気持ちを持って、東京公演も大いに盛り上げられればいいなと思います」と期待を込めつつ意気込みを語った。

緑郎は新派130周年の締めくくりの作品が「犬神家の一族」になったことについて、「八重子さんや久里子さん、新派の座員には横溝正史や江戸川乱歩の作品は絶対にお似合いだと思っていましたが、本当に“バッチシピッタシ”はまっています」と所感を語る。続けて、「『映画や原作より面白いものを』という合言葉でスタートして、なんとか実現できたのではないかと思っています。深い感動をお届けできると思うので、劇場に来ていただけたらうれしい」と観客にメッセージを送った。

浜中がリポーターにコメントを求められると、隣に立つ久里子が浜中に耳打ちをする。これを受けた浜中は「僕がしゃべろうとするといつも久里子さんが横からささやいてきて、話そうと思っていたことがどこかへ行っちゃう……そんな感じの新派です!(笑)」と話して報道陣の笑いを誘い、「皆さん温かく受け入れてくださっている」と座組の印象を語った。また佐清と静馬の2役が大変だと言う浜中に、雪之丞が「私は(浜中の役柄を)『この野郎』と思ってなくちゃいけないんですが、泣いちゃう」とコメントすると、久里子も「私なんか鼻水が出ちゃって……」と続け、会場を大きな笑いで包む。最後に浜中は「すごい公演に出させていただいている。いろんなドラマがある作品なので、ぜひご来場ください」と呼びかけた。

さらにこれまでにも新派の作品に出演している佐藤が「新派は居心地がいいですよ、悪いなんて言えるわけない!(笑)」と冗談を飛ばすと、久里子は大笑いしながら佐藤の腕をひねり上げるふりをし、座組の仲むつまじさをうかがわせる。佐藤はその後改めて「映画に負けない舞台になっていますし、改めて『こういう話だったんだ』と感動できると思います。僕は映画で警察署長役だった加藤武さんが大好きですが、加藤さんに負けないように人生最後の勝負だと思って(笑)がんばりたい」と力強く抱負を述べた。

上演時間は1幕が1時間10分。途中休憩35分を挟み、2幕は1時間20分となっている。公演は11月25日まで。

新派130年 11月新派特別公演「犬神家の一族」

2018年11月1日(木)~10日(土)※公演終了
大阪府 大阪松竹座

2018年11月14日(水)~25日(日)
東京都 新橋演舞場

原作:横溝正史(「犬神家の一族」角川文庫)
脚色・演出:齋藤雅文

キャスト

宮川香琴:水谷八重子
犬神松子:波乃久里子
犬神竹子:瀬戸摩純
犬神梅子:河合雪之丞

犬神佐清・青沼静馬:浜中文一
野々宮珠世:春本由香 / 河合宥季(交互出演)

金田一耕助:喜多村緑郎
古館恭三:田口守
橘警察署長:佐藤B作
ほか

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