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曽我部恵一のメロディが切なく響く、ロロ三浦直之「父母姉僕弟君」開幕

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キティエンターテインメント・プレゼンツ「父母姉僕弟君」ゲネプロより。(Photo:yuki kumagai)

キティエンターテインメント・プレゼンツ「父母姉僕弟君」ゲネプロより。(Photo:yuki kumagai)

ロロ三浦直之の脚本・演出作「父母姉僕弟君」が昨日11月2日に開幕。それに先がけてゲネプロが行われた。

「父母姉僕弟君」はロロが、2012年に上演した作品。妻を亡くした夫が2人の出会いの場所を目指し、旅するさまが描かれる。2012年度佐藤佐吉賞で優秀作品賞をはじめ、島田桃子が最優秀主演女優賞、亀島一徳が優秀主演男優賞など、数々の賞を受賞。再演となる本作では、音楽をサニーデイ・サービス曽我部恵一が担当。衣装を伊賀大介が手掛ける。

3面の壁とシンプルな椅子が並べられた空間で、物語はスタート。亀島演じる明夫・ザ・キッドと島田演じる雨天球は仲睦まじい若夫婦で、キッドの故郷をドライブしている。話の流れから、天球は“自分が死んだ後”の希望を夫に語り始める。私が死んだらすぐに新しい奥さんをもらってほしい、でも私を忘れないでほしい……。

そう言い残して死んでしまった妻を乗せたまま、キッドはある目的地を目指す。その道中で、仙人掌(望月綾乃)やその父ダーティ・ダンディ・ダディーマン(松本亮)、漫才を繰り広げる森永重樹(篠崎大悟)と雨陸生(緒方壮哉)、奇妙な親子、エノモトキハチ(田中佑弥)と笠原園枝(森本華)と電源(多賀麻美)、そして全身で猫を“飼っている”キャット・バ・バー(北村恵)に出会い、彼らと一緒に旅を続けるのだった。

記憶をテーマにしたロードムービー的な世界観は、前作「BGM」と通じるが、5年前に書かれた作品である本作は、セリフがより熱っぽくストレートで、それゆえに真摯に響く。また時間の経過と共に薄らいでいく記憶、上塗りされる感情を、なんとかそのままの形で留めようともがくキッドの葛藤を、亀島は内面からにじみ出るような演技で好演。そんなキッドに寄り添いながらも、決して同じ時空間に立つことができない天球の痛みを、島田は愛くるしさを交えつつも切なく表現した。

さらにキッドと天球、2人のラブストーリーを、曽我部のオリジナル5曲ほか数曲が、大きく温かく包み込む。2人がかつて見たかもしれない風景や感じたかもしれない思いが、曲や歌詞から立ち上がり、作品に広がりを与えた。特にラストで全員が合奏&合唱する「父母姉僕弟君」は、作品を象徴する名曲となっている。

上演に向けたインタビューの中で三浦は、故郷の宮城県女川が震災による津波ですべて流された光景が、初演時の脳裏にあったと語り、「その時に、記憶は自分の内側じゃなくて外側にあると気付いたんです。そのことを最初に扱ったのが『父母姉僕弟君』でした。僕自身忘れていたんですが、最初のシーンは女川を歩いていたときに思いついたものなんですよ」と語っている。キッドがたどり着く目的地はどこなのか、そこにどんな光景が広がっているのか、ぜひ劇場で目撃してみては。上演時間約130分。公演は11月12日まで、東京・シアターサンモールにて。

キティエンターテインメント・プレゼンツ「父母姉僕弟君」

2017年11月2日(木)~12日(日)
東京都 シアターサンモール

脚本・演出:三浦直之
音楽:曽我部恵一
衣装:伊賀大介
出演:亀島一徳篠崎大悟島田桃子望月綾乃森本華緒方壮哉北村恵多賀麻美田中佑弥松本亮

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