これは、史上最年少でパリ・オペラ座の芸術監督に就任した振付師
オペラ座の芸術監督は、バレエ団のレパートリーや年間プログラムの企画、試験による昇進でないエトワールダンサーの任命権などを持つ重要なポスト。岡見は「オペラ座に結びつきの強い人物や、高名なエトワールが引退して職に就くことが多い中、ミルピエのようなアメリカでキャリアを積んだ、外部の人間が抜擢されるのは異例のこと。彼が学んできたアメリカ流バレエの考え方がもたらす“革新”を期待されたのでは?」と分析する。
「もしミルピエのような人物が監督になったら?」という質問に、上野は「踊り手にとってはありがたいかも。作品の中でとにかくミルピエはダンサーに対して愛情深い人物。少しでも調子の悪いダンサーがいれば体調を気づかったり、ダンサーのために床を張り替えたり……」と心を寄せる。
ミルピエが階級にとらわれずに見出した若手ダンサーたちの名演も光る本作。オススメのダンサーに話題が及ぶと、岡見はすかさず「元々体操をやっていたという男性的な魅力が満載のユーゴ・マルシャンと、彼のライバルとされるジェルマン・ルーヴェ。女性だと、レオノール・ボラックが繊細でロマンチックな雰囲気と、コンテンポラリーもスタイリッシュに踊りこなすエッジさが同居していて素晴らしい!」とコメント。
一方の上野は、迷いながらも「オペラ座初の黒人ハーフダンサー、レティツィア・ガローニが印象的。恵まれた資質を持っていてもこれまでのオペラ座では前に立てなかったかもしれない彼女が、ミルピエによって『ラ・フィユ・マル・ガルデ』の主役に抜擢され、エレガントに踊りきるドラマティックさに感動しました」と語る。さらに「誰と組みたいかという目線で見ると、背が高くて力強いユーゴ・マルシャン!」と続き、会場を沸かせた。
イベントの最後に、上野は「バレエの世界はとても華やかで美しくて素敵だけれど、その裏でみんなダンサーたちは苦悩し、努力し、汗みどろになって舞台を作り上げていることがわかる作品。彼らの新しい作品に対する希望や不安の感情が入り乱れ大きなドラマになっています」とメッセージ。岡見は「フランスの伝統とアメリカの新しい文化の比較が面白い作品。保守的なヨーロッパ的な考え方に対し、アメリカ流の効率的なダンスや多様性、個性をもたらしたミルピエとの闘いの記録を楽しんでいただきたい」と述べ、トークイベントを締めくくった。
映画「ミルピエ ~パリ・オペラ座に挑んだ男~」は、12月23日より東京のBunkamura ル・シネマほか全国で順次公開される。
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- 映画『ミルピエ』公式サイト|2016年12月23日(金・祝)公開
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