来年2月、中村勘九郎の長男・七緒八と次男・哲之「門出二人桃太郎」で初舞台

中村勘九郎の5歳の長男・波野七緒八と2歳の次男・波野哲之が、2017年2月の「二月大歌舞伎」での「門出二人桃太郎」で初舞台を踏むことが明らかになった。

「門出二人桃太郎」は、七緒八と哲之の祖父である故・十八代目中村勘三郎と、勘九郎と中村七之助の兄弟が初舞台を踏んだ、中村屋にとってゆかりの深い演目。この舞台で、七緒八は三代目中村勘太郎を、哲之は二代目中村長三郎をそろって襲名する。その記者発表会が本日3月7日に行われ、勘九郎、七之助、七緒八、哲之が登壇した。

勘九郎は息子たちの初舞台について「父が亡くなってからも歌舞伎座で初舞台ができることを本当にうれしく思っています。これも父はじめ祖父の先祖、中村屋を手伝っていてくれた、そして現在も手伝ってくれている方たちのおかげです。2人が稽古を重ねて、これからいい初舞台を迎えられようがんばりたいです」とコメント。七之助は「今の2人の様子を見ていると、僕らの初舞台のときの記者会見のときより静かで（笑）」と自身のことを振り返りながら「あとはいい舞台をお見せするだけだなと思っています」と兄弟を気遣う。続けて、七緒八と哲之がそれぞれマイクを持ち、「なみのなおやです」「なみののりゆきです」とかわいらしい声で自己紹介した。

記者が勘九郎に、2人の普段の様子について尋ねると、勘九郎は「性格が全く違います。ですので、毎日すごく楽しいです。七緒八は比較的大人しい方で、哲之は……外面がいいので今は静かですけど家では大変です」と苦笑い。亡父・勘三郎の面影を感じることは、という質問には「うちの父親は片手をよくポケットに入れていたんですが、その立ち姿とか、あとソファでの寝方が父の寝方にそっくりですね（笑）」と答えた。

また七緒八と哲之が襲名する勘太郎、長三郎という名前について勘九郎は「我々が初舞台を踏んだときも父たちがとても悩んだのだろうと思います。中村屋はもともと役者の名前が少ない家なので、うちにある古い名前の資料から考えました。この2人が産まれたときに、初舞台は『（門出二人）桃太郎』で、と思っていましたが、こうして叶ってうれしいです」と感慨深げに語る。

さらに勘九郎と七之助に、自身の初舞台の記憶があるかという質問がなされると、勘九郎は「稽古中、舞台稽古までは危ないからと刀を持たせてもらえなかったんですが、やっと持っていいと言われたのがものすごくうれしかったですね。あとは、昼夜公演の合間にホテルで七之助と遊んでいたことくらいでしょうか」、七之助は「何も覚えてないですね……照明が明るかったことくらい。なのでこいつ（哲之）もそうなんだろうなあ。と思います」と、隣に座る哲之の頭に手を乗せた。

「勘三郎は七緒八と哲之の初舞台について、どう発言したと思いますか」という質問には、「何よりも喜んでくれたと思います」と勘九郎。「やはり孫パワーは強いもので、七緒八にも哲之にも父はデレデレでしたし、父自身も『（門出二人）桃太郎』で初舞台を踏み、三代で『（門出二人）桃太郎』で初舞台を踏めることを喜んでくれたと思います。父親の口癖は常に『いい役者になるように』だったので、この2人にもそう言うんじゃないかな」と2人の息子に目をやりながら感慨深げに語った。さらに息子2人と共演することについて勘九郎夫婦はどう感じているかという質問には「本当に大変で……この会見のことも何も覚えてないんじゃないかな。脇汗すごくかいています！」と父親らしい顔を覗かせ、「彼女も同じ気持ちだと思います」と妻についてもコメントした。

七緒八・哲之兄弟は普段「芝居ごっこはしょっちゅう」だそうで、「今は“橋”にハマっていまして、一本橋をかけてそこの上で立廻りするのがブームです。右側に落ちると海なんだよね？ サメがいて。左にはお坊さんがいて、落ちると叩かれるっていう。不思議なお芝居をしています」と勘九郎。その間、哲之が「ふーんふーん」ともう1本のマイクに息を吹き込んで、七之助があわててマイクを受け取りながら「すみません、次男なもので」と発言し会場の笑いを誘う。

兄弟のどちらが立ち役でどちらが女方でという思いはありますか、という質問に対しては、勘九郎が「僕らも兄弟でいろんな役をやらせていただきまして、僕が高校を卒業するくらいまでは、私は女方、七之助が立ち役をやっていました。でも今は逆ですし、彼らもこれからどうなるかわからないですね。ただ、今は2人とも刀が大好きなので立ち役というより“立廻り”に興味があるようです（笑）」と答えた。

最後に記者から七緒八と哲之に「初舞台楽しみですか」という質問が投げかけられると「うん！」とそれぞれに元気のいい返事が。「セリフは大きな声で言えそうですか？」という質問にも七緒八が「うん、いえます！」と力強く答え、会場は笑いに包まれた。

さらに「門出二人桃太郎」の上演を記念して、勘三郎と親交のあった永島敏行がプロジェクトリーダーとなり、数種類の稲を使って「門出二人桃太郎」と「連獅子」を表現した「田んぼアート」も作成される。開催場所は、勘三郎が好きだった長野県松本市の、大字島内上平瀬地区。5月29日に田植えし、9月下旬に稲刈りを予定している。収穫された米と、その米で作られた酒は、数量限定で販売される予定だ。

※初出時、タイトルと本文の一部に間違いがありました。訂正してお詫びいたします。