次々と新たな作り手が頭角を表す演劇界。数ある劇団の中から、ジャケ買いならぬ“劇団名買い”で観劇に行った経験はないだろうか。チラシやニュース、SNSなどで目にする劇団名は、シンプルなものから不思議な音の響きを持つもの、「どういう意味?」と目を引くものまでさまざまだが、それには名づけ主の希望や願い、さらには演劇的活動戦略が込められているはず。このコラムでは多彩な個性を放つ若手劇団たちの、劇団名の由来に迫る。劇団名が持つ秘密と共に、未来の演劇界を担う彼らの活動の軸を紐解いていく。
25番目に登場するのは、日常のすぐ隣に潜む不可思議な世界を、言葉と身体、映像によって描き出す
妖精大図鑑(ヨウセイダイズカン)
Q. 劇団名の由来、劇団名に込めた思いを教えてください。
特に由来はなく、なんとなく響きが良かったからこの名前になりました。そもそも、決めたときにはこの名前で継続した活動をするとは想定していませんでした。というのも、ダンスコンペに提出するために団体名が必要だったため、その場の思いつきで名前を決めたのです。
大学からの帰り道。信号待ちの時間に「妖精大図鑑ってのは?」と誰かが言い、「あ、いいんじゃない? じゃあそれで提出しよう」となんとなく皆で同意しました。誰が言い出したのかは覚えていません。あれは信号の妖精だったのでしょうか。略して「妖精さん」と呼ばれるところがお気に入りです。
Q. 劇団の一番の特徴は?
妖精大図鑑は現在、脚本・美術・時々照明をいじる
ダンスやコント、歌と映像、そしてその他諸々さまざまな要素を含んだシーンが連続します。振付の永野百合子は、クラシックバレエ、日舞、ジャズ等の要素を取り入れた振付をしますし、飯塚はダジャレと擬人化が大好き。鈴木は映画が好きで、パロディやオマージュも多く登場します。目まぐるしく展開されるごった混ぜの世界は、とてもバカバカしい。けれど最後にはちょっぴりセンチメンタルになったりもする。これを、我々はエキセントリックセンチメンタルと呼んでいます。
Q. 今後の目標や観客に向けたメッセージをお願いします。
人間の皆様こんにちは。
妖精大図鑑と申します。
一回観たら妖精大図鑑がなんなのかわかったけれど、それを人にうまく説明できない。と言われ続けて早10年。とりあえず一回観ていただければ、なんとなくわかるはずです。ほぼ最初から出演してくれている客演キャストも「自分が何をやらされているのか、たまにわからなくなる」と言っていたので、わからなくても何も問題ございません。一度、騙されに来ていただけますと幸いです。全力で愉快な幻覚をお見せします。劇場にて妖精がお待ちしております。
プロフィール
2012年に多摩美術大学映像演劇学科の同期が集い結成。メンバーは 振付の永野百合子、脚本の飯塚うなぎ、音響の鈴木はじめの3人で、ダンスや歌、コントなどさまざまな表現方法を駆使しながら言葉と身体、映像を織り交ぜた作品世界を立ち上げる。近年の主な舞台に「YOKOHAMA Ammonite Night」「ASAKUSA THUNDER GATE」「会議は踊る」など。10月13日から15日まで、新作「無関係のジョバンニ」を上演する。
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熊井玲 @rei720
この数年追いかけている団体の1つ、妖精大図鑑。気になっていた団体名の由来が知れて個人的にも嬉しい💕 https://t.co/SLwY3g2hpw