「VOCAROCK PARTY！」でボカロファン熱狂　みきとP、てにをは、伊根ら一夜限りの“生”競演

2025年10月17日 19:02 38 6 音楽ナタリー編集部

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10月12日に東京・大手町三井ホールにてライブイベント「VOCAROCK PARTY！」が開催された。

みきとP（撮影：星野耕作）

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「VOCAROCK PARTY！」はAdo、平手友梨奈、shallmらが所属する芸能事務所クラウドナインにゆかりのあるボカロPたちによる一夜限りのライブイベント。伊根、小ノ寺空 / Δ、キツネリ、てにをは、みきとPというVocaloidシーンを彩ってきたボカロPたちがライブを繰り広げた。

キツネリ

開演時刻を迎え、期待と緊張が入り混じった独特の空気が客席を包む中、ライブの口火を切ったのは、グミ山とN-Roachによる2人組ボカロPユニット・キツネリ。ステージにはバンドメンバーとグミ山の姿があったが、N-Roachの姿は見当たらない。観客が首をかしげていると、1曲目「HYPERMARKET」のイントロとともに、客席の一角からN-Roachが歌いながら立ち上がって登場。このサプライズに会場は驚きと歓声に包まれた。

先日リリースされたアルバム「First Contact」収録の新曲「1KWYL」では、初披露ながらN-Roachがコール＆レスポンスを要求し、観客もそれに応えようと会場に一体感が生まれる。「一瞬で終わるので最後まで暴れましょう！」という言葉を合図に演奏の熱量はさらに加速。「変身」ではN-Roachがキャラクターの頭だけを被った姿に“変身”して会場内を歩き回り、ラストの「▷コンティニュー」では手拍子が巻き起こるなど、突き抜けたユーモアと型破りなパフォーマンスで会場を盛り上げた。

キツネリ（撮影：星野耕作）［拡大］

伊根

2番手として登場したのは、ネットを中心に活動してきた伊根。今回が初のライブステージ出演とは思えないほど、堂々としたパフォーマンスで観客を魅了した。これまで楽曲や映像を通じて発信してきた伊根の世界が、生演奏と歌声によって立体的に描かれていく。伊根は「やっとお会いできましたね」と笑顔で語りかけ、「僕の曲を聴いてくれる方が本当にいるんだね」と真摯な思いを伝えると、客席からは温かな拍手と歓声が送られた。

バンドが織りなす緻密なリズムに、伊根のギターと歌声が重なる「ナイトフォール」や「赫赫」のセルフカバーでオーディエンスを喜ばせたのち、ラストに披露されたのは「文字化ヶ」。ギターを激しくかき鳴らしながら、感情をストレートに表現する伊根の姿に、観客も自然とハンズアップし、会場は一体感に包まれた。演奏を終えた伊根は、安堵と喜びの表情を浮かべながらステージをあとにした。

伊根（撮影：星野耕作）［拡大］

小ノ寺空 / Δ

今年5月、ボカロP・Δとしての活動から、シンガーソングライター小ノ寺空としての歩みを正式に発表した彼女にとって、この日が記念すべき初のライブステージ。丁寧に言葉を紡ぐ繊細な歌声と映像演出、そしてバンドのパフォーマンスが重なり、静謐な緊張感が会場全体を包み込んでいく。

「青色が怖くなったんだ」「誰のための足か」では、ハウス調のビートとリリカルなメロディが絡み合い、観客の身体が自然と揺れる。「この曲が歌を始めるきっかけでした」という言葉から「藍の反証」が披露されると、変則的なリズムと緻密なメロディライン、それをしなやかに乗りこなす彼女の歌声に口ずさむ姿も多く見られた。Δ名義のセルフカバーに加え、小ノ寺空としてのオリジナル楽曲で構成されたステージに惜しみない拍手が送られた。

小ノ寺空 / Δ（撮影：星野耕作）［拡大］

てにをは

代表曲「ヴィラン」で幕を開けた、てにをはのステージ。大きな歓声を浴びながら登場した彼は、ソウルフルな歌声で会場全体を揺らす。オーディエンスは腕を振り上げたり、リズムに合わせてステップを刻んだりと、思い思いのスタイルでグルーヴを楽しんだ。続く「ザムザ」では、よりパワフルなボーカルを響かせ、サビでは彼ならではのフロウが炸裂。生歌唱とバンド演奏が一体となり、会場のボルテージは一気に高まっていく。

てにをはは「深海の海老が浜辺に打ち上げられたような心境です」と独特な比喩で緊張を明かし、観客の笑いを誘った。「コアな方はご存知かもしれません」という紹介から1stアルバム「女学生探偵ロック」収録の「カタトキモ」へ。最後の「古書屋敷殺人事件」では、てにをはの動きに合わせて観客が左右に手を振り、一体感のあるクラップが響いた。

てにをは（撮影：星野耕作）［拡大］

みきとP

イベントのトリを飾ったのは、みきとP。ギターを手に登場した彼は、さわやかでエッジィなサウンドとともに「Who are」でライブをスタートさせる。続く「バレリーコ」では、みきとPのギターに乗せて響く有名なサビのフレーズに、観客のテンションが急上昇。自然と口ずさむ声があちこちからこぼれ、会場は熱気に包まれていく。アコースティックギターに持ち替えて披露されたのは「少女レイ」。ボカロの歌声と自身の生歌が交差する特別なアレンジに客席からは感嘆の声が上がり、そのパフォーマンスに多くの観客が見入った。

イントロの時点でクラップが巻き起こった「ロキ」では場内のボルテージが最高潮に。軽快なギターソロで卓越したテクニックと遊び心を見せつけ、観る者すべてを魅了した。アンコールの手拍子に応えて、再びステージに登場したみきとPとバンドメンバーは「小夜子」を披露。そして「懐かしい曲を披露したかった」という言葉とともに「クノイチでも恋がしたい」を演奏し、イベントのフィナーレを華やかに締めくくった。