「Quruli Voyage ~くるりと弦楽四重奏~」はくるりにとって約2年ぶりのホールツアー。1月の埼玉公演を皮切りに9公演が実施された。このツアーでくるりは弦楽四重奏を迎えてライブを行い、「Quruli Voyage」というタイトルの通り、世界各地を旅するかのようにさまざまな国で制作 / レコーディングした楽曲を中心に披露した。
水先案内人のくるりでございます
バンドメンバーの松本大樹(G)、野崎泰弘(Key, Cho)、石若駿(Dr, Perc, Cho)、そしてカルテット奏者の須原杏(1st Violin)、町田匡(2nd Violin)、秀岡悠汰(Viola)、多井智紀(Cello)に続いて、くるりの岸田繁(Vo, G)と佐藤征史(B)が登場すると、「ハイリゲンシュタッド」が優美に奏でられ、ライブが幕を開ける。岸田は「『Quruli Voyage』へようこそ。水先案内人のくるりでございます。今宵はくるりの音楽で皆さまを世界旅行へお連れいたします」と語り、ナポリ民謡「サンタルチア」を歌唱。するとステージが星空に包まれたかのように、黒々とした背景に無数の小さな光が灯り出す。続けてくるりはオーストリアのウィーンでレコーディングされたアルバム「ワルツを踊れ Tanz Walzer」より「ブルー・ラヴァー・ブルー」、そして「アナーキー・イン・ザ・ムジーク」を演奏。和やかな空気から一転、緊迫感に満ちた激しいパフォーマンスが届けられ、カルテットを交えたこの編成の持つダイナミズムがありありと提示された。
その後彼らがオーディエンスを連れて行ったのは、オーストリアから北西へ進んだところに位置するスコットランド。「さよなら春の日」が雄大に奏でられ、アコーディオンの華麗な音色に岸田の朗々とした歌声が乗る。岸田の「よくよく振り返ってみると、くるりは時の流れに関する曲が多いんですよ。ここからはそういう曲を中心にやっていきたいと思います」という語りに続け、彼らは「Remember me」を演奏。夕暮れを思わせる橙色の照明に包まれたステージから、郷愁的なサウンドを届け、「京都の大学生」「Time」へと続けた。
ああ、音楽を続けよう
ライブ中盤、キラーチューン「everybody feels the same」が披露されると、世界各国のさまざまな地名を列挙するパートにてハンドクラップが巻き起こる。「飴色の部屋」ではタイトル通りセットが飴色に染め上げられるなど、音だけでなく視覚的な演出でもオーディエンスを魅了し続けるくるりたち。この公演のために須原がスコアを書いたという「心のなかの悪魔」では、繰り返される平熱のメロディにストリングスの華麗なサウンドが乗り、原曲とは異なる情感が醸し出された。その後くるりはイタリアでレコーディングされた最新曲「La Palummella」を披露。会場にたちまち異国情緒が満ちていき、オーディエンスはその非日常的な世界に浸り続けた。
演奏が終わると、アラベスク模様の布が敷かれた台がおもむろに運び込まれ、トルコの楽器・サズを構えた松本がそこに鎮座する。何やらものものしい空気が流れる中、彼らが披露したのは「Liberty&Gravity」。奇々怪々ながらもポップなメロディとサウンドがめまぐるしく展開され、極東のホール会場がどこでもない辺境の地へと化す。「ブレーメン」で伸びやかなメロディを聴かせ、アウトロのアグレッシブな演奏が終わるやいなや拍手喝采を浴びたくるり。岸田の「弦楽のアンサンブルがすごく好きなんですけど、私の師匠的な人がいて、その人に最初にこれを書いてもらったときに『ああ、音楽を続けよう』と思った曲を最後にやろうと思います」という言葉に続けて「JUBILEE」を披露し、開放的な空気で会場を包み込んだ。
軟着陸しながら皆さんを
アンコールを求める拍手に応えて、くるりたちは再びステージに登場。岸田が「贅沢な旅に出て参りましたけど、いかがでしたでしょうか? 軟着陸しながら皆さんをお家までお届けしたいと思います」と語り、彼らは新曲「瀬戸の内」を演奏。繊細なサウンドをホール中に染み入らせるように優しく奏でた。2時間半にわたる旅ももうすぐ終わり。どこか感傷的な空気が会場に流れる中、佐藤が「東京」「ロックンロール」「ハイウェイ」などに乗せてグッズを紹介するというひと幕を挟みつつ、彼らは「ふたつの世界」を軽快にパフォーマンスする。そして最後はくるり屈指のバラードナンバー「奇跡」を演奏。長旅の疲れを癒すように、観客をストリングスの優美な音に浸らせ、くるりは水先案内人としての役目を終える。世界各国を飛び回った観客は、ステージに盛大な拍手を送り、旅路からそれぞれの帰路へとついた。
なお、本公演内でくるりは秋頃にアルバムのリリースを予定していることを発表した。詳細のアナウンスを楽しみに待とう。
セットリスト
「ホールツアー2025 Quruli Voyage ~くるりと弦楽四重奏~」2025年3月1日 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
OP. ハイリゲンシュタッド
01. サンタルチア
02. ブルー・ラヴァー・ブルー
03. アナーキー・イン・ザ・ムジーク
04. さよなら春の日
05. アマデウス
06. GUILTY
07. Remember me
08. 京都の大学生
09. Time
10. スロウダンス
11. 恋人の時計
12. everybody feels the same
13. taurus
14. 飴色の部屋
15. キャメル
16. 心のなかの悪魔
17. La Palummella
18. Liberty&Gravity
19. ブレーメン
20. JUBILEE
<アンコール>
21. 瀬戸の内
22. ふたつの世界
23. 奇跡
くるり Official @qrlinfo
【ライブレポート】ホールツアー2025 #QuruliVoyage 〜くるりと弦楽四重奏〜 「くるりと弦楽四重奏が誘った2時間半の世界旅行」
▼2025年3月1日(土) 東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂) https://t.co/tZMledx4q9 https://t.co/cnn2PFgvKW