SUPER BEAVERが昨年9月より全国を回り、ホール12公演、アリーナ9公演の計21公演を行ったこのツアー。ツアーファイナルのさいたまスーパーアリーナ公演2DAYSは両日ソールドアウトし、2日間合わせて約4万人のオーディエンスが集った。
4万人の人生がクロスオーバーする場所
会場が暗転すると、スポットライトに照らし出された上杉研太(B)がパワフルにベースを鳴らし始める。藤原“35才”広明(Dr)、柳沢亮太(G)の順にスポットライトが当たり、オープニングを彩る3人のエネルギッシュなプレイを経て、ステージ左側から渋谷龍太(Vo)が手を叩きながら登場した。4人は激しいレーザーライトが飛び交う中「グラデーション」でライブを開始し、オーディエンスの心に向かってまっすぐに歌を届ける。「ひたむき」では約2万人が弾けるような笑顔とともに一斉に両手を上げる壮観な光景が広がり、「スペシャル」ではライブ序盤から盛大なシンガロングが響き渡った。
渋谷は「この2日間だけでも、およそ4万人ですからね。すごいなと思います」と会場を見渡し、「俺たちは『でかい場所で音楽がしたい』ということを目標に据えたことは1回もないです」と断言。そして「じゃあなんであなたたちはでかいところで音楽をやるのかと言われたら、理由は明白。誰1人として被ってない人生が、ここ、さいたまスーパーアリーナにて、SUPER BEAVERという音楽、その1点を真ん中においてこれだけクロスオーバーする現場。これはバンドマンとしてはなかなかロマンチックだと思うんだよね!」と目を輝かせた。「決心」では渋谷がステージの端から端まで歩き、「見えてます。安心してね」とスタンドの最上階の観客に声をかける。決して誰も置いて行くことはなく、彼らは2万人全員を中心にライブを展開し、「東京流星群」「名前を呼ぶよ」といった楽曲を通して心をつなげ合った。
地続きですべてがつながってる
温かなクラップが会場に響き渡った「値千金」を経て、渋谷は自分の音楽を“あなた”に届けられる喜びを語り、「自分が思ってる幸せが、俺にとってはこういう形。でも、あなたにとっての幸せはまた違う形だよね、きっと。自分が抱いたその気持ちというのは、誰がなんと言おうと自分だけの気持ちです。『それ、普通じゃん。そんなのどこか幸せなの?』って人は言うかもしれないけど、あなたが感じてるその幸せは、あなただけのものだからね」と優しく話す。さらに「語弊のある言い方かもしれないけど、俺たちは完全に他人です。心の底までわかることは絶対不可能。でも、そこであきらめるのは悲しいこと。わからない部分でその人が何をしたら楽しんでくれるのかなとか、何を考えてるのかなとか、何がうれしいのかなとか、もしかしたらこれに幸せを感じてるのかなと思う気持ちが優しさだと思う」と話を続け、「わからないからこそ必死になります。どうか届いてほしいって、どうか届けてほしいって、そんなことを強く強く思います」とまっすぐに述べた。そんな渋谷の言葉のあとに披露されたのは「幸せのために生きているだけさ」。1人ひとりの幸せを大切に思う言葉が、メロディアスなアンサンブルに乗せてじっくりと届けられた。
壮大なバラードナンバー「儚くない」が演奏されたあと、客席から上がる「カッコいいよ!」という声に渋谷は「だろー?」と笑顔。すぐさま「少しでも調子に乗ったらバンドは終わる!」と渋谷が背筋を伸ばすと、「でも、今の『だろー?』はよかったぜ!」と柳沢が誇らしげに称えた。柳沢は「SUPER BEAVERの活動ってずーっと地続きですべてがつながってるんだけど、より一層すごく地続きだなと感じられたツアーだった」と昨年9月に始まったツアーを振り返り、その途中で2月にリリースした最新アルバム「音楽」に言及。「物理的に会いに行けなかった時期が全員にあって、それがあったからこそより近くに行けた2023年だった。だからこそ生まれた気持ちが楽曲になって、『音楽』というアルバムになったなと思っています。本当にいろんな気持ちがつながってここまで来れたなと思ってます」と感慨深げに語った。
大事な人生の道のりの中で
ライブ後半を迎え、バンドは勢いを加速させていくように「閃光」「美しい日」をすさまじいコールやクラップを浴びながら演奏。「予感」ではセンターステージで柳沢と上杉が向かい合って熱いプレイを繰り広げた。音玉の爆音で始まった「切望」では、「僕は笑顔の 渦を作りたい」「気持ちの往来」というフレーズの通り、2万人が生き生きとした表情で手を高く掲げて歌う。そんな温かな空気の中、「アイラヴユー」では4人とオーディエンスが愛を叫び、ありったけの気持ちを強くぶつけ合った。
「それぞれがそれぞれのがんばり方をしてきて、ここにたどり着いてるんだと思うと、すごくグッときます。必死に生きて、必死に立ち向かって、その道中、俺たちの音楽と出会って、今日一緒に奏でようかなと思って、自分の大事な人生の道のりの中に、俺たちの音楽があなたの真ん中で鳴ってる。これ以上うれしいことはないです。改めてありがとうございます」と感謝の思いを伝えた渋谷。その言葉を受けて大きな拍手が沸き起こると、「この拍手は“自分”に向けたもので合ってほしい」と彼は告げた。渋谷は「あなたのおかげでできたんだよ、今日が。俺は4人が『完璧な演奏ができました』『しっかり最後まで歌えました』、そんなことがいいライブだなんてまったく思わない。俺たちの投げた気持ちがあなたにズバッと届いてる実感と、届いた先でそのまま投げ返すわけでもなく、自分の気持ちとして、俺たちに投げ返してくれるその実感を覚えて、初めていいライブだって思える。だから今日は、いいライブです!」と言い切る。そして「これから俺たちが進んでいく先に、あなたがいる。あなたが進んでいく先にも、SUPER BEAVERがいる。そんなことをすごくうれしいなと純粋な気持ちで思えた1日。また作ろうね。また一緒に音楽しようね」と言葉を贈った。
「小さな革命」では「当事者であれ」というバンドのアティチュードとも言える言葉が力強く繰り返される。その言葉に共鳴するようにオーディエンスはまっすぐに手を突き上げた。ラストナンバーは「青い春」。銀テープが舞う美しい景色の中、2万人の盛大なシンガロングが会場に響き渡った。
信頼関係があるからこその、俺らの考え
アンコールを求める拍手と合唱に呼ばれて、4人は再びステージに登場。実はSUPER BEAVERはこのツアーを通して、「今回を最後に、アンコールをもうやめようと思っている」という話をオーディエンスにしてきた。渋谷は「今日は最後が『青い春』だったけど、最後の1曲をやる前に『アンコール絶対くるだろうな』と思っちゃって、俺たちも出る気でいるんだよね。あなたも『青い春』が終わったあと、『まだもう1曲あるんだろうな』と思ったでしょ?」と話を切り出し、「俺たちの間にはもうなくてもいいんじゃないかな、なくても成り立つんじゃないかなって思ったの。もちろんライブにはエンタテインメントの要素が必要で、ショーである瞬間が垣間見える瞬間があると思うのね。でも、俺たちがやりたいのはあくまでもライブで、あなたがいるからこそ成り立つ瞬間をどうしても作りたいと思っています。だからすごくショー的であるこのアンコールの部分をなくして、本来アンコールでやるはずだった1曲を本編に入れちゃえば同じことだと思ったんです」と説明。そして「何が言いたいかというと、本編で全部出すので、あなたも本編で全部出してほしい。で、ライブがズバって終わって解散! 信頼関係があるからこその、俺らの考えだと思って受け取ってほしい」と伝えると、会場には大きな拍手が鳴り響いた。
「今日はアンコールは謹んで、喜んで、やらせていただきます!」と渋谷は宣言し、アンコールの演奏曲をオーディエンスの選択に委ねた。彼が観客に提示したのは「証明」と「秘密」の2曲。オーディエンスは悩みながらもそれぞれの意思で楽曲を選び、歓声を通してメンバーに伝えた。歓声の大きさを元に、演奏されたのは「証明」。4人は最後までオーディエンスとともにじっくりとライブを作り上げ、半年にわたるツアーを締めくくった。
セットリスト
SUPER BEAVER「SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~ 駱駝革命21 ~」2024年3月24日 さいたまスーパーアリーナ セットリスト
01. グラデーション
02. ひたむき
03. スペシャル
04. 決心
05. 東京流星群
06. 名前を呼ぶよ
07. 値千金
08. 幸せのために生きているだけさ
09. 儚くない
10. 閃光
11. 美しい日
12. 予感
13. 切望
14. アイラヴユー
15. 小さな革命
16. 青い春
<アンコール>
17. 証明
青木カズロー @cazrowAoki
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