PassCode、日本武道館という大舞台で見せたいつもと変わらない姿

PassCodeが2月12日に東京・日本武道館で単独公演「PassCode NIPPON BUDOKAN 2022」を開催した。

およそ2年前の2020年1月、PassCodeは東京・新木場STUDIO COASTのステージ上で、近い将来に必ずや日本武道館公演を実現させることをハッカー（PassCodeファンの呼称）に向けて宣言。実際に日本武道館公演の開催が決定したことをその年の暮れに発表した彼女たちは、そこから「ROAD TO BUDOKAN」と銘打った全国ツアーを展開し、コロナ禍による活動の制限やメンバーの入れ替わりを乗り越えつつ、本番の日に向かって突き進んできた。そして大きな期待と関心が集まる中で迎えたライブ当日、会場にはグループにとっての歴史的な瞬間を目撃しようと大勢のハッカーが集結。新型コロナウイルス感染対策の公演ガイドラインに従い、徹底した感染対策が施される中で、規定最大となる5000人もの観客が来場した。

開演時刻になると、ステージ上にスモークが漂い始め、SEに合わせたオーディエンスの手拍子に迎えられながら、まずはバンドメンバーがステージへ。そしてステージ後方の巨大なスクリーンが上下に割れると、その間から黒い衣装に身を包んだメンバーが姿を現した。南菜生の「日本武道館、楽しんでいこうぜ！」という力強い煽り、昨年8月に加入した有馬えみりによる迫力のシャウトとともに、ライブはメジャーデビュー曲である「MISS UNLIMITED」で幕開け。会場内を交差するレーザーや楽曲の世界観を視覚化したVJ演出が4人のパフォーマンスを彩る中、勢いそのままにインディーズ時代の代表曲「Toxic」へとなだれ込んだ。新体制初シングルとして昨年11月に発表された「Freely」では、ステージから勢いよく火柱が噴出。オートーチューンがかかったボーカルやバンドが放つひりつくようなサウンドに合わせ、ハッカーたちは手を掲げたり、体を揺らしたりと序盤から思い思いにライブを楽しみ、会場に熱い一体感を生み出していった。

最初のMCで南が「いくら広いところでやっても、いつもとやることは変わらないと思っています」と語った通り、4人はその後も日本武道館という大舞台や、派手な演出に少しも見劣りしない堂々たるステージングを展開。ヘヴィなナンバー「Taking you out」を皮切りに、スクリーモ、メタルコアを基調としたPassCode節全開のラウドな楽曲を連発し、新体制になって半年のグループとは思えない一枚岩のパフォーマンスを繰り広げていく。途中、来場時に観客に配られたリストバンド型のライトが点灯する場面もあり、日本武道館がよりエモーショナルな空間に。ライブ中盤のMCでは場内を見渡したあと、南が「2020年1月に新木場で『武道館でライブがしたい』って言ったときから状況はすごくすごく変わってしまって、きっと、今日来ることをたくさん悩んで、選んでくれたと思ってます。来てくれて本当にありがとね」「もともとコロナ禍以前のPassCodeだったらしようと思えなかったことをたくさんできるようになってて。よかったなって、そういうふうに思えることはできないけど、だからこそできることが増えているっていうのを、今日ステージに立ってライブをやって改めてわかった気がします」と語り、大きな拍手を浴びた。

「Club Kids Never Die」「FLAVOR OF BLUE」などの新旧の楽曲を織り交ぜたブロックを経て、PassCodeは一旦ステージから退場。日本武道館公演の開催を宣言した2年前の映像で始まる、メンバーのインタビュームービーがスクリーンに映し出された。胸の内をさらけ出す4人の言葉にハッカーがじっと聞き入り、場内にセンチメンタルな空気が広がる中、ライブの再開を告げたのは南が作詞を手がけたPassCode流のバラード曲「horoscope」。しっとりとしたピアノの音色に続いて、オートーチューンを外したメンバーの生の歌声が響き渡り、ステージ上のスモークや客席で揺らめくライト、星空をイメージした映像と相まって聴く者の胸を強く打った。

さらに「Remnants of my youth」「STARRY SKY」と畳みかけた4人は、ここで自身の胸の内をそれぞれ言葉に。真剣な表情で耳を傾けるハッカーに向け、感謝の思いを丁寧に伝えていった。そして南の「こういう景色を見ちゃうとどこまでも行けるような気がします。私にはその自信があります。なので、PassCodeにどうぞ付いてきてください。よろしくお願いします」という呼びかけを経て、ライブはとうとうクライマックスへと突入。「Anything New」「Ray」では再び上下に開いたスクリーンの向こう側から10名のストリングス隊が登場し、オーディエンスを驚かせる。PassCodeにとって初の試みとなったこの演出は、本公演のハイライトとなった。

アンコールでは疾走感あふれるナンバー「ATLAS」や初期の楽曲「Seize the day!!」が披露され、会場全体のテンションがますます上昇。曲が終わると、PassCodeの物語がスタートした大阪・堺の町にある小さな所属事務所にメンバーが集まり、サウンドプロデューサーの平地孝次と一緒に談笑する映像がスクリーンに流れ、ここにたどり着くまでの道のりが簡単なものではなかったことを観る者に実感させる。最後は南の「努力は必ず報われるなんて、一度も思ったことありません。努力だけではどうにもならないこともあるし、がんばるだけではどうしようもないことがたくさんあることも知りました。でも、PassCodeを信じ続けてくれたチームがいたから、バンドがいたから、そして、あなたたちがいたから、メンバーがいたから、今日もこうしてステージに立っています。これからどれだけ大変なことがあるのかなんて全然わからないけど、いつかこの日々が最高の思い出になりますようにと願って、今日もこの歌を歌います。いつかまたこの曲を一緒にみんなで歌いましょう」という語りを合図に、ラストナンバーの「It’s you」がスタート。シンガロングが定番となっているこの曲では、事前にハッカーから募集した歌声が4人のボーカルに重ねられた。さらに昨年8月に“勇退”した今田夢菜の姿を含む過去のパフォーマンス映像が映し出され、日本武道館に集まったメンバーや観客たちを祝福するように銀テープが盛大に放たれた。

本公演の模様は3月27日にWOWOWで独占放送・配信される。また、PassCodeは5月1日に大阪・大阪城音楽堂、21日に東京・日比谷公園大音楽堂（日比谷野音）で単独公演を行う。