8月12日と13日に東京・恵比寿ザ・ガーデンホールでライブイベント「BABY Q 納涼祭」“東京場所”が開催された。
「Q」は、2019年に“CUE=素晴らしい音楽に触れる「きっかけ」に”“休=最高の休日に”という思いを込めて立ち上げられたインドアフェス。2年ぶりの開催となった今回は弾き語りメインのライブイベントとして実施され、“東京場所“には初日に
1日目
初日のトップバッターであるTENDREはステージ中央に置かれたキーボードの前に腰かけると、「Night & Day」「DOCUMENT」といったナンバーを情感たっぷりに歌い上げしっとりとした空間を生み出した。TENDREはライブ中盤に「目まぐるしい日が続く最中ですけど、今日くらいは心に涼やかな風が吹くような演奏をできたらなと思います」と語り、次曲「HOPE」で場内をさわやかなサウンドで満たした。ラストの「hanashi」では、声を上げることができない観客にハンドクラップを促し、一体感のあるライブを作り上げてステージをあとにした。
2番手の塩塚はアコースティックギターを抱えてステージに立つと、1曲目に「no.6 for yusho」をセレクト。彼女は続く「62」「繭」で、アコギの美しい音色と憂いをにじませた歌声でオーディエンスを惹き付け、繊細かつメランコリックな世界へと導いた。塩塚が「羊文学というバンドをやっていて、聴いたことのない方もいると思うんですけど、バンドの曲はやりません(笑)」と話して披露された「猿」では、ルーパーを駆使してコーラスを重ねていきドラマチックな空間を演出。最後はエフェクトをかけたボーカルで「Bowie」を歌い上げて観客を魅了した。
大きな拍手を浴びて登場した長岡は「こんばんは。よろしくお願いします」と短く挨拶すると、1曲目に「湖畔」をパフォーマンス。静かな立ち上がりから徐々に演奏が熱を帯びていく。そのまま「Lounge Lover」を軽快に届けて観客の体を揺らした。長岡はライブ終盤にブルーグラスの名曲「Drifting too far from the shore」のカバーを初披露。彼はこの選曲について、「ツアー先のホテルの部屋で流れていて、泣きそうになっちゃたから今日やってみました(笑)」と語った。そして「Talassa」「Iwai」といった人気ナンバーをプレイしてパフォーマンスを終えた。
初日のトリを飾るのは、向井秀徳アコースティック&エレクトリック。彼がギターをかき鳴らして「Matsuri Studioからやって参りました。THIS IS 向井秀徳!」とおなじみの挨拶をすると、場内は大きな拍手で包み込まれた。向井は「殺人的なジョークで死にたい あの子は泣かない」という歌い出しで始まる攻撃的なナンバー「Sentimental Girl's Violent Joke」、ラップのような歌い回しが印象的な「Crazy Days Crazy Feeling」で序盤から熱いパフォーマンを披露。その後も「鉄風 鋭くなって」「ZEGEN VS UNDERCOVER」といった人気曲を立て続けに演奏して観客を喜ばせた。ラストはライブ定番曲「はあとぶれいく」をエモーショナルにプレイ。会場に深い余韻を残して初日公演の幕を降ろした。
2日目
2日目のトップを飾ったのは、6月に初のソロアルバム「Fantasia」をリリースした安部。彼は椅子に腰かけアルバムの表題曲「ファンタジア」を歌いライブの幕を開けると、「ありがとさん」「風まかせ」「おまえも」といったソロ曲をリラックスした面持ちで披露していく。この日のステージは市川仁也(B /
Kan Sanoは「My Girl」でライブをスタート。めくるめく展開が変わるドラマチックな演奏とソウルフルなボーカルで観客を一気に引き込んだ。人生の儚さを切々と歌う「C'est La vie」、重厚なビートをフィーチャーした「Flavor」、メランコリックな雰囲気漂う「She's Gone」に続けて、彼が演奏したのはフィッシュマンズ「いかれたBaby」のカバー。しっとりとしたピアノの調べに乗せて届けられる彼の歌声に観客は静かに耳を傾けていた。ピアノ弾き語りの「ほんとは」で温かな雰囲気を作り上げたのち、Sanoはハンドマイクを手に軽やかな足取りでステージ上を移動しながら「Natsume」を歌唱。アクティブなパフォーマンスで会場を盛り上げた。
全曲ピアノの弾き語りで、この日のステージに臨んだ原田。「風色夏恋」を彼女が歌い始めると、繊細なピアノの音色とともに凛としたボーカルが静まり返った場内に響き渡る。続く「ユニコーン」の演奏が終わると客席から大きな拍手が沸き起こった。原田は「イベントタイトルの『Q』には“休”憩って意味もあるから一瞬寝ちゃうとかもアリです」と観客を和ませたのち、七尾旅人の楽曲「スロウ・スロウ・トレイン」を情感たっぷりに歌唱。忌野清志郎との共作曲「銀河」で、ポエトリーリーディングを交えつつ壮大なサウンドスケープを描き出すと、最後は映画「青い、森」の主題歌として書き下ろした新曲「青い、森、、」を披露してステージをあとにした。
ヘッドライナーの中納も原田同様、ピアノの弾き語りで全曲パフォーマンスを行った。1曲目に披露されたのは「同じ穴のムジナ」。不穏なピアノの旋律と激情的なボーカルに場内の緊張感が一気に高まる。演奏を終えた中納は一転、柔和な笑顔を浮かべると「4人のリレー、私がアンカーいただきました。楽しませていただきます」と挨拶し、「Dear My Dear」「オリオン座」といった穏やかなナンバーを続けて届けた。ステージ中盤では中納が客席からリクエストを募り、美麗なメロディのバラード「あなたを」を歌唱する一幕も。エモーショナルな「ケムニマイテ」で再び場内のテンションを引き上げると中納は「ライブや演劇……人が生み出すことは神様からのギフトだと思っています。私は生が真実だと思っているので、これからちょっとずつでもいいので、こうして皆さんとお会いできるのを楽しみにしています」と語り、最後に「濡れない雨」をしっとりと歌い上げた。アンコールでは、ラジオの収録に向かった安部以外の3人が再びステージに登場。ハナレグミの楽曲「ハンキーパンキー」をセッションして、2日間にわたるイベントをフィナーレに導いた。
なお8月26、27日には大阪・なんばHatchにて「BABY Q 納涼祭」の“大阪場所”が行われる。
「『BABY Q 納涼祭』“東京場所“」2021年8月12日 恵比寿ザ・ガーデンホール セットリスト
TENDRE
01. Night & Day
02. DOCUMENT
03. SELF~NOT EASY
04. HOPE
05. GIVE
06. hanashi
塩塚モエカ
01. no.6 for yusho
02. 62
03. 繭
04. 猿
05. ファンタジー
06. 愛しいひと
07. こころ
08. 世界の秘密
09. Bowie
長岡亮介
01. 湖畔
02. Lounge Lover
03. Crazy you
04. Night life
05. Wichita Lineman
06. Drifting too far from the shore
07. Talassa
08. Iwai
向井秀徳アコースティック&エレクトリック
01. Sentimental Girl's Violent Joke
02. Crazy Days Crazy Feeling
03. Young Girl 17 Sexually Knowing
04. 鉄風 鋭くなって
05. ZEGEN VS UNDERCOVER
06. KARASU
07. Omoide In My Head
08. はあとぶれいく
「『BABY Q 納涼祭』“東京場所“」2021年8月13日 恵比寿ザ・ガーデンホール セットリスト
安部勇磨
01. ファンタジア
02. ありがとさん
03. いつも雨
04. 風まかせ
05. おまえも
06. なんかさ
07. やさしいままで
08. さよなら
09. 明るい未来
Kan Sano
01. My Girl
02. C'est la vie
03. Flavor
04. She's Gone
05. いかれたBaby
06. ほんとは
07. Natsume
原田郁子
01. 風色夏恋
02. ユニコーン
03. スロウ・スロウ・トレイン
04. 銀河
05. 青い、森、、
中納良恵
01. 同じ穴のムジナ
02. Dear My Dear
03. オリオン座
04. SA SO U
05. あなたを
06. ケムニマイテ
07. 濡れない雨
BABY Q 納涼祭 大阪場所
2021年8月26日(木)大阪府 なんばHatch
<出演者>
安部勇磨 / 塩塚モエカ / 長岡亮介 / 向井秀徳アコースティック&エレクトリック
2021年8月27日(金)大阪府 なんばHatch
<出演者>
Kan Sano / TENDRE / ハナレグミ / 堀込泰行
音楽ナタリー @natalie_mu
【ライブレポート】中納良恵、原田郁子、向井秀徳、長岡亮介、TENDREらが弾き語りメインで魅せた「BABY Q」“東京場所”(写真34枚)
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