映画「
昨日9月11日に劇場公開された「窮鼠はチーズの夢を見る」は、水城せとなのマンガを行定監督が実写化した作品。学生時代から受け身の恋愛を繰り返してきた主人公・大伴恭一(大倉忠義)と、彼に一途なアプローチを繰り返す今ヶ瀬渉(成田凌)の揺れ動く恋模様を描く。本作の公開を記念した舞台挨拶の模様は主要102館に生中継され、約3万人が見届けた。
まず今年ベストの恋愛映画という口コミも多く見られる本作について、行定監督は「ジャンルとして恋愛映画は軽視されがちなんですよね。誰でも恋愛をするし、いろんな経験値があるし、恋愛は私事だったりもするから、芸術として評価しにくい部分もあるので。でもこの映画は恋愛についての考察というか、とことん恋愛なんですよね。そういう恋愛映画を作れたのは、僕にとっては胸を張れること。きっとそれが伝わっているんじゃないかと思います」と手応えを感じた様子で語る。大倉はセクシャリティを超え、人を好きになることの喜びや痛みを描いた本作について「男女に当てはめてじゃないけど、別物として考えようと思っていたんですけど、シーンを撮っていくごとに『あ、この感じ経験したことあるな』とか当てはまっていく感覚があって、男同士だからとかそんなに考えなくていいのかなという発見がありました」とコメント。成田も「僕は恭一も今ヶ瀬も正しいことはイマイチわからないけれど、正しくないことをしているのはわかるものなんだなと思ったんですよね。今ヶ瀬は傷つくことを前提に立ち向かっていって、当たって砕けろじゃなくて当たったら当たったまんまみたいな。よくないことはわかっているけれど、いざ何をしたらいいのかわからないみたいな、そういうモヤモヤがあるんだなと思いました」と述べた。
浮気を繰り返すクズ男・恭一を演じた大倉は「そういうダメなやつを好きになる今ヶ瀬もダメなのに、観終わった方はみんな今ヶ瀬がかわいいってなるんですよ。だからお互いダメなんです。僕も(恭一役を)やっててクズだなと思います。でもきっとこういう人が好きという人もいるわけで。だからかわいいってことなんです。複雑ですよね」と苦笑い。それを受けて成田は「今ヶ瀬も悪いんですよ。勝手にワーっと行って勝手に傷付いて怒って何してんの?っていう(笑)」と恭一と、彼を一途に思う今ヶ瀬の関係性について述べた。
劇中でキーアイテムである、恭一の部屋に置かれたハイチェアの話題になると、大倉は「成田くんのお尻じゃないとあの座り方ができないんですよ。僕も試してみたんですけど、ちょっとケツがデカいほうなのでできなかったです」と、成田扮する今ヶ瀬のように座れなかったことを告白。成田も「あれ難しいんですよね。僕も今やれって言われたらできないかも」と笑い、行定は「でもあの大きさになるのが僕のイメージだったんです。あのときは(成田が)相当しぼってたもんね。細い体で足を抱きかかえているのがすごく印象付いてればいいなと思って」とこだわり抜いたシーンを撮影するために座面の小さい椅子を特注で作ったことを明かした。
MCから好きなシーンについて問われると、大倉は「おしまいだってなってから海までのシーン。悲しいんだけど絵がきれいという残酷さが好きです」と恭一と今ヶ瀬が車で海に向かうシーンを挙げる。このシーンについて行定監督は「シナリオを作る中で重要なポイントでした。最初の海まで書いたときに脚本家を止めたんです。原作にはそれ以降の2人はないので、僕はシナリオを読んだときに心中する2人の心境だと思ったんです。『お前とは付き合っていかない』って決めたんだけど、あの車の中で本当に言ったかどうかも定かじゃない。でも海に行くってどんつきまでいくこと……だからそう解釈すると精神的心中をしたけれど死ななかった2人みたいな。今ヶ瀬がどんどん海に行っちゃいますよね。そういう演出になったなと思います」と振り返った。成田も「原作だと車の中での会話でしたけど、外に出てよかったですよね」と話し、行定監督も「突然風が吹いたもんね! 引きの画を撮ったときは凪いでいたのに、朝日が出始めてくると風がすごい吹いてきて。すごい風の中で2人はやってたんですよね」と撮影時のエピソードを付け加えた。
その後、3人はキャラクターの魅力について語り合い、行定監督は「マンガ原作だから、映画だと人が演じるわけじゃないですか。誰がその人を演じるかによって変わりますよね。だから大倉じゃない人間が恭一をああいうキャラクターにしないかもしれない。でもそこが面白いよね。今ヶ瀬もあんなふうにかわいく見えてくるかと言ったらほかの人だとああならないかもしれない。この2人で、この恭一と今ヶ瀬ができたので、今となってはほかの人は想像できないです」と大倉と成田が演じる恭一と今ヶ瀬についてしみじみ語った。
J_ROCKNews @J_ROCKNews
大倉忠義「窮鼠はチーズの夢を見る」クズだけどかわいい役に「複雑ですよね」 https://t.co/ZiJKsf512X