9月25日に大阪・大阪城野外音楽堂で行われた「Day of Apollo」とは対照的に、この日の東京公演は「月」をコンセプトに展開。大阪公演とは異なるセットリストや、ホールならではの演出を取り入れたステージパフォーマンスで超満員のオーディエンスを魅了した。
場内が暗転すると対馬祥太郎(Dr)にスポットライトが当てられ、ドラマチックな形でライブの口火が切られる。対馬の刻むリズムに合わせ、坂倉心悟(B)がスピード感のあるベースを重ね、古村大介(G)がノイジーなギターをかき鳴らす。そして光村龍哉(Vo,G)のシャウトとともに、ステージを覆っていた幕が落とされ、劇的なオープニングに悲鳴のような歓声が上がった。
坂倉はワイルドなプレイを見せ、対馬はいつも以上にバスドラを踏み、序盤からフルスロットル状態。「指定席だからって縮こまってんじゃないの? 最後までついて来いよ!」という光村の言葉に続いたのは、重厚なアンサンブルが響く「風人」。曲の終盤では古村の鋭利なギターと、光村のシャウト混じりの歌声が観客を惹きつける。続いてカラフルな照明がステージを彩る中「ホログラム」がスタート。対馬と坂倉は観客の熱狂的な反応に笑顔を浮かべ、光村はみずみずしいナンバーを伸びのある声で熱唱した。
会場の空気があたたまったところで、光村が「今日は僕らにとって初めてのホールワンマンでございます。3月に武道館公演をやってるんですが、誰かが武道館はライブハウスだって言ってたんで(笑)」と発言。「今夜は僕らが思うあれやこれやを、どっぷりたっぷり詰め込んでお届けします。すべて今夜のためだけに用意したものです!」とアピールし、「サラ=レイニーデイ」を演奏。オーディエンスは、現在のNICO Touches the Wallsのサウンドにアップデートされた初期のナンバーに息を呑んで聴き入った。
4人の暴れるようなプレイが炸裂し、轟音が会場を支配した「そのTAXI,160km/h」、貫禄たっぷりのバンドサウンドを見せつけた「ビッグフット」の後は、2度目のMCに。光村は「頭から飛ばしすぎて、マイクに頭ぶつけて血を出しちゃいました」と勢い余っている様子。「6年前にとあるコンテストで渋公に立って、そこで準優勝で『ロッテ賞』をもらって『クランキーチョコ』を1年分もらったんだけど、本当は優勝したかった。だから今日は個人的なリベンジもあって。当時演奏した『そのTAXI,160km/h』を披露できて、6年分の鬱憤を晴らせました」と会心の笑みを浮かべた。
「かけら-総べての想いたちへ-」を経て始まった中盤のパートでは、野間康介(Key)をサポートに迎え、さらに映像演出を取り入れたパフォーマンスを展開。満月をフィーチャーした幻想的な映像美と、たゆたうような光村の歌声のコラボレーションがシンクロした「幾那由他の砂に成る」、古村がのけぞりながらギターをかき鳴らし楽曲の激情感を煽った「夜の果て」と、バンドのディープな側面を際立たせるナンバーが続く。「image training」では、スクリーン内で光の中にたたずむ少女とメンバーの演奏シーンが交互に映し出され、メンバーの手元から光の粒子が飛び出す場面がキラキラしたサウンドスケープを引き立てていた。
映像とのコラボパートの最後は「ほっとした」。丸みのある鍵盤とギターの音色が静まり返った会場に響き、ノスタルジックな音像を作り出す。元々この曲はシンプルな構成のアコースティックナンバーだが、この日は大幅なアレンジが加えられ壮大なバラードに変貌。小さな惑星に少女がたたずむノスタルジックな映像も相乗効果を生み、楽曲の新たな魅力を伝えた。
中盤のしっとりしたムードをぬぐい去るように、後半戦は「武家諸法度」から幕開け。激しく明滅するライトと不穏なサウンドの重なりに、オーディエンスの狂騒に拍車がかかる。間奏では突然対馬が「C.C.レモン」を取り出し、「ビタミンC摂ってんのか!?」と絶叫。瞬時に会場が爆笑で包まれるという一幕もあった。その後も坂倉と古村がステージ前方でオーディエンスを扇動した「Broken Youth」、サポートの野間を含め前のめりなパフォーマンスが光った「N極とN極」とアグレッシブに攻め立てていく。光村は曲の合間に「今日は伝説的に楽しいぜ!」と叫び、ライブを全身全霊で楽しんでいることを明かした。
「アボガド」では、「今後この曲ではウエーブすることを恒例にする!」と光村がいきなり宣言。ステージを駆けまわり、前から後ろへ、右から左へウエーブを巻き起こし、オーディエンスとのコミュニケーションを図る。その勢いのまま「THE BUNGY」に突入すると、ステージの上から「THE BUNGY」の文字をあしらった電飾が現れ、歓声とどよめきが発生。間奏では恒例の古村と光村のギターバトルが繰り広げられ、セッションが終わると2人は拳を突き合わせ互いの熱演を讃えた。
「ホールならではってことで、いろんな仕掛けを用意しましたが、皆さんの笑顔を見て、今日ここまで考えてやってきて良かったなと」とうれしそうに語る光村。「今日は初の試みってことでギターとベースの前にもマイクを置いてみました」と言うと、両脇の2人に話を振る。坂倉は「いつもは中央まで行ってしゃべってるんですが、自分の前にマイクがあるって新鮮ですね」と照れくさそうにする。古村は「元気か!?」と咆哮したかと思えば、突然朴訥とした口調で「昨日パスポートを取りまして……。タイか台湾に行こうかなと。ところで今日外国から来たっていう人いる?」と質問。アメリカから来たというファンが手を挙げると「マジで!? すごいねぇ」と素直な感想を漏らした。
対馬は「俺の名前呼ぶのが男しかいなくね?」と苦笑交じりに言いつつ、オーディエンスとコール&レスポンスを繰り広げ楽しげな様子を見せる。トークの締めを務めた光村は「ステージに立つときは、失敗したらって思ったり、ホントにドキドキするんです。でもこうしてライブをやれて、観に来てる人の喜んでいる顔を観ると、僕らの体力が持つ限り、僕らの思いを音に乗せて届けていきたい」と心情を吐露。その思いを表すように、4人は「泣くのはやめて」を心を込めて奏でた。
熱烈なアンコールに応えステージに戻ってきた4人は、ダイナミズムと勢いを感じさせる新曲「Diver」を披露。その後、年明けのflumpoolとのスプリットツアーや11月25日(イイニコの日)ライブの告知を挟み、クライマックスにふさわしい「(My Sweet) Eden」を演奏。会場を“音楽の楽園”に染め上げると、爽やかな余韻を残して初のホールワンマンライブに幕を下ろした。
日本武道館公演やこれまでのライブハウス公演に比べ一段とスケールアップした演出を取り入れながら、圧巻のパフォーマンスで観客を魅了したNICO Touches the Wallsの4人。終盤のMCで光村は「まだまだ曲はあるんだから! 出してないだけで」と明かしており、これからどんな音楽やパフォーマンスを届けてくれるのか楽しみになる一夜だった。
「NICO Touches the Walls LIVE2010 East×West アポロとルーナ ~Night of Luna~」セットリスト
01. サドンデスゲーム
02. 風人
03. ホログラム
04. サラ=レイニーデイ
05. そのTAXI,160km/h
06. ビッグフット
07. かけら-総べての想いたちへ-
08. 幾那由他の砂に成る
09. 夜の果て
10. image training
11. ほっとした
12. 武家諸法度
13. Broken Youth
14. N極とN極
15. アボガド
16. THE BUNGY
17. 泣くのはやめて
<アンコール>
18. Diver
19. (My Sweet) Eden
NICO Touches the WallsのTV・ラジオ出演情報
リンク
- NICO Touches the Walls : OFFICIAL WEB SITE
- NICO Touches the Walls
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音楽ナタリー @natalie_mu
「伝説的に楽しい!」NICO初ホール公演で熱烈ライブ http://natalie.mu/music/news/38923