デビュー5周年を迎え、8月にベストアルバム「Before It’s Too Late」をリリースしたオーラルがバンドの“第2章”を示すために、地元・関西を舞台に実施したこのイベント。1日目は初の野外ワンマンライブ、2日目はオーラルの歴史において欠かせない大切な仲間を迎えた対バン形式でのライブが行われた。また会場にはアパレルブランド「MUZE」とのコラボレーションギャラリーやペインターのOLIによるペイントブースを設置。1日目の開演前にはATTRACTION AREAで山中拓也(Vo, G)と以前から親交のあるKAIRIがヒューマンビートボックス、OLIと書道家の万美がライブペイントを繰り広げ、オーラル主催ならではのジャンルの垣根を超えた催しに場内はライブ開始前から賑わいを見せていた。
力のこもった“4本打ち”が場内に響きわたったあと、夕日のオレンジの光が差し込むステージにメンバーが登場。山中が舞台の中央で右手を高く掲げると、場内は地鳴りのような歓声に包まれた。「オーラルの第2章は間違いなく今日から始まる! お前らがその証人!」と山中が叫ぶと同時に、彼らはキラーチューン「BLACK MEMORY」で勢いよくライブをスタートさせる。序盤からアクセル全開の4人のプレイに会場は大盛り上がりで、続く「What you want」では約2万人の観客が一斉に大きく揺れた。あまりに壮観な光景を前に山中は「マジでやべえ……」と万感の様子でその場にうずくまり、その目からは涙がこぼれ落ちる。「この光景を5年前、デビューしたときから思い描いてました。初めての野外ワンマン……思い入れのある泉大津フェニックスでこれだけの人たちとこの日を迎えられることを本当にうれしく思います」と山中が喜ぶと、感慨深げなメンバーの表情もスクリーンに映し出され、場内に温かな拍手が響きわたった。
その後「今日はコアな人も集まってくれてると思いますから、過去の曲もどんどんやっていきたいなと思います」という山中の言葉を皮切りに、オーラルは妖艶なギターリフが印象的な「WARWARWAR」や、スラップベースとカッティングギターの軽快なリズムが心地いい「N.I.R.A」をパフォーマンス。鈴木重伸(G)の流麗なギターサウンドを軸としたバンドセッションを経て「GET BACK」を続け、過去のアルバム収録曲やカップリング曲でオーディエンスを楽しませた。大阪から奈良に向かう途中の駅名にちなんだ楽曲「瓢箪山の駅員さん」では、レアナンバーに場内が大興奮。不穏なギターリフが鳴り響き、すっかり日の沈んだ夜の闇も相まってダークな世界観が描き出される。その後のMCでは、数日前に山中のもとにあきらかにあきら(B, Cho)からLINEで「ここまで連れて来てくれてありがとう」というメッセージが届いたことが明かされ、あきらが「恥ずい!」と慌てふためく場面もあった。
ライブ中盤には「LIPS」の“Redone Version”、「ワガママで誤魔化さないで」といったナンバーが披露され、会場の一体感は一層高まっていく。「カンタンナコト」で観客をヒートアップさせたところで、山中は「俺の大事な仲間呼んでもいいですか?」とKAIRIをステージに呼び込んだ。「普通のビートではない“生きてるビート”に俺は食らいました。みんなにも体験してもらいたいなと思います」と山中はKAIRIを紹介し、「DIP-BAP」をコラボレーション。KAIRIと山中は向かい合い、KAIRIの口から放たれる力強いビートに山中が歌を重ねる。ワンコーラス歌い終えたところで3人のバンドサウンドも加わり、躍動感のあるパフォーマンスが繰り広げられた。
ベストアルバム「Before It's Too Late」DISC2では、楽曲をRedone Versionとしてリアレンジする試みを行ったオーラル。山中は「『なんでRedone Versionやるの?』って困惑させたかもしれへん。でも、俺らはこれからああしてやっていくということではなくて、いろんなことに挑戦していくんで。もし勘違いしてる人がいたら、音楽で訂正させてください」とまっすぐな眼差しで述べ、テンポを落とし大胆にアレンジした「ハロウィンの余韻」を披露。さらに「僕は夢を見る」のRedone Versionも続け、心地いい夜風と共に幻想的なアレンジで楽曲を届けた。「フェスとかとはまた違くて、めちゃめちゃ愛にあふれてます。ありがとう」と山中は観客に感謝を伝え、「恥ずかしいのも全部1回置いておいて、正直にしゃべるけど、オーラルはまだ1回も跳ねてないやん。ブーム起こしてないねん。あのバンド一気にいったなって思われてない」と悔しそうに述べる。そして「順調そうに見えてても、全然そんなことない。ファンのみんなは知ってくれてると思うけど、苦しいことばっかり。でもそれでよかったなって思います。流行り廃り、当たり前の世の中で着実にちょっとずつかもしれんけど、前に進むことが俺らには合ってるんかなってみんなに思わせてもらいました」と会場を見渡し、「ロックって弱いやつが鳴らすもんやと思う。『俺は強いからお前らは付いてこいや』なんて言えません。でも、みんなに寄り添えるように、みんなの悲しみがわかるように、誰よりも俺は苦しんでもいい! それが俺らのロックのスタイルです」と宣言。4人の思いがこもった力強いサウンドに乗せて「5150」を熱く歌い上げた。
その後ステージは真っ赤な照明とスモークに包まれ、「PSYCHOPATH」でライブはいよいよ佳境へ。ダイナミックなプレイで狂気的な世界観を描いた彼らはその勢いのまま「狂乱 Hey Kids!!」を放ち、場内に熱狂の渦を巻き起こした。その後アカペラでゆったりと山中が歌い始めたのは初期ナンバー「See the lights」。一節一節思いを込めるようにじっくりと歌い上げ、夜空まで突き抜けるようなロングトーンを響かせた。「LOVE」のイントロが流れると場内に自然とハンドクラップが沸き起こり、ピースフルな空気が広がる。温かなシンガロングも響きわたり、メンバーは満面の笑顔で愛おしそうに会場を見渡した。「今日は本当にありがとうございました! すっげえ楽しかったです!」と山中が喜びを爆発させ、「容姿端麗な嘘」でライブはフィナーレを迎える。力強いビートに合わせて観客が一斉に飛び跳ね、最後まで一体感のある光景が会場に広がった。
アンコールを求める声に呼ばれ、まずステージに姿を現したのは中西雅哉(Dr)。ライブではおなじみのグッズ紹介コーナー「まさやんショッピング」で軽快なトークを繰り広げ、 「このコーナーがさらに大きな会場でできるように、その日までお付き合いください!」と意気込んだ。そんな中西に「こんな大きい会場で何をやっとんねん」と突っ込みを入れながらも、山中は「『まさやんショッピング』もそうなんですけど、ずっと続けてきてよかったなと思うことっていっぱいあるんです。京セラドームでもしっかり求められるようになっていきたいな!」と感極まった様子。「デビュー5周年を迎えました。ありがとうございます。まだ5周年やで。これからもっと続けるからな」と告げ、「『ロックってなんだろう?』って考えるタイミングが多いんですけど、今までの常識を潰していくのが僕らなりの“ロック”でもあるのかなと思うので、想定外のことをどんどん起こしていきます」とさらなる決意を語った。そしてオーラルは初めてフィーチャリングアーティストを迎えた最新曲「Don't you think(feat.ロザリーナ)」をロザリーナと共に初披露。たゆたうようなサウンドに乗せて、ロザリーナと山中の歌声が美しく重なった。
オーラルがこの日のラストナンバーに選んだのは、これまでもライブの軸を担ってきたメジャーデビュー曲「起死回生STORY」。「俺たちは初心を忘れません!」と言い切り、4人は晴々しい表情でこの曲を披露して1日目を締めくくった。
THE ORAL CIGARETTES「PARASITE DEJAVU ~2DAYS OPEN AIR SHOW~ DAY1 ONE MAN SHOW」2019年9月14日 泉大津フェニックス セットリスト
01. BLACK MEMORY
02. What you want
03. WARWARWAR
04. N.I.R.A
05. GET BACK
06. 瓢箪山の駅員さん
07. LIPS(Redone Version)
08. ワガママで誤魔化さないで
09. カンタンナコト
10. DIP-BAP(feat. KAIRI)
11. ハロウィンの余韻(Redone Version)
12. 僕は夢を見る(Redone Version)
13. 5150
14. PSYCHOPATH
15. 狂乱 Hey Kids!!
16. See the lights
17. LOVE(Redone Version)
18. 容姿端麗な嘘
<アンコール>
19. Don't you think(feat.ロザリーナ)
20. 起死回生STORY
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