のっちさん

のっちはゲームがしたい! 第16回(後編) [バックナンバー]

吉田直樹さんが思う「FFらしさ」って?あの壮大な世界をどうやって作り上げたのか教えてもらいました

発売したゲームをみんなが楽しんでくれるときに感じる“脱力感”……その理由は?

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「FFらしさ」って何?

のっち 私の中で「FF」のイメージは「王道RPG」って感じだったんです。髪がとんがったキレイな男の子と女の子が出てくるような。でも「16」の主人公の見た目はそうじゃないから、「これってもしかして『FF』としては新しいのかな?」と思って。

吉田 第三は僕も含めて“派手”が苦手というか。華がないんですよ、チームに(笑)。ベアラー(ヴァリスゼアで奴隷として扱われている存在)に身を落として一兵卒として戦っていく主人公が、尖った髪型で派手な格好はしないだろうと……。

のっち 「あいつ脱走したベアラーだろ!」ってバレる(笑)。

吉田 プロモーションを始めたときは「主人公が地味」ってすごく言われました(苦笑)。実際にやってもらえば、その理由をわかってもらえると思うんですが、難しいものですね。

のっち 吉田さんがこのゲームを作るうえで意識した「FFらしさ」って何かありますか?

吉田 僕は子供の頃に「1」をやって以来、リアルタイムで全部買ってるんですが、何よりも響いたのがストーリーだったんです。だから今回は1本のお話で主人公を完全に描き切ろうと、それが「FF」シリーズとして絶対に果たさないといけないことだろうと思ったんです。「16」はそう決めて作り始めました。

のっち なるほどー!

吉田 あとは「バトルシステムが洗練されている」「何十時間も遊べるボリュームがある」「グラフィックスのクオリティが素晴らしい」「サウンドが最高」「チョコボとモーグリがいる」が「FF」らしさですかね。

のっち 多い(笑)。でも今おっしゃられたこと、「16」は全部100点でした!

吉田 ありがとうございます。35年以上もシリーズが続いてるとプレイヤーそれぞれの“FF感”があるので、お客様の中にある「FFらしさ」は、その集合体なんです。そしてさらに「新しいチャンレンジをする」というのが「FFらしさ」の1つだとも思っているので、チームの持ち味や色を出しながらそこは一生懸命やりました。

吉田直樹さん

吉田直樹さん

のっち この壮大なストーリーは、どこから作られたんですか?

吉田 自分たちでゼロから物語を考えるのと、「FFシリーズの最新作」という前提があって考えるのとでは、アプローチがちょっと違うんです。今回の場合、「召喚獣をフィーチャーして、プレイヤーの皆さんにバトルのすごさを体験してもらう」という絶対的なテーマを先に決めて、「であれば、どういう時代背景を設定すればいいのか」とか「登場人物はどんな役割を担うのか」「どんな物語なら彼らが活躍できるのか」みたいなことを書いていって設計図を作るというアプローチでした。特殊な作り方だったような気がします。

のっち 召喚獣のバトルがまずあったんですね

吉田 そうですね。バトルを何個くらい作れるだろう? 開発期間と予算を考えると5、6個になりそうだけど、どの召喚獣を出そう? みたいなことを考えていたときに、ストーリーはまだないんです。それで、自ら召喚獣に変身する能力を持つ存在を「ドミナント」と呼び、そこからストーリーを担当した前廣和豊が骨子を書いていった、という感じです。

のっち ドミナントって、今までの「FF」シリーズにはない設定だったんですよね?

吉田 そうです。今までの召喚獣は「召喚魔法を唱えると、どこからともなくバハムートがやって来てぶわーって火を吐く」というもので。でも個人的にはこれがパターン化しすぎてるように感じていたので、ちゃんとキャラクターとして人と同じように扱ってみたかったんです。

小さな祖堅さん、かわいい(笑)

のっち さっきのFFらしさの話の中で「サウンドが最高」ともおっしゃってましたけど、どんなところにこだわってるんですか?

吉田 「14」も「16」も祖堅正慶というサウンドディレクターと組んだんですけど、僕はいつも、音楽の方向性は作品のテーマに合わせて最初に決めちゃうんです。例えば「14」は、ゲーム内で麻雀もできれば家の中でくつろぐこともできるし、激しい戦闘もあるという、ある意味テーマパークのような世界なので、音楽のジャンルもありとあらゆる種類のものを作ってもらいました。地域に合わせて使う楽器を決めていくという作業を最初にやって。でも逆に「16」のときは「これは大河ドラマだから絶対にクラシックから外れないでくれ」って言って。超王道なクラシックのサンプルをひたすら聴きながら「この戦闘はこんな感じで」って祖堅にお願いしてましたね。

のっち へー! そんなに具体的に伝えるんですね。

吉田 最初はお願いを聞いてくれるんですけど、たまに無視されます。結局、タイタン戦はめちゃくちゃロックな曲にされたし(笑)。

のっち そうだったんだ(笑)。

吉田 メールが来たんですよ。「やっちまいました……」「でもきっと聴いてもらえばわかると思うから、とにかくプレイして確認してください」って(笑)。祖堅はプレイヤーの皆さんのゲーム体験にものすごくこだわる人間なので、音楽だけ聴いてもらいたいわけじゃないんですよ。そのポリシーはすごく信頼してます。「たくさん聴いて発注した俺の苦労はなんだったんだよ」とは思いましたけど(笑)。

のっち 「16」はかなり音楽に泣かされました。メインテーマの使いどころも「ずるい!」って思ったし(笑)。「今は本心を吐露しているんだ」というのが音楽から伝わります。

吉田 それを汲み取っていただけるというのは、やっぱり素晴らしいセンスだと思います。クライヴのテーマ「Find the Flame」やジルのテーマ「My Star」は、インストにしてあらゆる場面でひそかに流してるんです。

のっち 音楽の話で言えば、召喚獣同士で戦ってるときに、ある瞬間にすごく“正義感が強い音”になるのが気になりました。あれってたぶん、1曲の中にそういうパートがあるわけじゃなくて、ゲーム側が1人ひとりのプレイスタイルや状況から判断して曲を切り替えてるんですよね?

吉田 あれは“ミニ祖堅”と呼ばれてる、祖堅曰く「小さな祖堅がPS5の中にいて、そろそろ盛り上げるぞっていうタイミングで切り替えていく」というシステムです(参照:「FINAL FANTASY XVI」サウンドトラック特集 サウンドチームインタビュー「PS5にインストールされる“ミニ祖堅システム”」)。

のっち 小さな祖堅さん、かわいい(笑)。

左から吉田直樹さん、のっちさん。

左から吉田直樹さん、のっちさん。

吉田 もう少し詳しく言うと、ゲームのバトルにはシーケンスっていう、何が行われるかを秒ごとに設定したタイムラインがあるんです。でもそれって、プレイがうまくて相手のHPをどんどん削っていけるなら早く進むんですが、ゆっくりやるプレイヤーもいるから、人によってテンポが違うんです。だから敵のHPの残量や、プレイヤーが使っているアクションの頻度から「おそらく今、バトルはこんな展開をしてるはず」みたいなことをシミュレーションして、リアルタイムで編曲したり音量を変えたりするというシステムを動かしています。もともと「14」でも似たようなことをやっていたんですが、今回はそれをよりダイレクトにコントロールできるようにプログラムしてるんです。

のっち 単純に「何ポイント削ったから曲が変わる」ってことではないんですか?

吉田 だけではないですね。

のっち そうなんだ。切れ目がすごく自然で、突然切り替わったりしないんですよね。

吉田 何かがあったタイミングで、必ずキリのよい4小節目だとは限らないじゃないですか。曲がブツっと変わらないように「ここでは転調してよし」という部分に印が打ってあって、何かが起こりそうになるとそのちょっと手前の部分でシームレスに切り替える、という調整をやってるんです。ミニ祖堅が(笑)。

のっち すごいなー。

吉田 自然に聞こえるようにやっていることだから、そういうことをしていてもなかなか気付いていただけないことが多いんですけどね。でも配信者さんがやっている映像と自分のプレイを比較するとわかりやすいので面白いですよ。「こんなところでこの曲が鳴り続けるのか。俺のときは流れてなかったのに」みたいなことに気付けて。

帰ったらすぐ「14」やりたいです!

吉田 ちなみに「14」もやっていたとおっしゃっていましたが、どういうきっかけで始めたんですか?

のっち コロナ禍のときにお家でパソコンでゲームをしたいと思って、一式を買って設置したんです。それで「練習がてら何かいいゲームないかな」と思って始めたのが「14」でした。なので「イベントが始まるよ」っていうメールは来てるんですけど、実は今パソコンを部屋から撤去しちゃってて。またプレステで始めていいのか迷ってるんです……。

吉田 ああ、そうなんですね。家庭用ゲーム機でもフルサポートで遊べるようになってますので、ぜひまたやってみてください。もちろんお時間があるときで全然大丈夫なので。「14」はこれから先もずっと続いていくゲームですし、人それぞれ合ったタイミングで遊びに来てもらえればいい、というコンセプトで作っているので。のっちさんと同じように、「ロックダウン期間に人とつながるために始めた」と言ってくださる方は本当に多かったです。

のっち やっぱりそうなんだ。あとはドラマ(2017年のMBS・TBS系「ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」)も興味を持つきっかけの1つではありましたね。ただ「14」って、たくさんの友達とやるゲームっていう印象があったから、1人でやりたい私みたいな人にも楽しめるのかな?と思っちゃってたところがあって……。

吉田 今はなんと、1人でもストーリーをほとんど追いかけられるようになったんです。ついに。

のっち ついに!

左から吉田直樹さん、のっちさん。

左から吉田直樹さん、のっちさん。

吉田 もともとマッチングというシステムがあったから、ダンジョンに行くときに「ここに行きたい」という人たちをシステムが勝手に集めてくれて、一緒に行けるようにはなってたんです。でもオンラインが苦手な人って、自分がミスしたらほかのプレイヤーに申し訳ないから、というのが気になってしまうんですよね。

のっち そうです!(笑)

吉田 今実装されている「コンテンツサポーター」というシステムでは、AIで動くNPCたちと一緒にダンジョンに入れるようになったので、ほかのプレイヤーとパーティを組まなくてもメインストーリーをほぼ全部1人で攻略できるんです。8人用コンテンツだけはみんなで力を合わせて倒さなければいけないんですけど、知らない人とのコミュニケーションが苦手でも会話は「よろ」「おつ」だけで大丈夫ですし(笑)。

のっち 神木(隆之介)くんも「よろ」と「おつ」のタイピングがやたら速いってどこかで言ってた気がする(笑)。

吉田 ソロで気楽に始めて少しずつ慣れて、「人と遊ぶのも面白いな」と思ったら遊んでもらうでいいですし、ストーリーの区切りがついたら一旦休止して、新しいストーリーが出たら再開するでもいいんです。いろんな遊び方ができるように作ったゲームなので。

のっち 今からプレステで始めても、PCでやってたときのデータで再開できるんですか?

吉田 できますよ。お忙しいと思いますし、合間合間で全然構わないのでぜひ。

のっち キャラメイクをがんばって、すごくかわいい子を作れたんですよ。髪色が紫でクールな感じで、角にすごくこだわって選んだんです。

吉田 ああ、アウラですね。たぶん待ってますよ。「PC撤去されちゃったー! PS5で呼んでほしいなー!」って(笑)。

のっち うわ! 帰ったらすぐやりたいです!

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「のっちはゲームがしたい!」
第16回の後編が公開‼︎

後編では吉田直樹さんにインタビュー📝
のっちのゲーム奮闘記も🎮

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