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細野ゼミ 補講3コマ目 [バックナンバー]

「細野さんと一緒に聴こう話そう」ハマ・オカモト編

ブルーノ・メジャーからフランク・ザッパまで ハマ・オカモト解説とともに古今東西の名曲を味わう

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細野晴臣が生み出してきた作品やリスナー遍歴を通じてそのキャリアを改めて掘り下げるべく、さまざまなジャンルについて探求する「細野ゼミ」。2020年10月の始動以来、「アンビエントミュージック」「映画音楽」「ロック」など全10コマにわたってさまざまな音楽を取り上げてきたが、細野の音楽観をより深く学ぶべく今年から“補講”を開講している。

ゼミ生として参加するのは、氏を敬愛してやまない安部勇磨(never young beach)とハマ・オカモト(OKAMOTO'S)という同世代アーティスト2人だ。前回に続き、補講のテーマは「ゼミ生が細野晴臣と一緒に聴きたい&話したい曲」。今回はハマにゼミで聴きたい曲のセレクトを依頼し、細野と安部とともに音楽談義を繰り広げてもらった。

取材・/ 加藤一陽 題字 / 細野晴臣 イラスト / 死後くん

かわいくてキャラもいいブルーノ・メジャー

──今回は「細野さんと一緒に聴こう話そう」企画の第2弾で、ハマさんによる選曲の回です。

ハマ・オカモト 全部好きな曲なんですけど、まずはブルーノ・メジャーというシンガーソングライターの最新アルバム「Columbo」から。シングルでも出た「The Show Must Go On」です。ホントに素晴らしいメロディメーカー。

安部勇磨 名前だけは知っています。

細野晴臣 僕は好き。僕も自分のラジオで曲をかけたんだ。この間、WWW Xにライブを観にも行ったよ。お客さんがすごくいっぱいだったな。後ろのほうで観てて、30分で帰っちゃった(笑)。

ハマ そうだったんですね! じゃあこの曲、細野さんも聴いたことがあるかもしれませんね。

ブルーノ・メジャー「The Show Must Go On」

安部 あー、カッコいいね。

細野 来日公演のチケットが売り切れたと聞いて、「すごく人気があるんだな」ってびっくりしたよ。

ハマ 僕も来日公演が発表された日にすぐチケットを申し込んだのに取れなくて、「えっ?」となって。「えっ?」っていうのも失礼なんですけど(笑)。

安部 この人は30代半ばらしいけど、人気が出たのは最近なの?

──2017年デビューですね。

ハマ 俺が知ったのは、音楽好きな人からのレコメンド。一般的には、BTSのメンバーのジョングクが「好きだ」って言ったことがきっかけでストリーミングですごく再生されたみたい。それで広まって、コアな音楽ファンにも響くものがあって……っていう。

細野 BTSって、センスいいんだね。

ハマ だからライブでは、“ブルーノギャル”もいっぱいいたんです。英語のMCにすっごい反応するお姉さんたちとか、ずっとチークタイムみたいなカップルとか(笑)。

細野 いたいた、カップルいたね。

安部 でも、確かに曲がセクシーな雰囲気だよね。

ハマ コロナ禍に彼はよく自宅からピアノ1本のライブをInstagramで生配信していたんですよ。譜面台に携帯電話を置いて、ちょっと古めのピアノでこじんまりした演奏をするの。曲の途中に演奏の振動でカメラがずれたり倒れたりして、「ごめん」ってのを何度か繰り返してて(笑)、かわいいんだよね。キャラもすごくいい。

安部 ちなみに細野さんはなんでライブを観に行って、30分で帰っちゃったんですか?

細野 歳だからだよ(笑)。でも、よかった。

ハマ 最初の30分、たまらなくよかったです。ピークの1つでしたよ。あとライブ全体を通して、演奏がホントこのまま音源みたいなんですよ。すげえよかった。ギターソロも自分で弾いて、それが思った以上にロックっぽい感じで……オススメです。

細野晴臣、ジェイク・シャーマンに反応

ハマ 次はジェイク・シャーマンによる、ビリー・ジョエルの「Just the Way You Are」のカバー。たぶんトリオ編成のジャズコンボのように録ってるのに、声をエフェクターで加工したりしていて、すごいミックスなんです。その塩梅がいいし、「こんなふうにカバーするんだ?」って。

ジェイク・シャーマン「Just the Way You Are」

細野 いいね、好きだよ。

ハマ ……よかった。緊張するね、この企画(笑)。

安部 僕、前回「好きだよ」って言ってもらえなかったよ……。

細野 そうだっけ?(笑)

ハマ ははは。ほかの曲も聴いたんだけど、全部がこういう感じではなかった。余談になるけれど、びっくりしたのが、STUTSと一緒に音源を出しているんですよ(「Isabelle(Stuts Remix)」)。ちょうどSTUTSと会うタイミングがあったんで「ジェイク・シャーマンとやってんじゃん」って言ったら、「なんで知ってるの?」って。ところで……細野さんはシルヴィア・ヴレタマーってミュージシャンご存じですか?

細野 知らないね。女性の方?

ハマ そう、女の人です。僕も全然知らなかったんですけど、“シルヴィア”って名義で出している作品が多いのかな。

──調べたところによると、スウェーデンのシンガーとのことです。

ハマ 一時期、渋谷と原宿の間にあるHi-Fi Record Storeで5000円以上買い物すると、その月にお店が仕入れたレコードのミックスCDをもらえることがあったんです。

細野 いいサービスだね。

ハマ そのミックスCDでシルヴィア・ヴレタマーを聴いてめっちゃカッコいいと思って、翌日またお店に行ってレコードを買ったのが、今からかける曲。ドラムとベースと歌だけでSimon & Garfunkelの「Mrs. Robinson」をカバーしているんですけど、めちゃめちゃヘンテコで。特にベースがすごい。

シルヴィア・ヴレタマー「Mrs. Robinson」

(曲を流しながら)

安部 ずっとこのアレンジ?

ハマ そう、変でしょ?(笑)

細野 まったくない編成ではないけれど、珍しいよね。ほかの楽器がないからベーシストががんばってる(笑)。

ハマ とんでもない集中力ですけど、歌を支えているのか、邪魔しているのか……その両方ある(笑)。ただ初めて聴いたときから「ベースのスタイルとか遊び心の入れ方とか、細野さんがお好きな感じなんじゃないかな」と思っていました。

細野 スタイルとしては伝統的なベース。高音で“トゥーン”って弾くフレーズはチャック・レイニーがやってるね。

ハマ そうですね。ダブルストップの感じがすごくチャック・レイニー的で。ちょっとやり過ぎではあるけど、そういう面白さも感じます。細野さんも多用していたフレーズですよね。

安部 あっ、こんな終盤で急にピアノが入ってくるんだ。どんだけ我慢してたんだ(笑)。

ハマ でもこのエンディング、いいんだよなあ。そしてこのあとかな……ほら、アレンジがまた元に戻るの(笑)。

安部 どうしてこういうアレンジにしたんだろう? このラフさもカッコいいけど。

細野もコピー、フランク・ザッパ

ハマ 次は、細野さんと話したことがないと思って選んだフランク・ザッパです。

細野 うおー、出た(笑)。ザッパは「Freak Out!」ってアルバムをいっぱい聴いたよ。ライブで曲をコピーしたりしたんだよ。

ハマ The Mothers of Invention(※ザッパが率いたバンド)の1stアルバムですね。今回聴きたいのは、ソロアルバム「Hot Rats」から、「Peaches en Regalia」です。このアルバム、今でも交流ある高校のOBの先輩に教えてもらって、一時期すごく聴いていて。この曲のギターをコピーしていました。

フランク・ザッパ「Peaches en Regalia」

細野 ハマくん、好きだねえ(笑)。「Freak Out!」も聴いてた?

ハマ 聴いていました。

安部 僕はちゃんと聴いたことなかった。

細野 僕は“スージー・クリームチーズ”(※スージー・クリームチーズ=ザッパが考えた架空の人物名。「Son of Suzy Creamcheese」という曲もある)とか、そういう名前が大好きで、それをバンド名にしたりしていたんだよ。思い出すなあ、聖路加国際病院で社交ダンスパーティがあって、そこに呼ばれてザッパの曲をカバーしたんだよね。あとでクレームが入ったんだ。「踊れない」って(笑)。ともあれザッパっていうのは複雑な人間なんだよね。お父さんが軍事関係の仕事をしていたりしていて、そこらへんの闇がちょっとあったらしい。

安部 顔に陰りっていうか、何かありますよね。いい意味での“エグみ”みたいな。

ハマ 本人は亡くなったけど、今、息子が正統に継いでいるんだよね。Zappa Plays Zappaっていう名前で、親父のマルチと映像をライブで流して、親子でユニゾンとかするんだよ。

安部 何それ、面白すぎるじゃん……!

ハマ Zappa Plays Zappaって名前も最高。新しいことをやるんじゃなくて、継いでいくっていう覚悟を感じる。この曲もけっこうやるんだよね。ホント、高校生の頃の思い出の曲だよ。

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ハマ・オカモトびっくりの初体験

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細野晴臣 Haruomi Hosono _information @hosonoharuomi_

【連載】「#細野ゼミ」補講開講中🖋

テーマは「ゼミ生が細野晴臣と一緒に聴きたい&話したい曲」
ブルーノ・メジャーからフランク・ザッパまで
ハマ・オカモト解説とともに古今東西の名曲を味わう🎶

#細野晴臣 #安部勇磨 #ハマ・オカモト

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